コンサル力を磨き “Pro-Act”を実践 「生の声」を集め経営に生かす

2025.08.31 19:50

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山形銀行は、2024年度から第21次長期経営計画「Pro-Act」を推進している。全国的にも急激な人口減少が進む山形県を主要営業地区として厳しい市場環境にさらされる中でも、地域ポテンシャルの最大化により課題解決を図り、同行グループの成長と発展につなげる戦略を描く。東北地区地域銀の中でも先駆けて取り組んだ広域型営業体制の導入を契機に、営業店の主体的な事業運営を実践して顧客への提供価値を高めている。取引先や行員との面談で「生の声」を集めて経営に生かす同行の佐藤英司頭取に当面の施策を聞いた。 (聞き手=本誌編集長 松井 秀観)



 


顧客の生の声を大切に


松井 山形県の経済概況は。

佐藤 山形県は農業県と思われがちだが製造業の比率が高く、自動車をはじめ大手メーカーの下請け企業が多い。トランプ関税が話題になる前までは、半導体製造装置関連、自動車など製造業の受注状況は好調だった。ただ、山形県はワースト5の人口減少県で、生産人口の低下など人手不足を問題視している。やまぎん情報開発研究所による事業承継に対する意識調査(2023年)によると、ほぼ7割で後継者が未定だ。

この状況では、長期で思い切った設備投資による効率化や、生産性を高める投資も躊躇してしまう経営者も出てくる。そこで当行が後継者対策をサポートし、会社存続が厳しい場合は県内企業との合併なども促している。どうすれば地方経済が生き残れるか、様々な形で模索する大事な時期に差し掛かっている。


松井 顧客からの声を聞く取り組みは。


佐藤 私は毎月、お客さま訪問を必ず実施している。ひと月で20~30社程度は回る。山形の庄内、最上、村山、置賜のほか、県外は仙台や関東まで訪問することもある。まず自分の耳でお客さまの声を聞きたい。不安要素、課題などについて、当然、営業店からも報告があるが、それはいくつかのフィルターを経ている。生の声を聞かないと分からないこともあり、頭取就任から継続している。行内外に発信した約束の1つでもある。



 


店舗改革でコンサル力を強化


松井 2025年3月期決算の評価は。

佐藤 有価証券利息配当金が減少したことなどから減収となったが、経常利益、当期純利益ともに大きく増益となった。何よりも評価しているのは、本業利益が上がったことだ。金利が上昇しているので、当然に資金利益も上がるが、手数料収入などの役務利益が着実に増加している。法人向けコンサルティングのほか、お客さまの非金融面のご支援に一生懸命取り組んできたことが明確に数字に出てきた。

2024年4月よりスタートした、第21次長期経営計画では、重点戦略の1つに「本業利益の向上」を掲げている。本決算において、主要な経営目標が計画を上回るペースで進捗し、前進が図られたことは、一定の評価ができるものと考えている。


松井 2026年度目標で注力する点は。


佐藤 継続してお客さまに寄り添った活動をすることだ。コンサルティングから入って課題をお客さまと共有し、その延長上で資金を使って頂くことが当行の必勝パターンだ。2026年度経営目標は当期純利益(単体)50億、ROE3.5%(連結)、自己資本比率(単体)9%以上。特に、ROE3.5%とした理由は、新本店完成による
費用を見込んでいるほか、有価証券ポートフォリオの再構築に利益の一部を活用する可能性があるためであり、最低限達成すべき目標と捉えている。


松井 経営計画のポイントは。


佐藤 前長期経営計画で思い切った店舗ネットワークの改革を実行し、広域型営業体制を実現した。フルバンキング店は各地区に1カ店だけという形で新しいフォーメーションを組んだ。その効果を出していくのが今長計になる。本業利益が上昇したのは、まさに新しいやり方が定着して効果が出てきたということ。大きな決断だったが、この1年間の手応えは大きかった。また、お客さまへの提供価値を高めるため、営業店の主体的な事業運営を実践し、プロダクトアウト型からマーケットインの営業体制に変更している。

具体的には、本部から示達していた個別具体的な目標を廃止し、今後は、収益目標を踏まえ、営業店がエリア特性や人材などの経営リソースを鑑み、自ら収益計画を作成する仕組みへ刷新した。本部からある程度の指導や指示を望む声もあったが、部店長クラスの協議で施策を決めるというよりも、新入行員を含め皆で当行の存在意義についてしっかりと議論し考えてくれているところがほとんど。本当の意味の自主性が芽生えてきているのは大きな収穫だ。


 



 


専門行員が活躍


松井 コンサルティングビジネスの強化は。

佐藤 この4月に営業支援部を「コンサルティング部」に改称し、専門部隊としてお客さまから見て分かりやすくした。補助金申請を含めた営業支援やMSP(〈やまぎん〉ものづくり技術力向上支援プログラム)、経営支援や...

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