キャピタルゲインとは一体何?インカムゲインとの違いやメリット・税率などを解説!

2023.07.07 10:47
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資産運用は、扱う投資商品や方法によって利益を得る仕組みが異なります。これから投資を行いたい方にとって、キャピタルゲインとインカムゲインの違いを知ることは、自分に合う方法を見つける1つの基準にもなるでしょう。ここでは、キャピタルゲインとは何なのか、インカムゲインとの違いやメリット、税率などを含めてご紹介します。


目次


 


キャピタルゲイン(capital gain)とは?


キャピタルゲインとは、土地や株式、公社債などの資産が値上がりすることで得られる利益のことを指します。例えば、30万円で購入した株の株価が倍になり、60万円で売却をすると、利益は30万円です(手数料等をのぞく)。この30万円の差額のことを、キャピタルゲインと呼びます。


キャピタルゲインが発生しうる資産には、その他に建物、債権などの有価証券、絵画、貴金属、ゴルフ会員権などもあります。ここから分かるように、価格が変動する資産なら、キャピタルゲインが発生する可能性があるということです。


一方、こうした資産が購入時よりも値下がりして損をした場合はキャピタル・ロスと呼ばれます。


・インカムゲインとの違い

インカムゲインは、キャピタルゲインと同様に、投資で得られる利益のことを指す言葉です。しかし、インカムゲインの場合は、資産を売却するのではなく保有することで安定して継続的に受け取れる利益を指します。


例えば、株式投資で受け取る配当金、不動産投資による家賃収入、銀行預金の受取利息、投資信託の収益分配金などが該当します。


インカムゲインは、キャピタルゲインに比べると一度に得られる利益が少ないかもしれませんが、キャピタル・ロスのような損失はありません。


・投資の種類別にみるキャピタルゲインとインカムゲイン


それでは、キャピタルゲインとインカムゲインの違いを踏まえた上で、投資の種類ごとに何がキャピタルゲインにあたるのか、また何がインカムゲインにあたるのかを見ていきましょう。


  1:株式投資

株式投資の場合のキャピタルゲインとインカムゲインは以下の通りです。


 キャピタルゲイン=株価の値上がりによる売却益、空売りによる利益


 インカムゲイン=配当金


株式投資の場合、キャピタルゲインとして大きな利益を得る可能性がある半面、大きなキャピタルロスを生む可能性もあります。株価は、景気や会社の業績によって左右されるだけでなく、突発的な出来事によっても大きく変動するからです。


株式投資のインカムゲインである配当金は、会社が株主に対して還元するものであり、平均利回りは2%程度となっています。年1回~2回、口座に振り込まれる仕組みです。


  2:投資信託

投資信託は、基本的にはインカムゲインにあたる投資商品です。なぜなら、投資信託は、運用会社が投資家から集めたお金で運用した利益を分配する仕組みだからです。そもそも長期投資を前提としているため、株式投資のようなキャピタルゲインを狙うことは少ないです。しかし、ときに保有途中で売買することもあり、この場合に得た利益はキャピタルゲインとなります。


 キャピタルゲイン=投資信託の銘柄を売却したことで得る売却益


 インカムゲイン=分配金


  3:預金(日本円)

普通預金や定期預金には、キャピタルゲインはありません。なぜなら、銀行に預けているお金の価値が上がったり下がったりすることがないからです。預けている金額に応じて得られる受取利息はインカムゲインにあたりますが、現在はゼロ金利時代。よほどの多額を預けていない限り、インカムゲインで得られる利益はさほど多くはないでしょう。


 キャピタルゲイン=なし


 インカムゲイン=受取利息


  4:不動産投資

不動産投資には、キャピタルゲインとインカムゲインの両方があります。どちらとも大きな利益をうむ可能性がありますが、どちらを狙うかによって手法も変わってきます。不動産投資で売買・運用するのは、土地や建物、マンションなどになります。


 キャピタルゲイン=不動産の売買で得る売却益


 インカムゲイン=保有している建物・マンションの家賃収入等


不動産投資のキャピタルゲインは、不動産の売買で得る利益のことを指します。うまくいけば多額の利益が得られますが、不動産価格の上昇や下落を予測することは非常に難しく、よかれと思った不動産の価値が大幅に下落してしまうこともあります。


一方、インカムゲインである家賃収入等は、キャピタルゲインに比べれば安定した資産運用がしやすい点が特徴です。空室リスクの高い物件を選ばないなどの注意は必要ですが、空室対策をとれば安定的な利益を得やすいと言えます。


  5:ソーシャルレンディング

ソーシャルレンディングは、お金を借りたい企業・団体と、お金を貸して運用したい人とをつなげるサービスです。最低投資額が1万円など、少額投資から行える点が特徴です。利回りは高く人気ですが、貸し倒れが発生するリスクもあります。


 キャピタルゲイン=なし


 インカムゲイン=運用収益に応じた普通分配金


ソーシャルレンディングによって得られる名目利回りは2.5%~10%と高いです。投資した商品からは毎月普通分配金が得られますが、途中解約や売却は基本的には不可能。したがって、キャピタルゲインはありません。


  6:暗号資産(仮想通貨)

ビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)は、もともとキャピタルゲインを狙うものでした。今も主流はキャピタルゲインによる利益ですが、2020年からは「ステーキング」というサービスが始まり、インカムゲインを狙える仕組みも存在しています。


 キャピタルゲイン=暗号資産の値上がりによる売却益、空売りによる利益


 インカムゲイン=ステーキングによる報酬


暗号資産によるキャピタルゲインは、安く購入し値上がり時に売却をする売却益が主となります。そのため、キャピタルロスも発生する可能性があります。


ステーキングとは、暗号資産取引所のCoincheckが2020年1月から始めたもので、暗号通貨を一定量保有しておくことでインカムゲインが受け取れる仕組みです。


  7:FX取引(外国為替証拠金取引)

FX取引では、価格変動による為替差益が利益となるため、主にキャピタルゲインを狙う投資手法となります。


 キャピタルゲイン=価格変動による為替差益、空売りによる利益


 インカムゲイン=金利差によるスワップポイント


スワップポイント とは、低金利の通貨の売却で付与されるものであり、これはインカムゲインに該当します。例えば、日本のような超低金利の通貨を売り、南アフリカやトルコ、メキシコのような金利の高い国の通貨を買ったとします。そのとき、2か国間の金利差によって利益が発生し、保有している間はスワップポイントとして収益が発生します。しかし、逆に低金利の国の通貨を購入して高金利の国の通貨を売却する場合は金利差分のスワップポイントを支払うこととなります。


・キャピタルゲインのメリットは?


キャピタルゲインのメリットは、主に以下の2つがあります。インカムゲインにはないポイントでもあり、投資において何を重視するのかで必要な視点とも言えるほど重要なものです。


  大きな利益が狙える

キャピタルゲインは、基本的に「ハイリスク・ハイリターン」だと言われています。長期的な投資というよりは、適切なタイミングで売買をすることが重要になります。したがって、価格の変動を頻繁にチェックできる状況にある方や、それらの動向に敏感な方、リスクを伴っても大きな利益を狙いたい方に向いていると言えるでしょう。


  短期間でも結果が得られる

株価が毎日変動するように、タイミングによっては短期間で結果が得やすいのもキャピタルゲインのメリットです。株式投資で言えば、成長株をすかさず見つけることのできる能力や、こまめな株価変動のチェックなどで、短期間でも利益が得られる可能性があります。


・インカムゲインのメリットは?

投資の種類にもよりますが、インカムゲインの最大のメリットは損失のリスクがない・少ないことと言えるでしょう。一度に得られる利益は少ない場合もありますが、定期的に継続的に利益が得られる点は、リスクを抑えてコツコツと投資をしたい方に向いています。


株式の配当金や債券の利子、不動産の家賃収入は、資産を保有しているだけで得られる利益です。もちろん、不動産投資の場合は入居者の確保状況によって収入も変わってきますが、一度に多くの利益を期待しない場合にはメリットを感じやすいでしょう。


・キャピタルゲインのデメリットは?

投資に興味のある人は、キャピタルゲインによって多額の利益を出すことに憧れるかもしれません。しかし、デメリットもあることをしっかり把握しておきましょう。


  売却時まで利益が確定しない

キャピタルゲインで得られる利益は、売却時に分かります。利益があることを見越して売却をしたとしても、投資資産の価格の急落等で損をしてしまう可能性もあるため注意が必要です。


  ハイリスクである

ハイリスク・ハイリターンと言われることの多いキャピタルゲインでは、ハイリスクという点がデメリットになるのは当然のことです。投資商品の価値の急落は予想できない部分も大きく、損失をできる限り増やさないタイミングで対処できるかどうかも重要になります。


  安定して継続的な利益の確保が難しい

短期で大きな利益が狙えるキャピタルゲインですが、言い換えれば長期的に安定した利益はつかみづらいという点がデメリットになります。特に、値動きの激しい暗号資産(仮想通貨)ではそのデメリットを感じやすいでしょう。投資商品が、思ったほど利益が伸びないことや、想定期間中に値上がりしないことは珍しくありません。


  相当な投資への知識と判断が必要

キャピタルゲインを狙うにあたり、投資の知識や判断力は不可欠な要素です。これがなければ、大損害につながりかねません。投資では、税金の知識も必要です。正しく運用していくためにも、しっかりと知識を身に付ける必要があります。


・インカムゲインのデメリットは?

ここまでの解説で分かるとおり、インカムゲインでは短期間で大きな利益を見込むことが困難です。継続して安定的に利益が出やすいというメリットがありますが、100%確実とも限らないのもデメリットです。例えば、保有している株の配当金の利回りを見てみましょう。配当利回りは高いものでも、株価の4%程度です。もし、保有している株が大きく値下がりしてしまった場合は、損をしてしまうことも十分に考えられます。


・キャピタルゲインとインカムゲイン、結局どちらを狙うべき?


キャピタルゲインとインカムゲインのどちらを狙うべきか、それははっきりとした答えがありません。それぞれのメリットとデメリットを比較して、自分に合った方法で行う必要があるでしょう。


特徴から分かるように、リスクを負いながらも短期間で大きな利益を狙いたい場合はキャピタルゲイン、手堅く安定的な運用を目指したい場合はインカムゲインが向いているのではないでしょうか。


投資にかける時間がどのくらいあるのかによっても、向き・不向きはあります。事前に知識を備えて、無理なく行える方法を選ばれることをおすすめします。


・キャピタルゲインの税率を対象別に紹介

投資を行う上で、税金の知識は不可欠です。キャピタルゲインで得られる利益にかかる税率について、見てみましょう。


  1:株式・投資信託・FX

株式、投資信託、FXにかかる税率は一律20.315%となっています。ただし、ストックオプションで得た売却益については、総合課税の対象になる可能性があり、確認が必要になるでしょう。


税率20.315%のうち、所得税(復興所得税含む)が15.315%、住民税が5%となっています。課税されるのは売却した利益に対してのみであり、含み益には課税されません。株式・投資信託は源泉徴収ありの特定口座であれば自動的に源泉徴収されますが、源泉徴収なしの口座であれば確定申告が必要です。FXは株式や投資信託の特定口座のような源泉徴収制度がないため確定申告が必要です。


  2:不動産投資

不動産投資によるキャピタルゲインの税率は、その不動産の所有期間で税率が大きく変わります。不動産を所有して6回目のお正月を迎えたあとは長期譲渡所得、それまでは短期譲渡所得になります。


長期譲渡所得の税率は、株式などと同じ20.315%です。しかし、短期譲渡所得のうちは税率39.63%となります。したがって、短期での不動産売買は税金が高いことを踏まえておく必要があります。


  3:仮想通貨

仮想通貨の売買損益は、株式などの申告分離課税と異なる点に注意が必要です。所得の種類は「雑所得」になり、税率は所得の額によって変わります。仮想通貨で得た利益は給与所得と合算される「総合課税」です。したがって、給与額の多い人は最高55%に達することもあります。


  4:金・プラチナ

金やプラチナを個人で売買して得た利益は、「譲渡所得」に分類されます。一方、事業での売買は「事業所得」、事業ではないものの営利目的で継続的に売買している場合は「雑所得」に含まれます。


・海外のキャピタルゲインに関する税金


キャピタルゲインに関する税金は、日本と諸外国では事情が異なるようです。外国での税金はどのようになるのか、ご紹介します。


  1:アメリカ

アメリカでは、給与所得などと合算して税金が計算される仕組みとなっています。単身者の場合は、以下のとおりです。なお、ここでご紹介する内容は、地域や州・地方政府税を除いたものとなっています。


全体の所得           税率


39,375USドル以下          0% 


9,375USドル超434,550USドル以下 15%


434,550USドル超          20%


  2:ドイツ

ドイツには、「キャピタルゲイン税」という利子収入に対する税金があります。銀行口座につく利息や、証券の売却益などには25%の税金がかかり、さらに連帯付加税として5.5%、人により教会税が発生します。


  3:フランス

フランスでは、各種控除が適用された後の所得額によって、課税かどうかが変わってきます。課税になるラインは、利子を含む所得が801ユーロ以上の場合です。それ以下であれば、非課税となります。


課税の場合、17.2%~62.2%で課税される「総合課税」か、一律30%の「分離課税」かを選ぶことが可能です。


  4:イギリス

イギリスでは、給与所得等の所得にキャピタルゲインを合算して税率が計算されます。所得税のレートによって税率が変わってくる点が特徴です。


40%以上の所得税(ハイヤーレート)を支払っている場合は、税率28%が適用となり、20%の所得税(ベーシックレート)を支払っている場合は税率18%になります。


・キャピタルゲインに関して非課税の国もある

すべての国が、キャピタルゲインに税金を課しているわけではありません。マレーシアや香港が代表的で、キャピタルゲイン税そのものがなかったり、一部に限定されていたりします。


特にキャピタルゲインで得た利益を手元に残しやすいのが香港です。株式や債券、不動産の売却益すべてが手元に残ります。香港には、住民税や相続税といったものもなく、所得税はありますが上限は低いです。そのため、香港での資産運用は日本で行うよりも多くの恩恵が受けられます。もちろん、香港で得た資産を日本に戻す場合には、税金がかかります。


まとめ

投資を行うにあたり、キャピタルゲインとインカムゲインの違いの知識は必須です。投資手法により、どちらを得られるかは変わってくるため、どのような投資をしてどう利益を得たいと考えるのか、慎重に検討しながらすすめていきましょう。


 


 


【執筆者】ニッキンONLINE編集部


 


 

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