
今や金融機関を取り巻く環境は大きく変化し、その役割は、資金の仲介や融資にとどまらず、地域の課題解決や中小企業の成長支援、さらには個人顧客の人生設計にまで広がっている。こうした変化の中で、「お客さまと関係を構築したいが、どうすればいいのか分からない」「取引先と距離を縮める会話の糸口が見つからない」といったコミュニケーションに関する悩みの声は少なくない。
シリーズ「顧客と信頼関係を築く対話の技術~今日から使える4つのエッセンス~」では、そんなお悩みの声に対し、エグゼクティブ・コーチングの国内リーディングカンパニーであるコーチ・エィ会長の鈴木義幸氏が、相手と信頼関係を築くコミュニケーションの4つのエッセンスを伝授する。
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第3回で紹介するエッセンスは、「本当に知りたいことを質問する」。相手の本音や本質に迫る会話のヒントについて解説してもらった。
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熱量が人の心を開く
「人を最も話す気にさせるのは、質問者の“本当に知りたい”という熱量です」。多くの講演やインタビューを受けてきた経験を踏まえ、鈴木会長はそう語る。”知りたい”熱量は、用意されたスクリプトや形式的な質問では生まれない。自らの「知らない」を認め、そこに飛び込んでいく意志が、相手の心に届くのだ。
「訪問前に、会社の中期経営計画や統合報告書を読むことがありますよね。それは情報収集のためではなく、むしろ“知らないことを知る”ために読むべきなんです」
ただ準備のためではなく、自分はどこに関心を持ち、何を問いたいのか。その”知りたい”エネルギーを立ち上げなければ、会話は始まらない。
また、営業や講演において準備は重要だが、「始まったらスクリプトは捨てる」と鈴木会長は断言する。スクリプトに囚われてしまうと、目の前の相手の表情や反応を感じ取れなくなってしまう。「準備して、準備して、最後は天に任せる。それが本当の対話につながる」のだという。
質問の本質は「自分が何を知らないか」
「営業では『これを聞かねばならない』という型通りの質問が優先されがちですが、大事なのは“自分はこの人の何を知らないのか”というところです」
それを言葉にできなければ、相手との関係性は生まれない。問いは、相手を知るための入口であり、関係の始まりでもある。
実際に、鈴木会長がこれまで20年以上にわたって数多くのメディアインタビューを受けてきた中で、質問者の“知りたい”という思いが伝わったことは少ないという。
「たぶん ”紙面を埋めたい”っていうのが強い動機であって”知りたい”ではないんですよね」
質問者の熱量や動機の在りかは、相手に驚くほど伝わる。用意された質問を順に消化するだけでは、本質には迫れないことが分かるエピソードだ。
質問が稚拙でも、熱があれば届く
「質問が稚拙でも、“知りたい”という欲求とエネルギーがあれば、相手は話してくれます」
何かを語ってくれたとき、さらに知りたいことが自然と湧いてくる。その繰り返しが、関係を育て、相手の心を引き出していくのだ。
聞きにくいことは、聞きにくいと言えばよい
聞きにくい質問をする際のコツについては、「まず“今から聞きにくい質問をする”と伝えること」が最良の方法であると語る。「聞きにくいことを聞きたいんですけれども……」と前置きすることで、パーミッション(許可)を取り、さらになぜそれが必要なのかという理由を添えることで、相手は構えずに答えやすくなる。
本当に上手な営業は、「場」をつくる
最後に語られたのは、「場づくり」の力である。形式通りではなく、今この瞬間の相手と向き合い、共に場をつくる。
それができる人こそが、相手と本当の「関係性」を構築していけるのだ。
※詳しい内容は動画にて解説しています。
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次回もお楽しみに!