
2024年8月に、信用金庫を対象とした次期リーダー候補をサポートする「わたしと組織のマインド改革プロジェクト」を始動。全国の信用金庫から選ばれた女性職員7人が、男女の職務分担へのバイアスや仕事と子育ての両立など女性活躍推進に関する現状の課題を洗い出し、解決に向けてそれぞれが動き出した。11月にはそれぞれの信用金庫で抱える課題とその解決策をまとめ理事長に提言した。
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プレミアム記事では、7人の女性職員が理事長に提案したもようを紹介する。3人目は、三島信用金庫人財開発部人づくり課の井澤ゆかり課長が登場。高嶋正芳理事長にこれまでの女性活躍の取り組みへの感謝の思いを込めながらも、次なるステージに向けた施策を提案した。
提言内容の一部始終は、プレミアム動画に掲載。
付加価値を高めたこれまでの取り組み
「ノドがカラカラで、いろいろなものが出ちゃいそう…」と緊張状態であることを伝えながらもにこやかに場を和ませる井澤さん。「みんなの思いを共有して将来に向け理想の三島信用金庫を作っていくのがゴールです。今回提案するウーマンズボードはその糧となるもので、高嶋さんトップのもとで作っていけるといいなと思っています」と地ならしも欠かさない。
同信金の女性活躍は、2011年のポジティブアクション宣言からはじまった。ジョブローテーション制度を導入し、男女ともに預金や融資営業の全ての係を経験。女性職員の営業・融資係への登用や役席者の増加に繋がっている。育休中のフォロー体制も整え、両立支援制度を充実するなどの取り組みが「さんしんの付加価値を高めていると感じている」と語った。これまでの取り組みを満足げに振り返りながら「そんななかでも課題を感じていることが大きく3つあります」と本題に入った。提案の詳細はプレミアム動画に掲載。
ロールモデル不在、マインドの硬直化…
井澤さんが感じる課題は、①上位職へ登用するための施策の不足②ロールモデルの不足③将来のキャリアに対するマインドの硬直化-の3つ。女性役席の多くが預金役席を担当しているのが現状で「融資、営業役席を担当する機会がなかなかなく、上位職にチャレンジする自信が持てないということに繋がっているのでは」と要因を挙げた。
女性管理職同士をつなぐ“Woman’s Board”の設立
それぞれの課題を解決するために“Woman’s Board”の設立を提案した。女性管理職同士が学び合いながら、1人ひとりが成長してイキイキと活躍するためのスキルやマインドを身につけることが主な目的。実現には、「トップをはじめ経営陣の理解や男性管理職の協力が不可欠」としたうえで、「高嶋さんを含め、ぜひみなさんのサポートをいただきたい!」と懇願した。
最後に「成長できる環境がある中で、応援してくれる仲間がいること、自分の思いを自分の言葉で伝えられる環境があること、可能性を大きく秘めている静岡県東部伊豆地域を盛り上げていけるような金融機関であること」など井澤さんが理想とする将来の姿を熱く語り締め括った。
◆提案後のインタビュー骨子
――これまでの女性活躍取り組みをどう評価されていますか?
高嶋理事長:2011年、ポジティブアクション推進室を立ち上げてから女性活躍推進を押し進めてきました。2016年にはダイバーシティ宣言を行い、今の推進計画の最終段階をいよいよ迎えている状況です。計数面では、女性役席者や女性管理職の比率もそれなりに目標に対して上ってきました。実は昨年、女性活躍推進を大きく牽引しロールモデルとしての役割を果たしてくれていた女性の執行役員部長が定年退職を迎え、現状では次なるロールモデルを育成しようというところです。嬉しいことに、女性活躍推進の潮目が大きく変わってきていると私は感じてるところがあります。それは女性の管理職候補の方たちに研修の機会を提供しようと参加を募集したところ、指名ではなく、自分で手を挙げてくれた方が約20人もいました。今までは、管理職候補だからと参加を指名していた研修でした。それをみて大きく潮目が変わったと感じています。
また、新しく支店長、副支店長、グループ長という女性の管理職になっていただいた職員からの「理事長!私は今、やりがいを感じています」という前向きの言葉や、女性の管理職を見て、営業を担当している若い女性から「私もあんな支店長になりたい」という声も耳にするようになりました。これは女性活躍推進、この13年間の取り組みでの一つの成果の賜物だと思っています。
――一方で課題やもう一段階加速したいと思っていることは
高嶋理事長:女性管理職比率15%を超えてきました。次なる20%という新しい目標を持っていますが、それに向けては、やはりロールモデルの育成が大きな一つの課題になっていると思います。今必要なことは、三島信用金庫の経営に参画するということを、もっと本気に思っていただいて、次なる自分の目標をしっかり明確に持つことだと思っています。また、そういう環境を我々経営陣が作っていくことが非常に重要だと思っています。誤解を恐れずに言いますと、今までのポジティブアクション推進計画でいう研修のスタイルが「女性の管理職を目指してください」「その気になってください」ということの意識付け、それから、今まで経験していないような融資、営業、人事マネジメント、店舗のマネジメント、こうしたものを補うような業務研修中心の研修を今までも設定してきました。しかし、これからはギアを上げ、次世代の三島信用金庫の経営に必要な判断力、決断力、統率力を早い時期から習得していただきたい。そのマインドセットですね、ここのところをしっかりとやっていきたいと思っています。
――井澤さんから見てこれまでの取り組みをどう感じていますか
井澤さん:私は2001年に三島信用金庫に入庫しましたが当時は、“女の子”っていうふうに言われることも多くあり、係としても他の女性同様、長く預金係を担当していました。一方で、こういった女性活躍推進の取り組みが進んでいくことにより、女の子から“職員”にだんだん変わりまして、自分が担当できる係も融資係と営業係も広く経験することで経験値が非常に高まっていきました。そういった点からもこれまでの女性活躍推進の取り組みはすごく評価できると考えております。加えて当金庫では女性の役席がごく当たり前ですので男女ともに同じような職務の経験をさせた上で役席に登用していく流れが自然体であることは、女性活躍推進の取り組みをしてきたことの成果であると考えています。
――今回の提案を受け入れる可能性は
高嶋理事長:こうした提案をやらされ感や押し付けられたというところで、Woman’s Boardを発足していくことについては、確かめてみたいところです。強制的ではなく、自主的に手を挙げてくれる方がどの程度いるんだろうということだと思っています。目的、そしてゴール、こうしたものをお互いに共通認識を持ち、“ぜひ私もやってみたい!”という気持ちになっていただく方がたくさん手を挙げてくれるときがスタートのときだと思っています。過去にもこうした女性の管理職のみならず、管理職候補の人たちが集まって、一つの組織になって動き出す研修があったと思います。そのときに、みんな集まって、不満や愚痴のはけ口になったり、慰めあったりの場になってしまうのは、目的が違うと私は思います。ですから、先ほども言った通り、早くから経営の参画意識を高めてもらう目的の中で、経営課題をもっと明確にして、そしてみんなどうしたいんだろうと議論が活性化できるような場にしていきたい。それが目指す場になると思っています。
――井澤さんが信金職員として働いてる間に叶えたい目標は
井澤さん:自分の目標というよりはこういう信金を作っていきたいという目標になりますが、責任ある事業を担うような、女性のリーダーを作りたいと思っているのと、個人的にはキャリアは仕事だけではないのかなと。人生100年時代を生きていく中で、どこの場所でどういう仕事をして、どういうふうに生きがいを持って生きていくかは人それぞれ違うと思うので、そういった多様な考え方だとか、多様な生き方の中で三島信用金庫で働いていくことの意義や楽しさとか、やりがいとかっていうことを多くの人に感じていただいて本当に三信が好きとみんなが思えるような職員をたくさん増やしたいというふうに考えています。