監視委、SBI証券の処分を勧告 IPO初値不当に引き上げ

2023.12.15 18:38
金融庁 株式市場 行政処分
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証券取引等監視委員会は12月15日、主幹事を務める新規株式公開(IPO)の初値を不当に引き上げたとして、SBI証券に行政処分を出すよう金融庁に勧告した。同証券は上場当日の寄り付き前までに入る売り注文数を予想し、見合う量の買い注文を公募価格と同価格の指値で出すよう顧客を勧誘していた。


2020年12月~21年9月に上場した3銘柄の勧誘で違法行為を認定した。同証券は海外のヘッジファンドなど機関投資家9社と一般投資家174人から、公募価格と同価格での買い注文を受託・執行していた。機関投資家は、香港の現地法人を通じて勧誘。一般投資家は、提携する金融商品仲介業者3社が顧客に提案した。注文数は3銘柄の合計で225万6600株にのぼった。


証券会社が主幹事を務める上場案件で初値を高くするための積極的な営業自体は認められているが、今回は作為的に相場を作ろうとしたことを違法行為として認定した。同証券の役員らは予想される売り注文数を予想したうえで買い注文数の目標を設定し、当時の機関投資家営業部やIFAビジネス部が実動部隊として活動。初値が公募価格以上になった場合は注文を取り消してもよいと顧客に伝えていた点も、違法認定の証拠になった。


監視委が認定したのは「作為的な相場形成」で、不当に利益を得ようとする「相場操縦」とは異なる。金融商品取引法が制定されてから2件目になる珍しい事案だ。監視委関係者は、「主幹事を務める上場案件で初値の公募価格割れが起きないようにし、顧客へのアピールポイントを作ろうとした」と指摘する。


検査では、北尾吉孝・SBIホールディングス会長や高村正人SBI証券社長の関与は確認していない。SBI証券は同日、「勧告内容を厳粛に受け止め、改善・再発防止に取り組む」とコメントを出した。

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