【推薦図書】『私の銀行員物語』(竹下英著)
2023.10.20 04:30
【推薦者】青山学院大学教授・落合功氏
家族愛・地元愛・仲間の絆
人の一生はさまざまだ。子供のときは可能性は無限だが、人生の岐路で選択する。専門性は深まるが、多くの可能性をせばめていく。同じ仕事であっても、その生きざまは十人十色。誰一人同じ人生を送ることはない。自叙伝を書く理由もさまざまだろうが、読み手はその生きざまから勇気を得る。
たまたまアマゾンで見つけて購入した。著者が入行したのは1974年のこと。日本の国民総生産が米国に次ぐ2位となり、ニクソンショック、変動為替制度を経て、日本が自立し、世界経済に船出したころである。その後、円高、バブル、バブル崩壊、金融ビッグバンなど、多くの荒波を乗り越えた。こうした荒波をどのように乗り越えたのか。私は本書にその裏話を期待したのだが、“池井戸ドラマ”のようなドラマチックな内容はない。多くの苦労をされたのはもちろんだが、それらはむしろ淡々と書き綴(つづ)られてある。
一番感じたのは、銀行員としての業務よりも、家族愛であり地元愛。そして仲間の絆。金融改革の荒波をどう乗り越えたかよりも、家族を大事にし、仲間とともに前進する。地元を理解し、どうすれば幸せになるかを考える。銀行員は地域・社会の一員として、ともに前進することを忘れてはいけないと、伝えている。
(熊本日日新聞社、税込み1430円)
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