“新たな産業の芽”の経済効果を全道へ チャレンジする企業風土への変革進める

2025.07.31 19:50

  • XアイコンXアイコン
  • XアイコンXアイコン

GX(グリーントランスフォーメーション)や次世代半導体製造拠点の進出、宇宙関連ビジネスなど新たな産業の芽が次々に生まれている北海道。大きな変革期を迎えるなか、こうしたビジネスチャンスを北海道全域に波及させることを模索する北洋銀行。激しい経済環境の変化に対応するため、行員がチャレンジしやすい企業風土への変革も進める。2024年4月の就任から1年が過ぎた津山博恒頭取に、同行の取り組みや今後の戦略を聞いた。
(聞き手=本誌編集長 松井 秀観)


 



 


新産業の需要取り込む


松井 北海道経済の現況は。

津山 道内景気は全体的に弱含みだが、業種や地域によってまだら模様な印象だ。例えば観光業はインバウンド(訪日外国人客)需要の回復で好調だった。一方、地方部の水産業や関連産業は気候変動により海洋環境が変化したことなどが影響し、主要魚種漁獲量の減少が続いている。また、北海道は輸入や国内他地域からの移入が多いため、昨今の原材料価格高騰がボディーブローのように効いている。


 


松井 明るい話題では、GXや次世代半導体といった成長が期待される産業が目白押しだ。


津山 北海道が有する再生可能エネルギーのポテンシャルは国内随一とされ、今後、洋上風力や水素、蓄電池関連、海底直流送電網などへの多額のインフラ投資が見込まれる。2023年6月から当行も参画している産学官金のGX・金融コンソーシアム「Team Sapporo-Hokkaido」では、「今後10年で総額30兆~40兆円のGX投資を呼び込む」と表明している。また、2024年6月には北海道と札幌市が「GX金融・資産運用特区」に指定され、規制緩和や税制面の優遇などにより、GX関連産業の地元サプライチェーンの構築や雇用創出など、道内経済に大きな効果が期待できる。
当行では、GX関連融資を2021年度から2025年3月の累計ベースで2,961億円実行しており、2030年度までに累計で約6,500億円を実行するのが目標だ。特に洋上風力では、道内は5海域(石狩市沖、岩宇・南後志地区沖、島牧沖、檜山沖、松前沖)が再エネ海域利用法に基づく洋上風力発電所の“準備区域”に指定されており、なかでも松前沖と檜山沖は“促進区域”に指定されると見込んでいる。風車設置やメンテナンス、発電した電力の引き込み、発電量平準化に向けた設備など5海域で4,000億円程度の投融資を見込んでいる。
また、2025年にGXに関する出資規制が緩和され、道内でGX関連事業を手掛ける企業に対して当行が議決権の5%を超え50%以下まで出資する場合、これまでの認可ではなく届出だけでよくなった。この規制緩和も積極的に活用していきたい。


 次世代半導体製造のRapidus(ラピダス、東京都)が北海道千歳市に新設した製造拠点が2025年4月に始動した。


津山 回路線幅2ナノメートル(ナノは10億分の1)級の次世代半導体の試作ラインを2025年4月に稼働し、2027年の量産化を目指している。道内では前例のない規模の国家プロジェクトで、投資総額は5兆円に上ると見込まれる。北海道新産業創造機構は道内経済にもたらす波及効果を2023~2036年度の14年間の累計で最大18兆8,000億円とし、道内総生産を最大11兆2,000億円押し上げると試算している。
当行の半導体関連融資の実行目標は、2023年度から2030年度までの累計で約3,000億円(2025年3月までの累計は391億円)だ。当行は2025年1月に道内企業と半導体関連企業をマッチングさせる「ほくよう半導体ネットワーク」を立ち上げ、道内企業の半導体産業参入や取引拡大への支援に取り組んでいる。また、千歳市周辺地域での飲食、宿泊、不動産・教育関連など幅広い業種の資金ニーズもバックアップしていく。


松井 宇宙関連ビジネスの集積地もある。


津山 北海道東部の大樹町は、東と南方向に太平洋が広がり、ロケット発射場として地理的な優位性がある。同町では商業宇宙港「北海道スペースポート」が2021年4月に本格稼働した。2025年1月にはトヨタ自動車の子会社が新型ロケット開発ベンチャー「インターステラテクノロジス」に対し70億円規模の出資をすると発表し、地元の期待は高まっている。他にも道内では、世界で初めて気球による成層圏での宇宙遊覧の事業化を予定する「岩谷技研」(江別市)、小型人工衛星用推進エンジン開発を手掛ける「Letara」(札幌市)など関連ビジネスのすそ野が広がっており、当行も「北洋SDGs(持続可能な開発目標)推進ファンド」での出資などで後押ししている。



道内企業の成長に貢献


松井 2025年3月期の決算はコア業務純益、当期純利益ともに2期連続増益だった。


津山 我々の努力もあるが、日本銀行の政策金利の引き上げでマイナス金...

この記事は会員限定です。
ログインまたはお申し込みください。

  • XアイコンXアイコン
  • XアイコンXアイコン
PR
  • 新データサービス

    新データサービス

    PR

    ニッキン独自集計データを網羅

  • 金融マップ2025年版

    金融マップ2025年版

    PR

    47都道府県の金融勢力図

  • 2025年版金融時事用語集

    2025年版金融時事用語集

    PR

    各界のエキスパートが用語の背景などを簡潔・具体的に解説

  • 金融×スタートアップ Meetup

    金融×スタートアップ Meetup

    PR

    2025/10/23(木) 13:00 - 19:00 開催