
今や金融機関を取り巻く環境は大きく変化し、その役割は、資金の仲介や融資にとどまらず、地域の課題解決や中小企業の成長支援、さらには個人顧客の人生設計にまで広がっている。こうした変化の中で、「お客さまと関係を構築したいが、どうすればいいのか分からない」「取引先と距離を縮める会話の糸口が見つからない」といったコミュニケーションに関する悩みの声は少なくない。
シリーズ「顧客と信頼関係を築く対話の技術~今日から使える4つのエッセンス~」では、そんなお悩みの声に対し、エグゼクティブ・コーチングの国内リーディングカンパニーであるコーチ・エィ会長の鈴木義幸氏が、相手と信頼関係を築くコミュニケーションの4つのエッセンスを伝授する。
第1回はこちら
第2回では、「主観を伝える」をキーワードに、相手との距離を縮める会話のヒントについて解説してもらった。
▼動画を再生▼
動画が表示されない場合はコチラ
相手の中にある「イメージ」を意識せよ
「仲良くなるためには、お互いの主観を伝え合うことが非常に重要だと思います」
初対面で人と会うとき、多くの人が「相手は自分をどう思っているのか」を気にしているという。例えば、AさんとBさんが出会ったとき、Aさんは「Bさんはこういう人だろう」と頭の中にB’というイメージを描き、同時に「Bさんの中にあるA’(自分のイメージ)はどうなっているのだろう」と思いを巡らせる。Bさんもまた、同じようにAさんについてのイメージを持ち、相手の頭の中にある自分像を気にしている。
「主観」を出すことで距離は一気に縮まる
「このお互いのイメージが表に出ないままでは、いつまで経っても距離は縮まらないんです。大切なのは、このイメージを“リスクのない形”で伝え合うこと」と鈴木会長は語る。
具体的には、会話の中で相手に対する率直な印象を伝える(「ひょっとして○○のご出身ですか?」など)ことが効果的だという。こうした一言が、相手の心の氷を解かす「アイスブレイク」になるのだ。
一方、経済や時事、スポーツなど、客観的な出来事だけを話題にしていると、互いの中にあるA’とB’が表に出ず、いつまで経っても「相手が自分をどう思っているのか」が分からないまま、距離は縮まらない。
「主観を言葉にするには、少し練習が必要です」
日常生活の中で、自分の感情や印象を意識的に言語化する訓練が有効だという。
相手を信頼させる「場の主観」の伝え方
相手に直接主観を伝えるのが難しい場合は、まずはその場に存在するモノや空間についての主観を伝えるのも一つの方法だ。
「例えば訪問先の役員フロアで、『重厚感があって静寂な空気に背筋が伸びる感じがします』と言うだけでも、相手には『この人は自分の内側を開示してくれる人だ』という印象を与え、信頼されやすくなるんですね」
「実際に思っていないことをお世辞として言う必要はありません。むしろ、自分が本当に感じたことを伝えることが大事だ」と語る鈴木会長。訪問前に「その会社や相手について、自分がどう感じているのか」を自分自身に問いかけ、本音を持って会話に臨むことが肝要であるという。
主観を語らずして、関係構築は不可能
いつまでも天気やニュースといった客観的な話題に終始していては、相手と真の意味で関係を築いていくことはできない。主観を語ることの重要性を認識すれば、顧客や取引先との関係性を築き、強めるコミュニケーションが叶うだろう。
※詳しい内容は動画にて解説しています。
***
次回もお楽しみに!