Vol.4採用ブランディングと「アルムナイ」の関係

2023.10.29 04:50
#金融機関に広がる「アルムナイ」
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シリーズ「#金融機関に広がる「アルムナイ」~退職者は社外の人的資本~」。前回は、アルムナイ採用の事例とその仕組みを説明した。今回は、採用ブランディングとアルムナイの関係について解説する。

専門人材の獲得が喫緊の課題となっている金融業界において、優秀な人材に“選ばれる企業”であるために採用ブランディングは欠かせないものです。これまで多くの企業が採用ブランディングの取り組みとして、キャリア支援制度や多様な働き方を認める人事制度等を社外に発信してきましたが、昨今「アルムナイ」を採用ブランディングとして、発信する企業が増え始めています。

1.キャリアパスの一つとしての価値の発信
複数の企業でキャリアを築くことが普通になっている現在の労働市場において、学生や転職活動中の人は「その会社で就業することが今後の自身のキャリアアップにつながるのか」という観点が、企業価値を判断する要素になっています。

企業とアルムナイの関係を研究する組織「アルムナイ研究所」が実施した『就職を希望している大学生・大学院生を対象とした「企業の退職者への関心」に関する調査』では、7割近くの学生が「入社を希望する、もしくは入社予定する企業の元従業員の退職後のキャリアに関心がある」と回答しています。

その理由として「その会社での経験によって、その後のキャリアがどう広がるのか知りたい」「将来的には転職を視野に入れているから」という声が挙がっています。
アルムナイアルムナイ研究所『大学生・大学院生の「企業の退職者への関心」に関する調査結果より』

このような背景もあり、自社での経験によって得られるキャリアの広がりやその価値を、様々な方法で伝えている企業があります。
戦略コンサルティング・ベンチャー投資事業を行うドリームインキュベータ社では、採用情報ページにアルムナイのインタビューを掲載しています。同社を退職し転職先で活躍しているアルムナイが、これまでの経験が次のキャリアでどのように活かされているのか、また外から見た同社の良さや得られるスキル・経験など、より信憑性の高い自社の魅力を学生や転職活動者に伝えています。

2.アルムナイ制度やアルムナイネットワークの取り組み発信
従来の「退職者は裏切り者」といった考え方から、アルムナイを社外人的資本という捉え方にシフトし、採用制度の整備やネットワークの構築に取り組むことを外部に発信することで、採用ブランディングにつなげる企業も増えています。

企業が退職者の再入社を受け入れるアルムナイ採用制度や、退職後も企業と退職者が繋がりを持ち、その中でビジネス連携やキャリア・学習機会、人脈作りなどを実現できるアルムナイネットワーク構築に取り組むことは、魅力の一つと捉えられます。

三菱UFJ銀行や横浜銀行は、キャリア採用ページでアルムナイ採用制度を発足している意義を説明しアルムナイネットワークへの登録を案内しています。

3.アルムナイからの口コミ・評価

SNSやプラットフォームの普及により、社員やアルムナイからの口コミや評価は企業の採用ブランディングに大きく影響しています。退職意向を示した社員の退職までの対応(オフボーディングプロセス)を見直し、退職者との良好な関係構築に向けたアルムナイネットワークの取り組み等は、口コミや評価をプラスに変えて行きます。

就職・転職のためのジョブマーケット・プラットフォーム「OpenWork」を運営するオープンワーク社が発表した「退職者が選ぶ『辞めたけど良い会社ランキング2023』」にランクインした企業には、アルムナイネットワークを通じてアルムナイとの関係構築に取り組む企業が多く含まれています。

このように、アルムナイとの関係構築を通じた取り組みは採用ブランディングへの効果とつながっていくのです。

次回は、アルムナイとビジネス連携について解説します。
太田陽子執筆者:太田陽子
プロフィール:株式会社ハッカズーク コンサル・CSマネージャー
人材サービス、タレントマネジメントシステム会社での顧客支援・カスタマーサクセス組織の立ち上げを経て現職。0からの仕組み作り、コミュニティの多様な価値創りに向けた提案・伴走を行う。

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