いまさら聞けない時事用語 資本性借入金
2023.06.04 04:30
企業が外部から調達する資金には、大きく分けて「デット(負債)」と「エクイティ(持ち分)」の二種類がある。デットは、その会社が黒字でも赤字でも、事前に取り決めた金利を支払ったうえで、期日に元本を返済する義務を負う。銀行からの借入金や社債がその代表格だ。一方、株式に代表されるエクイティは、業績が良い時だけ配当を支払えばよく、返済義務もないが、投資家に経営権の一部を与えることになる。
金融機関の通常融資はデットだが、資本性借入金はエクイティに近い性質を持っている。金融機関が借入企業の財務状況を評価する際、負債ではなく資本とみなすことができるため、債務超過の解消などを通じて資金繰りを改善する効果がある。
資本性借入金の具体的な特徴の一つに、業績連動型の金利設定がある。会社の業績が悪化した場合は金利が下がるため、経営が苦しい時に手元資金を多く残せる利点がある。もう一つの特徴は、長期の期限一括償還。毎月の支払いは利払いのみで、元金は最後に一括で返済する仕組みだ。
ただし、資金を融通する金融機関にとっては、通常の融資よりもリスクが大きい。長期にわたる貸し付けながら、会社が赤字になれば金利収入が得られず、借入企業が倒産した場合の返済順位も低いためだ。
政府系金融機関の日本政策金融公庫が取り扱う資本性借入金には、「挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)」という商品名がついている。無担保・無保証で利用でき、業績に応じて1年ごとに金利を見直す。コロナ禍がもたらした苦境からの脱却に向けて、この資本性ローンを活用する企業が増えており、メインバンクである民間金融機関と政府系金融機関が手を組んで企業再生を支援する際の重要なツールとなっている。
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