電子交換所の交換決済開始について メリットや注意点を解説

2023.07.05 16:30
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電子交換所は、2022年11月より稼働し始めた、新しい手形交換所の形です。従来の手形交換所は全て廃止されて、電子交換所に移行しました。2026年度末の全面的な電子化への大きな一歩です。ここでは、電子交換所について、メリットや注意点を紹介します。


目次


 


電子交換所とは

電子交換所とは、全国銀行協会が電子データで手形や小切手の交換を行うために設立された手形交換所のことを指します。従来の手形交換所では、持ち込まれた手形や小切手は人の手によって搬送・交換が行われてきました。


しかし、電子交換所の設立によって、この手間がなくなり、手形や小切手の交換業務はデータの送受信によって完結できる仕組みとなりました。


電子交換所の必要性やメリット

電子交換所になったからといって、利用者の手続き方法は大きく変わることはありません。メリットとしては、対面での手続きの手間を省き、効率化・コスト削減につながることがあげられます。


また、これまで人手によって行われてきた搬送・交換がなくなることで、災害時などの影響で搬送できないといったリスクが回避でき、遠隔地での取引がスムーズに行えるようになりました。


電子交換所とでんさいネットの違いは?

でんさいとは、「でんさいネットが取り扱う電子記録債権」のことです。紙の手形を電子化して交換するものではなく、紙を使わずに、電子記録機関の記録原簿に電子記録をすることで、電子債権の譲渡や支払いができます。


でんさいネットは手形・振り込みに変わる新しい決済手段として用いられるようになっており、手形で発生する印紙税はかからないことや、必要な金額だけ分割できる点が大きな相違点です。


電子交換所を利用する際の注意事項


電子交換所では、基本的な手続き方法に変更はないものの、一部仕様や手数料等が変更になる場合があります。具体的に、どのような部分が変更になるのか見ておきましょう。


・手形・小切手の統一用紙が変更となる場合がある

既に持っている手形や小切手はそのまま使うことが可能ですが、手形や小切手を新たに発行する場合はこれまでとは違うデザインの用紙になるかもしれません。金融機関により、手形や小切手を電子データにするための二次元コードが券面に記載されるといった変更が実施されています。


・手形・小切手の手数料が変更となる場合がある

電子手形交換所の設立に伴い、従来の手数料とは違う料金体系となっている場合も多いです。例えば、みずほ銀行の手数料について見てみます。


【改訂前の手形・小切手の代金取立手数料】


(1)みずほ銀行同一支店内・同一手形交換所内および相互乗り入れしている手形交換所内 880円


(2)(1)以外でみずほ銀行本支店が所在する手形交換所内宛 990円


(3)(1)以外でみずほ銀行本支店が所在しない手形交換所内宛 1100円


(4)(1)以外で至急扱い 1210円


【改訂後の手形・小切手の代金取立手数料】


(1)電子交換所参加 880円


(2)電子交換所不参加 1210円


※支払金融機関が電子交換所参加金融機関に該当する場合は「電子交換所参加」、非該当の場合は「電子交換所不参加」


・資金化時限が早まる場合がある

これまで、遠隔地などは資金化までに時間がかかる傾向にありましたが、電子交換所の設立後は資金化時限が早まりました。


  支払い可能時限の変更


出典:手形・小切手の交換方法を電子化する「電子交換所」設立に伴うお手続きについて | 三菱UFJ銀行


遠隔地を中心に、支払い可能時限についても早まっています。資金の支払い可能日は、金融機関によっては通帳の摘要欄にある(カッコ)内の数字で示されますので、確認しましょう。


  引き落とし時限の変更

遠隔地においては、引き落とし時限も早まる可能性があります。従来どおり、支払い期日までの入金を行いましょう。


・手形・小切手用紙の記入が電子データ化に

電子交換所では、記載された券面の情報を電子データ化して金融機関同士で送受信をし、手続きを行います。そのため、券面に記載する内容は情報が正しく読み取れるように注意しなければなりません。



出典:手形・小切手の交換方法を電子化する「電子交換所」設立等に伴うお手続きについて | みずほ銀行



出典:手形・小切手の交換方法を電子化する「電子交換所」設立に伴うお手続きについて | 三菱UFJ銀行


  アラビア数字(算用数字)での記入方法

アラビア数字での記入時は、金額の頭に「¥」を記載します。そして、終わりには「※」や「★」といった終止符号も付けることとなっています。3桁ごとに「,」も必要です。


  漢数字での記入方法

漢数字を用いる場合は、金額の頭に「金」を書きます。そして、終わりには「円」もしくは「円也」と書き、楷書で丁寧に記入しましょう。


  訂正の仕方

金額を誤って記載した場合は、新しい手形・小切手用紙を使用します。金額以外の誤りは、訂正個所に届け印を押します。訂正の記入や捺印を、金額欄、銀行名、二次元コード欄に重ねないように注意しましょう。


  記入の禁止事項

券面の余白に、メモなど余計な記載をするのは禁止です。また、文字で複記・補記をすることも禁止されているため、金額の記載は慎重に正しく行いましょう。


 


まとめ

電子交換所の設立により、利用者が行う手続きに大きな変化は伴わないものの、いくつかの変更点はあります。特に手形や小切手への記載には、正しく読み取れるように注意が必要です。遠隔地からの手続きがスムーズになるなど、人によってはメリットも感じやすいのではないでしょうか。


 


 


【執筆者】ニッキンONLINE編集部


 


※冒頭の「従来の手形交換所は徐々に移行しています」→「従来の手形交換所は全て廃止され、電子交換所に移行しました」に訂正。

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