地域の未来を 「TUNAGU」金庫へ  2030年に3つのバリューを実現

2025.06.30 19:50

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「行き先は新しい未来 地域をつなぎ 笑顔をつくる」。三島信用金庫が策定した「さんしん未来戦略2030」の長期ビジョンだ。「価値創造」「人づくり」「DX(デジタルトランスフォーメーション)」を行動指針として、地域社会と金庫の将来を見据えた、持続的に成長できる経営を目指している。「信用金庫として、目先の利益に一喜一憂せずに、10年、20年先の地域の未来を描き、お客さま、金庫職員が笑顔になれるような経営をしていきたい」と話す髙嶋正芳理事長に経営戦略を聞いた。(聞き手=本誌編集長 松井 秀観)


 



 


「さんしん未来戦略2030」を策定


松井 地域経済の現状は。

髙嶋
 2024年は、県東部・伊豆地域にもインバウンドが戻り、特に中国・台湾からの外国人宿泊者数が増加、旅行消費額を押し上げ、デフレ脱却への明るい兆しが見えた1年だった。当金庫の取引先企業の直近決算データ(調査対象先数6,279先)の2期比較では、取引先全体(全業種)で、売り上げは増加したものの、原材料価格や人件費上昇によるコスト増加が影響し、増収減益の傾向が強い。特に、飲食業や宿泊業で顕著だ。また、2025年3月に実施した景気動向調査(取引先165先)の結果では、景気DIはマイナス。今後の景況感の減速予想は強く、設備投資には慎重な姿勢となった。懸念されるのは、小規模・零細事業者のデフォルト率の上昇だ。県内の企業倒産件数は、3年連続で増加しており、新型コロナ対策の支援策が一巡したなかで、価格転嫁が進まず、経営が圧迫された中小・零細企業の資金繰りが悪化してきている。私たちは、経営改善、事業再生支援に伴走し、こうした廃業・倒産の予備軍ともいえる事業者に寄り添っていく。


松井
 地域の持続性が課題になっている。


髙嶋
 将来の人口予測では、25年後の2050年には、エリア内人口は20万人も減少し、人口の半数が高齢者になる。特に、生産年齢人口の減少が目立つ。私たちは、この地域の人口減少を止めることはできないが、交流人口、移住・定住者を増やす取り組みで、人口減少のスピードを遅らせることはできる。金庫の使命は、この地域の暮らしと経済を支え、将来にわたる持続的な発展に貢献すること。そのためにも、時代の先、未来を見て、社会の変化に対応していかなければならない。


松井
 不透明な現状をいかに打破するか。


髙嶋
 当然のことながら、私たち自身も持続性を高めていかなければならない。そこで、金庫創立120周年となる、2030年を見据えて「さんしん未来戦略2030」を策定した。目指す姿のビジョンは、「行き先は 新しい未来 地域をつなぎ 笑顔をつくる」。笑顔をつくれる信用金庫が、お客さまから選ばれ、持続的に成長できる。その原動力は、お客さまからの感謝の言葉だ。私たち職員の元気になり、金庫の発展にもつながり、地域の好循環となる。これこそがウェルビーイング、金庫の経営理念の「共存同栄」を実現することだ。

松井 ビジョンの浸透に工夫したことは。

髙嶋
 職員一人ひとりが、このビジョンをイメージ出来るようにコンセプトアートを作成した。さらに、目指す姿・ビジョンの浸透を図るため、2024年4月から、23の営業店会場で、のべ450人の職員とこのコンセプトアートを前にして、意見交換会を実施した。テーマは、「地域をつなぎ、笑顔をつくるために、やってみたいことは何ですか?」。「みなさんの意見を集約して、次期経営計画に反映させます」と宣言。ビジョンで描く「ありたい未来」に向けて、職員からの意見・提案は1,000を超えた。


松井
 金庫の持続的な成長には何が必要か。


髙嶋
 私たち自身が、新たな挑戦をしていく「変革力」が必要だ。この変革力の鍵になるのが、金庫の組織風土だ。職員アンケートの結果では、「前例踏襲、保守的」「リスクを過度に意識」とあった。チャレンジする組織風土でないと、生産性を高める改革は実現できない。金庫が、守り続けてきた、「お客さまの信頼」に、「積極的に変わり続けていく」変革意識を加えていかなければ、持続的な発展はないと考え、さんしん未来戦略では、変革の必要性を次のように呼びかけた。「私は、これからは、単にコストカットの『耐える』経営では、持続的な金庫をつくることはできないと考える。体力がある、今だからこそ、業務の効率化と生産性を高める前向きな投資をしていく。新しいことへのチャレンジを、これからも、続けられる金庫でありたい」。そこで、行動指針としてのバリューを3つ定めた。地域とお客さまの価値を高める「価値創造」、人を中心とした経営の「人づくり」、デジタルの力を活用した「DX」、この3つを、三島信用金庫グループ一体となって、進めていくこととした。



2024年4月に制定したコンセプトアート。輝かしい未来の静岡県東部・伊豆半島で職員(=光の玉)が躍...

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