Nikkin金融講座 金融入門(8)事業資金を仕入れる方法はいくつある?(1)

2023.11.24 04:01
金融入門
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 返済能力を見極めるプロ

鎖国が解かれた明治維新の後、福沢諭吉らは日本語に相当する言葉がなかった英単語の訳語を必死に編み出しました。「金融」という言葉もその一つ。英語の「finance」にあてがわれた造語です。ファイナンスの語源は、古いフランス語の「finer(終わる)」。もともとは、借金を完済することを意味していました。お金を貸した相手が完済する意思や能力を持っていなければ、金融取引は成り立ちません。事前に確かめるのは至難の業ですが、それを見極めるのが金融のプロである金融機関の役割です。

 金融とは、世の中の「お金が余っている人」から「お金が必要な人」に資金を融通する仕事です。双方をつなぐ金融機関は、資金を提供する人に代わって、資金を調達する側が信用に足る相手かを判断する必要があります。その確認作業のことを、審査や信用調査(与信調査)と呼びます。

 ただ、審査の必要性は、借り手の規模や財務内容によって異なります。政府や超一流とされる大企業は知名度が高いので、事前に審査を行う必要性が低くなります。また、経営破綻や資金不足によってデフォルト(債務不履行)を起こすリスクも小さいため、国債・社債や株式などの証券を不特定多数の人に購入してもらう形で資金を調達することができます。このように、お金を必要とする国や企業に対し、投資家が直接お金を貸し出す方法を「直接金融」と言います。

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 中小企業は間接金融が主流

一方で、銀行などからの借り入れによって資金を調達する方法を「間接金融」と呼びます。資金の出し手である預金者から直接借りるわけではなく、金融機関を仲介役として間接的に借りるからです。知名度の低い中小企業の場合は証券発行が難しいため、主に銀行との相対取引で資金を調達します。銀行は企業を個別に審査し、一定の水準に達していると判断した場合にのみ貸し付けます。企業数の99%を中小企業が占める日本では、英米と比べ間接金融の比率が高い傾向にあります。

 日本の銀行は担保主義という考え方をとっています。審査を通っても、担保や保証の差し入れを求められるのが一般的です。融資を実行した後もモニタリング(監視)を続け、融資先を定期的に訪問するのが通例です。

 銀行借り入れには、大きく分けて以下4つの種類があります。(1)「証書貸付」は金銭消費貸借契約書に基づく借り入れで、1年超の長期資金が中心(2)「手形貸付」は借入用の手形を銀行に差し入れる融資形態で、1年以内の短期資金が中心(3)「当座貸越」は貸し出しの限度額を設定し、その範囲で自由にお金を借りたり返したりできる(4)「商業手形割引」は、企業が代金の支払い手段として取引先から取得した受取手形を銀行に買い取ってもらう借り入れ方法です。


 プロジェクト融資の形態も

通常の企業向け融資は、企業そのものが返済義務を負うため、「コーポレート・ファイナンス」と呼ばれます。それに対し、特定の事業に資金を貸し出し、その事業が生み出す利益だけを返済原資とする融資形態を「プロジェクト・ファイナンス」と言います。プロジェクトが失敗に終わった場合、その企業の他の事業が好調でも追加の返済を求めることはできません。このように、企業の他の資産に請求権が及ばないことをノンリコース(非訴求)と言い、米国ではノンリコースローン(非訴求型融資)が主流です。

 資金調達の代替手段として、リースを活用するケースもあります。リース会社に自社が借りたい機械や設備を購入してもらい、リース料金を支払って使用する賃貸借契約です。銀行から資金を借りて、自社で機械や設備を購入する方がトータルの費用は安く済みますが、リースの場合は審査が通りやすく、初期費用も抑えることができます。

 このほか、高利の商工ローンや違法なヤミ金融もありますが、借りやすい半面、借金地獄に陥るリスクをはらんでいます。そのため、預金を取り扱う金融機関との取引を保つことが事業継続の生命線であると言えます。

 日本金融通信社編集局 国定直雅

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