Nikkin金融講座 金融入門(6)こんなにあるの!金融機関の種類(1)

2023.11.10 04:01
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 ◆都銀は店舗の9割を大都市に集中

預金を集めて、お金が必要な企業や個人に貸し出すのが銀行業務です。政府の免許がなければ営業できず、金融庁では預金取り扱い金融機関と総称しています。その代表格が都市銀行(都銀)であり、一般的には5行(みずほ銀行、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、りそな銀行、埼玉りそな銀行)を指します。国際的には総資産1兆ドルを超える巨大銀行グループをメガバンクと呼び、日本ではみずほ、三菱UFJ、三井住友の3行です。

 平成の30年間は、バブル経済がピークを迎えた1989年に始まりましたが、その直後にバブルがはじけ、「失われた30年」と重なりました。平成元年に13行あった都銀の数は、合併や経営破綻を通じて半分以下に減りました。その一方で、規制緩和により新しい形態の銀行も登場しました。セブン銀行やイオン銀行などの流通系、ソニー銀行や楽天銀行などのネット銀行を筆頭に15行あります。

 信託銀行は、銀行業務以外に信託業務という重要な役割を担っています。お金の他にも不動産や有価証券などを管理し、遺言に基づいて財産の保管や処分も請け負います。都銀、新形態銀行、信託銀行は全国展開していますが、店舗数の87%が7都府県(埼玉、東京、千葉、神奈川、愛知、大阪、兵庫)に集中しています。大都市圏を除けば、日本の金融を支えているのは地域金融機関です。
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 ◆「一県一行主義」がつくった分布図

地域金融機関は、銀行と協同組織金融機関に大別できます。前者は地方銀行(地銀)と第二地方銀行(第二地銀)です。後者については次回の講座で触れます。

 地銀は第一地方銀行とも呼ばれ、全国に62行あります。日本に近代的な銀行が誕生したのは明治時代。明治政府は1872年、伊藤博文の発案で国立銀行条例を制定しました。「国立」は国の免許を得て設立されたことを意味し、民間資本でした。当初は4行のみでしたが、条例改正によって設立が容易になると一気に153行に増えました。銀行名には、第一国立銀行から第百五十三国立銀行まで設立順に番号が振られ、今でも七十七銀行や百五銀行などの「ナンバー銀行」が残っています。

 昭和に入ると国は「一県一行主義」を掲げ、戦時統制下で強制的な再編を進めました。1930年代に500行を超えていた銀行数は、終戦時には61行(都銀8行、地銀53行)に減りました。その後、1950年代に12行の「戦後地銀」が設立され、現在の地銀分布図がほぼ固まりました。今も地銀の数は、ほぼ横ばいですが資本提携や金融持ち株会社によるグループ化が相次ぎ、緩やかな再編が進んでいます。


 ◆ルーツは鎌倉時代の庶民金融

第二地銀は、第一地銀とルーツが異なります。まず1951年制定の相互銀行法によって無尽(むじん)会社から相互銀行に転換。その後、1989年から普通銀行に順次転換しました。多くは、各都道府県で第一地銀に次ぐ二番手のポジションを築いています。最盛期は第一地銀より数が多かったものの、バブル崩壊後に再編の波に洗われて、37行に減りました。

 無尽会社の起源は無尽講や頼母子(たのもし)です。鎌倉時代に誕生し、江戸時代に流行しました。構成員が定期的に掛け金を持ち寄り、くじや入札に当たった人が皆の分の掛け金を受け取る仕組みでした。貧しい庶民が助け合う工夫だったのです。その出自から、第二地銀は中小・零細企業との取引を得意としています。

 最後に、国内最大の銀行を紹介する必要があります。郵便局は長らく公的金融機関として利用されてきましたが、2007年に民営化され、ゆうちょ銀行になりました。貯金量はメガバンクをしのぐ約180兆円、店舗数(郵便局)は金融界最多の約2万3000カ店。今のところ政府は融資業務への参入を認めていないため、貯金の大半を市場で運用しています。その資金量は、債券市場や株式市場で「クジラ」と呼ばれるほどの影響力があります。戦後に貯蓄を奨励してきた国が生み出した、異形の巨大銀行であると言えます。

 日本金融通信社編集局 国定直雅

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