アルムナイとは?活用事例と注目されている背景を解説

2023.11.14 17:28
採用
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アルムナイは企業の人材採用でもよく用いられるようになってきた重要な概念です。アルムナイに注目して画期的な取り組みをしている企業も増えてきました。この記事ではアルムナイについて解説した上で、企業での活用事例やメリット・デメリットを説明します。アルムナイ活用は今後の企業成長につながる重要な取り組みです。成功させるためのポイントも解説するので、今後の人材戦略にアルムナイを取り込む方策を考えてみましょう。


 


アルムナイとは?

アルムナイは人材の採用や活用において重要性が高まっています。ここではアルムナイとアルムナイ採用の意味を解説します。


「アルムナイ」の意味

アルムナイとは同窓生や卒業生を意味する言葉です。Merriam-Websterでは「a person who has attended or has graduated from a particular school, college, or university」、「a person who is a former member, employee, contributor, or inmate」と説明しています。


ビジネス・人事では企業で勤めていた人のことで、今も働いている人から見ると「元同僚」です。アルムナイは卒業生ネットワークと呼ばれることもあり、大学でも企業でもコミュニティを構築しているケースが見られます。


日本では昔から終身雇用を原則とする人事がおこなわれてきたため、アルムナイ制度があまりありませんでした。しかし、現代のワークスタイルへの意識変革を受けて、アルムナイ採用を進める企業が増えてきています。


参考:https://www.merriam-webster.com/dictionary/alumnus


「アルムナイ採用」とは

アルムナイ採用とは自社を退職した人材の採用です。会社を退職する理由は人それぞれで、育児のために辞めたい、他社で別のスキルを身に付けたいといった発想で辞める人もたくさんいます。ライフステージが変わったり、転職先でやりたいことを果たしたりして、また戻ってきて働きたいと思う人もいるでしょう。アルムナイ採用はこのような人たちを採用するための取り組みです。


アルムナイは自社で働いていた経験があるため、企業の文化や風土を理解しているので教育の必要性が低いのが特徴です。また、転職して他社で働いていたアルムナイを再び採用すると、スキルアップをしていて以前よりも大きな活躍してもらえるチャンスがある点で注目されています。


アルムナイが注目されている背景とは


アルムナイの注目度が高まっているのは慢性的な人材不足が起きている上に、人材の流動性が高まっているからです。少子高齢化や働き方改革がアルムナイ採用を取り入れる企業を増加させる要因になりました。少子化によって新卒採用を想定通りに実現できる企業が少なくなり、人材獲得の方法としてアルムナイに着目する傾向が生まれています。


また、日本文化として高度経済成長期くらいまでは、就職した企業に終身雇用で働くのが道義として捉えられていました。しかし、現代ではより自分に合う仕事や働き方を探して転職する文化が広まってきています。適材を確保するためには、新卒採用だけでなく中途採用も積極的に取り組むことが必要です。アルムナイ採用は自社経験のある戦力を採用できる方法として注目されています。


アルムナイを活用している企業例

アルムナイを積極的に活用してネットワークを作り上げる企業が増えてきました。ここではアルムナイを活用している企業事例を紹介します。


アクセンチュア

アクセンチュアではアクセンチュア・アルムナイ・ネットワークのポータルサイトを用意して卒業生同士を仲間としてつなげる取り組みを続けています。わずかな期間でも働いていた仲間と世界78か国にわたってずっと連絡を取れるネットワークを形成しているのが特徴です。アクセンチュアではアルムナイ採用が活発で、他社で経験を積んでから戻ってきて返り咲きしている人もいます。他社で活躍しているアルムナイにも敬意を表して良好な関係を築きあえているのも特色です。


参照:アクセンチュアの卒業生(アルムナイ)


良品計画

良品計画ではカムバック採用を実施しています。無印良品を運営する良品計画の人材戦略として、アルムナイがライフスタイルの変化によって再就職したいと思ったときに採用する方針を立てて取り組んでいます。カムバック採用は無印良品のコンセプトにマッチしている人材を採用し、マネジメントの役割を果たす重要な人材を獲得する意図もあるのが特徴です。エンゲージメントの高い人材を採用できる方法として積極的な採用活動を進めています。


参照:カムバック採用 | 採用情報 | 良品計画


ヤフー

ヤフーではモトヤフを運営してアルムナイのネットワークを作り上げています。採用活動に用いるだけでなく、アルムナイ同士のつながりを生かしてネットワーキングする場としても活用されています。モトヤフはFacebookグループも用意し、事務局も設けて運営しているアルムナイ組織です。モトヤフ内でのつながりを強めてビジネスチャンスを増やすためのイベントも豊富にあり、ヤフーブランドのアルムナイが活躍するサポートをしています。


参照:ヤフーの卒業生のつながりをつくる「モトヤフ」 - Corporate Blog - ヤフー株式会社


アルムナイを活用するメリット


アルムナイの活用が進められているのは企業成長につながるからです。アルムナイを生かすメリットを詳しく紹介します。


人材採用・育成コストを削減できる

アルムナイ活用を進めることで人材採用や育成のコストを抑えられるのがメリットです。自社の採用情報ページでアルムナイ採用を掲載すると直接応募をしてくれる人が集まるでしょう。求人情報サイトに広告費用をかけたり、人材紹介会社に紹介料を支払ったりする必要がなくなります。アルムナイは自社での業務経験があるため、入社後の教育もあまり手間がかかりません。即戦力になる人材を低コストで採用できるのがメリットです。


優秀な人材を採用できる

アルムナイとして自社に戻ってきたいと考える人材は優秀と期待できます。退職して他社で経験を積み、スキルを習得している可能性が高いからです。もともと在籍していた時代に持っていたスキルに加えて、新たに力を発揮して価値を創造する能力を持っているでしょう。離職していただけで新しい経験を積んでいない場合もあるので注意は必要です。しかし、自社に新しい展開を生み出す原動力となってくれる人材としてアルムナイは貴重です。


有力な情報網となる

アルムナイは情報源としても有用です。独立してフリーランスをしたり、他社に転職したりしてネットワークを広げているアルムナイはたくさんいるでしょう。アルムナイの交流ネットワークを構築して自由にコミュニケーションを取れるようにしたり、アンケートをして情報を集めたりすることが可能です。競合他社の状況の把握や協業をする取引先の紹介など、多岐にわたるサポートになる可能性があるのでアルムナイは広く活用できます。


企業ブランディングを強化できる

アルムナイは企業ブランディングに貢献してくれます。在籍中に良い経験をしたアルムナイは「あの企業は良かった」と転職先で口コミを広げてくれるからです。さらにアルムナイ採用が活発に進められていることがよく知られるようになると、転職後に「戻りたい」と感じる企業として注目されます。アルムナイのネットワークを広げるインフラを整えると、人と人とのつながりを一生大切にするというブランドイメージも広められます。


ビジネスチャンスを拡大できる

アルムナイ活用はビジネスチャンスを増やし、企業成長の機会を拡大できるのがメリットです。アルムナイは必ずしも自社に戻ってくるとは限りません。しかし、独立起業したアルムナイがパートナーとして協業を求めてきたり、顧客を紹介してくれたりする機会が生まれる可能性があります。アルムナイが独創的なアイデアで始めたサービスを取り入れることで、新しい事業を起ち上げられる場合もあるので、アルムナイは企業にとって貴重な存在です。


アルムナイを活用するデメリット

アルムナイの活用にはリスクもあります。ここではアルムナイの活用を進めるデメリットを詳しく解説します。


既存社員への影響

アルムナイの制度内容によっては、新たに定めると既存社員に悪影響を及ぼすリスクがあります。特にアルムナイ採用を積極化すると、退職してもすぐに戻ってこられるという印象を持たれがちです。アルムナイ採用された人材が高い地位に就いた場合には、退職してアルムナイになろうと思われるリスクもあります。新しいアルムナイ制度の導入のときには既存社員のモチベーションを低下させないように配慮して段階的に進めることが必要です。


情報漏洩のリスクがある

アルムナイの活用はリテラシー教育を徹底しないと情報漏洩が起こる可能性があります。アルムナイは自社社員だったことで信頼関係があると考える傾向が強く、NDAやCDAを締結せずに機密情報を伝えてしまう場合があるからです。最近まで同僚として働いていた従業員が、電話やSNSでふと機密情報を漏らしてしまうリスクがあります。退職した時点で外部と考え、協業の機会があったときにも契約に基づく情報交換を進めることが大切です。


アルムナイネットワークの維持が必要

アルムナイネットワークの構築と維持には体制整備が必要なのがデメリットです。具体的にアルムナイとの関係性を維持するためのシステムを考えて制度化し、運用していかなければなりません。SNSやポータルサイトを運用したり、アルムナイの集まるイベントを実施したりするにはコストもかかります。アルムナイ制度の全体像を整え、組織的にネットワークの維持形成に取り組むことも必要なので、社員研修による理解の促進にも努めなければなりません。


アルムナイ活用のポイント

アルムナイの活用は目的と戦略を考えて推進することが必要です。ここでは具体的にアルムナイを活用するポイントを説明します。


アルムナイ制度を社内で周知する

アルムナイ制度を導入するときや、人材採用をするときには周知することが大切です。アルムナイ活用をポジティブに捉える社風を築き上げるためには、メリットのある制度だと理解してもらう必要があります。新規導入のときにはメールで通知するだけでは十分な理解を得られない場合もあります。全社会議でアルムナイ制度の目的や意義、詳細な内容やメリットを説明するといった工夫をして、社員の理解を促すことが重要なポイントです。


イグジットマネジメントを強化する

アルムナイ採用を進めるにはイグジットマネジメントが必要です。退職に際してトラブルが起こり、アルムナイネットワークに不満を伝えてブランドイメージを下げることになってしまうリスクがあります。退職を決断した従業員をサポートする体制を整えて円満退職を促し、アルムナイとの関係を良好に保つことが大切です。キャリア相談室を設けたり、独立サポートをしたりするといった施策がイグジットマネジメントとして効果的です。


アルムナイの活動やアルムナイネットワーク化を支援する取り組み

アルムナイネットワークはずっと維持されることで企業価値になります。SNSグループやポータルサイト、アルムナイ組織などを用意して、安定したネットワークを形成できるようにすることが重要です。アルムナイが自発的にネットワークを作ろうとする場合もあります。その際には企業として協力する姿勢を示し、協力して進めていきましょう。アルムナイの交流イベントの開催を定期的実施するなど、コミュニケーション機会を増やす取り組みもしていくことが大切です。


ダイバーシティを意識した社風の形成

アルムナイの採用でもアルムナイとの協業でも受け入れられないと思う人もいます。一度会社を辞めた人だから信用できないという考え方もあるのは確かです。しかし、アルムナイ活用を進めるには、ネガティブな考えを取り除き、客観的な視点でアルムナイを受け入れる社風の形成が必要です。ダイバーシティを受け入れる文化を築き上げることが重要になります。お互いの良いところを賞賛し合うために360度評価を取り入れるといった工夫も進めていくのがポイントです。


 


【まとめ】

アルムナイは企業から退職した卒業生を指します。ビジネスではアルムナイとして世の中で活躍している人と協業したり、アルムナイ採用を通してスキルアップした人材を獲得したりするチャンスがあります。アルムナイ活用を推進するためには、「協業したい」「戻ってきたい」と思ってもらえる企業として成長すると同時に、アルムナイネットワークを形成することが重要です。アルムナイ制度の導入時には社員説明も徹底し、アルムナイを称えて生かす風土を築き上げましょう。


 


 


【執筆者】ニッキンONLINE編集部


 


 

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