Vol.1 金融機関が顧客紹介したゼネコンや提携施工会社の本音と金融機関の価値

公開日

2022/12/16


金融機関は取引先からビルの大規模修繕やマンション建て替え、工場、倉庫、社宅新築などで相談を受けます。不動産会社や工事会社を紹介し、融資案件につなげています。地域金融機関と連携して工事費削減サービス、建物診断サポートを展開するナックスの山本隆広社長が「金融機関が知るべき建設業界の常識」を毎月シリーズ化していきます。初回は「金融機関が顧客紹介した際のゼネコンや提携施工業者が思う本音と金融機関の価値」について解説する。



  施工会社が悩む金融機関へ支払う紹介手数料問題
多くの金融機関は大手ゼネコンや大手ハウスメーカー、地場ゼネコン、地域の有力工務店などの建築会社とビジネスマッチング契約をしているかと思います。提携内容としては、金融機関が提携先の建設会社に顧客紹介を行い受注できたら、請負金額の何%かを紹介料としてもらえるという内容が多いのではないでしょうか。
建築や工事は大きな投資となることが多いので、発注者は相見積もりを実施し、比較しながら内容の精査を慎重に行います。精査される項目の中でも工事金額は重要な項目の一つと言えるでしょう。金融機関から紹介されて相見積もりに参加する施工会社は、参加までのハードルが低くなるメリットがある一方で、紹介手数料分の数%のコストをどうするかを考えることになります。相見積もりでコスト勝負になった時に紹介料分を見積金額に上乗せしたことが原因で受注できないリスクがあるからです。相見積もりに参加する施工会社は、全て金融機関の紹介というわけではありませんので、このような事情を踏まえた上で見積金額をどう提示するのか検討しているのです。

また、発注者側としても金融機関紹介の会社からの見積金額は、紹介料が上乗せされていることを想定している人も多くいるでしょう。そのため、紹介料分を上乗せした動きや価値、将来売上に繋がりそうであるかなど期待を商談の場などで確認しています。しかしながら、実際の現場の状況をお聞きする限り、その価値、期待に応えられていないことが多いようです。

次に、建設業界の利益構造をみてみましょう。一般的な建設業者の限界利益率は企業規模などによりますが、10〜20%と言われています。仮に紹介料が3%だとすると、利益から15%〜20%分が紹介料として払い出されることになります。この比率は建設業界の外注先が多くなる特徴(重層下請け構造)を考えると、かなり高いと考えられるのではないでしょうか。ゼネコンや工務店は上記のように受注しても利益が残しにくい背景にあるにも関わらず、相見積もりの場合だと案件単位にはなりますが減額交渉されることが多いようです。ハウスメーカーなどは限界利益率が30%〜40%ほどあると言われているので、紹介料が設定されていても経営上、問題がないのだと推測できます。



 
情報整理し、理想的なマッチングで真の存在価値示す
金融機関もしくは渉外担当者の方にとっては、紹介案件についてはそこまで時間的工数を使わないため、減額されたとしても内部的な人件費に対しての売上・利益は十分に確保できるとも考えられます。しかし、折角の大きな設備投資という価値ある情報を掴んでいるわけですから、提携している施工会社に受注してもらった方が、金融機関としての存在価値を真に示せるのではないでしょうか。

それでは、どうしたら良いのかの一例をご紹介させていただきます。(案件によっては当てはまらない場合もありますので、ご注意ください)

・企業同士の競争入札を行わずに契約相手を決める方式である「随意契約」で実施する
・設計施工一括の会社で契約する
・他にはない技術、特許など持つ建設会社を紹介する
 など

発注者が工事計画の経験が豊富な企業や担当者であったり、頭の回転が早い経営者だった場合は、上記にあげたような内容でコントロールされないよう見積〜業者選定までを注意深く観察していることもあります。下手にこちら都合で提案を押し込もうとすれば設備投資をする発注者側の印象を悪くしかねません。発注者や案件担当者の性格や思考性を把握し、施工会社のオリジナル性と技術力などを網羅的に情報整理した上で、適材適所となる様なマッチングを行っていく必要があると考えます。




HPはこちら!


 

山本 隆広

執筆者に質問しよう

記事名か執筆者名を入れて質問してください

質問する