定期預金が短期化、「1年未満」全体の1/4 粘着性低下リスクも
2023.11.03 04:50
銀行界で、顧客から受け入れる定期預金の「短期化」が加速している。日本銀行の統計によると、預入期間が「1年に満たない」定期預金の8月末残高(国内銀行ベース)は前年同月比8兆円(18.5%)増加し、52兆円を超えた。一方、残高シェアの最も大きい「1年以上2年未満」は同3兆円(2.9%)減少し、105兆円になった。金利先高観を受け、高金利の短期商品を前面に出したマーケティング戦略などが定期預金の内訳変化を促しているとみられる。
預入期間別にみた同統計では、〝短い定期〟の存在感が高まる。「1カ月以上1年未満」の割合は、定期預金全体(221兆円)の24%と1年前から3ポイント上昇。なかでも、「1カ月以上2カ月未満」の伸びが際立つ。残高は、この1年で4割以上増え、8兆円を上回った。
背景には、銀行・顧客両者の預金に対する認識変化がある。預金が運用原資の銀行では超低金利下、先々の「上昇局面」を見据え、競争優位な金利をスポット的に示しながら預金を獲得・維持する動きが広がる。管理コストを抑えられるインターネットバンキング(IB)シフトの呼び水として、金利メリットを前面に出した戦略も目立つ。新規口座開設を条件に「3カ月間限定で年利1%」など、高い金利を打ち出す。
顧客側も短期ニーズが強まる。長期で〝拘束〟される定期に預けると、高金利の商品が出ても資金を移せず機会損失を被るため、「短期商品をつないでいく」行動心理が働きやすい。期間による金利差もなくなっており、この傾向に拍車をかけやすい土壌にある。
定期預金の短期化は、預金の粘着性低下を招きかねない。IB普及などでコストや手間をかけずに他行商品へ乗り換えられる環境が浸透。顧客の金利選好が強まると、預金のつなぎ留めなどで調達コストが想定以上に増大する懸念がある。
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