EBITDAとは一体何が分かるの?計算方法やメリットなどを徹底解説!

2023.07.20 17:27
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EBITDAは企業の収益力を評価するために用いられる指標であり、グローバル企業の決算書などで確認できます。本記事では、EBITDAでわかることをはじめ、計算方法・メリットなどについて詳しく解説します。


目次


EBITDAとは一体何?


EBITDAとは、国際的な企業の収益力を分析するために用いられる指標の1つであり、Earnings Before Interest Taxes Depreciationand Amortizationの頭文字をとった言葉です。「イービットディーエー」「イービットダー」「イービッタ」「エビーダ」など、さまざまな読み方があります。


EBITDAのEarnings Beforeとは「収益・費用を差し引く前の利益」を指し、ここで言う収益・費用とは、以下の4つを指します。


EBITDAの内訳  各単語の意味
Interest  支払利息
Taxes  法人税等
Depreciation 有形固定資産の減価償却費(建物・機械設備など)
Amortization 無形固定資産の減価償却費(ソフトウェアなど)
 

つまり、EBITDAは「支払利息・税金・減価償却費を差し引く前の利益」を表します。企業を評価するための条件は国によって異なりますが、EBITDAを指標とすることで、その違いを極力抑えて収益力を分析する狙いがあります。


・EBITDAの計算方法とは?

EBITDAを求めるための計算式にはさまざまなものがありますが、一般的に使われるのは以下の計算式です。


EBITDA = 営業利益 + 減価償却費


営業利益とは、企業が本業で稼いだ儲けのことであり、支払利息や税金が含まれています。EBITDAには減価償却費が含まれるため、営業利益に減価償却費を加えて求めることとなります。


EBITDAを求める際、上記の計算式も問題なく使えますが、より正確に数値を把握したい場合には、以下の計算式を使って求めることもあります。


EBITDA = 経常利益 + 支払利息 + 減価償却費


EBITDA = 税引前当期純利益 + 特別損益 + 支払利息 + 減価償却費


EBITDA = 当期純利益 + 特別損益 + 法人税等 + 支払利息 + 減価償却費


  計算方法でみるEBITDAと営業利益の違い

企業の収益力を評価する際によく使われるのが営業利益です。営業利益が高ければ、金融機関からの融資が受けやすくなるなどのメリットがあります。


営業利益を求める方法は以下の通りです。


営業利益 = 売上高 - 売上原価 - 販売費および一般管理費


計算式で使用する「販売費および一般管理費」とは、販売手数料や交際費・旅費交通費など、一般的に商品を販売するために必要とされる経費を指し、減価償却費もこれに含まれます。


そもそも減価償却費は、パソコンや工場で使われる設備など、まとまった金額を支払って取得した固定資産について、年数の経過とともに価値の減少を計上していくものです。実際には、固定資産の購入時にお金を支払っているため、会計上の処理と実際のお金の流れにズレが生じます。


営業利益は減価償却費を差し引きますが、EBITDAは減価償却費を含めて計算する違いがあります。そのため、EBITDAは固定資産の購入に伴う減価償却費のズレがなく、より実情に近い形で企業の収益を把握することが可能です。


・M&Aを行う際にEBITDAがよく使われる理由は?

EBITDAはグローバル企業の業績を評価するために使われる世界的な指標ですが、M&Aをする際もよく用いられます。


EBITDAは税金や減価償却費などを差し引く前の指標であるため、企業におけるお金の流れを本来のキャッシュフロー(事業におけるお金の流れ)に近い形で把握できます。EBITDAの数値が高ければ、より多くお金を獲得している収益力の高い企業であると判断できるでしょう。


企業の販売希望者は、EBITDAを利用することで自らの企業の価値を把握し、適正価格を検討するなどの使い方があります。購入希望者に関しても、EBITDAを使うことで価格が適正であるかどうかを判断し、購入する価値のある企業であるかどうかを検討することが可能です。


また、EBITDAは税率の決め方や減価償却の方法が異なる海外でも利用できます。日本国内のグローバル企業および海外の企業に関するM&Aでも有効な指標として活用できます。


・EBITDAの評価方法とは?


EBITDAの数値をどのように評価すればいいのか、具体的な方法を2つ紹介します。


  1:EBITDAマージン

「EBITDAマージン」は、企業の売上のうち、EBITDAがいくら残ったのかを示す割合です。EBITDAマージンの数値が大きいほど、収益力が高いと言えます。


EBITDAマージンの計算式は次の通りです。


EBITDAマージン = EBITDA ÷ 売上高


売上高が100億円、営業利益が6億円、減価償却費が1億円の場合を例にすると、EBITDAマージンは以下のように計算できます。


(6億円 + 1億円)÷ 100億円 = 7%


  2:EV/EBITDA倍率

EV/EBITDA倍率とは、EV(EnterpriseValue・企業価値)がEBITDAの何倍にあたるのかを示す指標です。買収にかかる費用を回収するまで何年かかるのか、このEV/EBITDA倍率によって計算できます。


EV/EBITDA倍率の計算式は、以下の通りです。


EV/EBITDA倍率 = EV(株式時価総額 + 有利子負債 - 現預金)÷ EBITDA


EVが10億円、EBITDAが1億円の企業の場合、EV/EBITDA倍率は10倍です。この数値が大きいほど、費用を回収するまでの時間が長くなります。


・EBITDAを活用するメリットとは?

EBITDAを活用するメリットについて、4つのポイントから解説します。


  設備の規模の影響を受けない

企業が本業で稼いだ利益である営業利益は、減価償却費を差し引いて求めます。固定資産を購入する機会が多い企業は減価償却費が高額になるため、営業利益に大きな影響を及ぼし、本来の利益を把握することが難しくなってしまいます。


減価償却費を差し引く前の数値であるEBITDAは、減価償却費の影響を受けず、より実情に近い利益を計算できます。


  企業価値を中長期的に評価できる

前項で解説した減価償却費は、固定資産の取得にかかった費用を法律で定められた年数の間、継続して計上するものです。


固定資産の取得にかかる費用をすでに払い終えているとしても、購入して数年間は減価償却費の影響を受けます。規定の年数が長いほど、会計上の数値と実際の数値にズレが生じる期間が長くなってしまうことになります。


EBITDAは減価償却費の寡多さに影響を受けないため、企業の収益力を中長期的な視点で把握したい場合にも適しています。


  グローバル企業の収益力を分析できる

減価償却費や税金・金利は、国によって計算方法が異なります。そのため、減価償却費・税金・金利を差し引いて求める当期純利益は、海外の企業や、複数の国で事業を展開している企業との正確な比較を行うことができません。


しかし、EBITDAはこれらの影響を受けないため、グローバル企業の収益力を比較分析しやすいメリットがあります。


  M&Aの指標にできる

EV/EBITDA倍率によって初期に投資した金額を回収できるまでの年数を把握すれば、M&Aを行う上での指標にできます。企業の価値を把握し、いくらで売買すればいいのか、金額を検討する上で役立つでしょう。


EV/EBITDA倍率は業種などによっておおよその目安が存在し、その企業が割安もしくは割高であると判断できます。なお、ベンチャー企業や成長段階にある業種の企業はその限りではなく、状況に応じた判断を行うことが大切です。


・EBITDAを活用する際の注意点・デメリットは?

これまでに解説してきた通り、EBITDAは営業利益に減価償却費を加えることで算出します。これは固定資産の購入などの投資にかかった費用は、将来的に利益を生み出すものであることから、利益の一種として解釈するためです。


しかし、投資は必ずしも利益を生み出すものではなく、損失となるケースもあります。効果的とは言えない過剰な設備投資や資金調達をしている場合も、EBITDAで減価償却費が差し引かれないため、数字上は将来性のある企業と見せることも可能です。EBITDAは行き過ぎた設備投資による損失を考慮した指標とならないということに注意しましょう。


また、役員報酬や、役員の保険料・福利厚生費などの金額によって、EBITDAが小さく見えることもあります。


特に中小企業では、経営者の意向でこのような費用を増やすことが容易にできます。本来の収益力よりも少ない収益力であるように見えるため、役員報酬などの影響を除いた形で比較するなどの工夫が必要です。


・EBITDAの活用例


上場企業のM&Aは、ファイナンス理論と言われる複雑な方法で適切な株価を計算します。しかし中小企業同士でのM&Aは、ファイナンス理論を使って適切な株価を計算することは難しいと考えられています。専門的な企業に計算を依頼したとしても、高額な外注費がかかってしまうでしょう。


そのため、中小企業同士のM&AはEV/EBITDA倍率を活用した株価の決定を行うことが一般的です。


まず、購入候補の企業と似たような事業を行う上場企業のEV/EBITDA倍率をチェックし、目安を把握します。EV/EBITDA倍率の目安から、候補となる企業のEV(企業価値)を計算することで、おおよその株価が定められるでしょう。


上場企業の情報はインターネットなどで公開されているため、計算に必要な数値を簡単に入手できます。EV/EBITDA倍率の計算式に当てはめることで算出できるため、高額な外注費もかかりません。中小企業のM&Aを検討している場合は、EBITDAについて学び、自ら計算することも検討してみるといいでしょう。


まとめ

EBITDAはM&Aや投資などの際、企業の収益力を評価するために用いられる指標です。減価償却費の影響を受けず「営業利益 + 減価償却費」などの計算方法で比較的簡単に算出できるメリットがあります。


その半面、過剰な設備投資をしていた場合に、その損失を考慮した数値とならないといった点には注意が必要です。


企業の収益力を評価する際は、EBITDA以外の指標や企業の実情もチェックし、総合的に判断するように心がけましょう。


 


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※注意点、デメリットの参考にしました。


EBITDAとは? 計算方法や活用するメリット、注意点をわかりやすく解説 | THE OWNER


※活用方法について参考にしました。


M&AにおけるEBITDAの重要性について - M&Aコラム - 株式会社パラダイムシフト


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【執筆者】ニッキンONLINE編集部


 

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