Nikkin金融講座 金融入門(7)こんなにあるの!金融機関の種類(2)

2023.11.17 04:01
金融入門
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 1000超がひしめく協同組織

預金を取り扱う地域金融機関のうち、前回は銀行(地方銀行と第二地方銀行)の歴史を紹介しました。地域を支えるもう一方の主役が協同組織金融機関です。業務内容は銀行とほぼ同じ。事業活動を通じて利益を生むことを目的とする商業銀行との違いは、非営利法人であること。かつて銀行が相手にしなかった貧しい人たちが、国や大資本に頼れないなか、仲間内で資金を出し合って自分たちの金融機関をつくったのです。

 所属するコミュニティーの違いから5つの種類があります。中小企業や個人事業者を会員または組合員とする信用金庫と信用組合、労働組合や生活協同組合を会員とする労働金庫、農業者を組合員とする農業協同組合、漁業者を組合員とする漁業協同組合です。5つの業態を合わせた金融機関数は1000超、店舗数は1万5000を超えます。

 一つ一つは小規模ですが、それぞれの業態ごとに全国組織である系統中央機関があります。余った資金を中央機関に集めることで、巨額の資金を効率的に運用しています。個別の協同組織は主に市町村単位や都道府県単位の狭い範囲で活動していますが、中央機関の助けを借りることで大銀行に引けを取らないサービスを提供することも可能です。

金融入門(7)


 証券会社は投資銀行業務も

次に、預金を扱わない金融機関をみていきましょう。ノンバンクは貸し付けだけを行う金融機関です。消費者金融、信販会社、クレジットカード会社が3大ノンバンクです。銀行よりも審査が緩く、融資までの時間も短いため、緊急にお金が必要な人には便利です。その半面、金利は銀行よりも高めです。短資会社は金融機関同士が短期で資金を貸し借りするコール市場で、取引の仲介をしています。

 保険会社は、不特定多数の加入者から保険料を集め、トラブルに見舞われた契約者にお金を支払うのが業務です。生命保険会社と損害保険会社があります。前者は、万が一に備え、収入を守ることに主眼を置いた商品を扱っています。万が一の事態とは、家庭の大黒柱が不慮の死を遂げる、病気やけがで働けなくなる、などです。後者は、自動車事故や火災、自然災害などで生じた物品の損失を補てんする商品が主力です。

 証券会社は、顧客から注文を取り付けて株式を売買します。さらに、自己資金を投じて自社のもうけを直接狙う金融取引もしています。欧米では、証券会社に似た業態として投資銀行があります。2008年に破綻(はたん)したリーマン・ブラザーズも投資銀行でした。株式の発行や社債の引き受け、M&A(合併・買収)の仲介をする金融機関です。日本ではこれらの投資銀行業務も証券会社が担っています。


 以前は公的金融に圧迫批判

前回を含め、これまでに紹介したのは民間金融機関です。一方で公的金融機関も存在します。中央銀行である日本銀行のほかに日本政策投資銀行、国際協力銀行、日本政策金融公庫、沖縄振興開発金融公庫、商工組合中央金庫、住宅金融支援機構があります。公的金融の使命は「民業補完」です。民間ではリスクを取りにくい資金供給を手がけています。

 国の政策に基づいて、金利や審査基準が借り手に有利な融資制度が多く、中小企業には熱烈な支持層がいます。そのため、顧客が借入先として公的金融を優先する事態を、民間金融機関側が苦々しく感じる時代が長らく続きました。今でこそ民業圧迫批判は下火になりましが、私が金融庁の担当記者だった頃は民間からの苦情が頻繁にありました。

 金融庁が民業圧迫の有無を確認するため、企業や民間金融機関への聞き取り調査に乗り出すことになり、7年前に「金融庁、公的金融の“圧迫”調査」という記事を書きました。すると、公的金融機関を所管する他省庁の幹部から呼び出しを受け、大部屋で「そんな事実は聞いていない」と強い口調で叱責(しっせき)を受けました。1面に大きな見出しで載ったのが癇に障ったようでした。正当な取材に基づく記事だったので不安はありませんでしたが、さすがに面食らったのを覚えています。当時は官側にとっても、民業圧迫がナーバスな問題だったことの証左でしょう。

 日本金融通信社編集局 国定直雅

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