【推薦図書】『THINK AGAIN 発想を変える、思い込みを手放す』(アダム・グラント著、楠木建監訳)
2023.12.15 04:30【推薦者】信託協会専務理事・川嶋真氏
ブラックベリーはなぜ凋落したか?
本書では、自分の見解に固執し再考しない思考パターンの危うさを指摘し、既存の考えを新たな視点で再考する思考柔軟性の重要性を説く。
ブラックベリーの凋落(ちょうらく)は、創業者が製品の大成功で自社製品を過信し、iPhoneの登場に危機感を持った部下から改良の進言を受け入れず、機能を再考しなかったことに原因を求める。この創業者のように、人は成功で自尊心を強め過信を生み、自分の考えが誤っているか再考しない「過信サイクル」に陥る。誰しも「思考の盲点」(見えていないことが見えていない)があるものだが、「過信サイクル」では盲点に気づかず誤った自信を持ち危機に陥る。
そこで、自分の見解や知識を疑う「科学者の思考モード」での「再考サイクル」を身に着けるべしという。「自分が何かを学び得たかどうかを知る唯一の方法は、自分の誤りを発見すること」と言ったノーベル賞学者ダニエル・カーネマンの思考モードだ。
このため、現在の自分を過去の自分から分離、自分の考えを自分のアイデンティティーから分離、する二つの分離を提唱する。本著は、「反事実的思考」「動機づけ面接」など相手に再考させる方法も教示しており、無意識に陥っている思考・行動パターンの再考を促す実践的な良書である。
(三笠書房、税込み2200円)
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