
2024年8月に、信用金庫を対象とした次期リーダー候補をサポートする「わたしと組織のマインド改革プロジェクト」を始動。全国の信用金庫から選ばれた女性職員7人が、男女の職務分担へのバイアスや仕事と子育ての両立など女性活躍推進に関する現状の課題を洗い出し、解決に向けてそれぞれが動き出した。11月にはそれぞれの信用金庫で抱える課題とその解決策をまとめ理事長に提言した。
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プレミアム記事では、7人の女性職員が理事長に提案したもようを紹介する。初回は浜松いわた信用金庫の人事部人財開発課鈴木とも子課長が、髙栁裕久理事長に提言。持ち前のさわやかな笑顔を見せ快活な様子で作成したプレゼン資料をもとに改善策を説明した。
提言内容の一部始終は、プレミアム動画に掲載。
女性活躍をさらに進めるためには風土改革
2024年11月6日、浜松いわた信金の鈴木とも子課長の提案は、「本日はお時間を作っていただきありがとうございます。よろしくお願いします」と快活に提案を始めた。まずは同信金のこれまでの取り組みを整理。女性活躍推進への取り組みは2007年4月にスタートし、17年目を迎えている。これまで「活き活き女性プロジェクト」や「シンデレラプロジェクト」などさまざまな取り組みが成果を上げてきたと振り返る。管理職に占める女性職員の割合は2016年の1.0%から24年には5.1%に、指導的地位にある女性の比率も同11.5%から19.8%とそれぞれ向上しており、「女性活躍推進が前進していることは確かで、男性だけでなく、女性にとっても働きやすい職場になっている」とし、高い成果に髙栁理事長と目を併せ互いにうなずきあった。
「ただ!このように数値は良くなっているのですが…」と一拍おいて話し出した鈴木さんは「2007年当初に掲げた男女の性別の差によらない職務遂行については、まだ道半ば」とし、それを進めるためには、“風土改革が必要”と指摘した。「職員の声に耳を傾けても、男性は法人営業、女性は個人営業・窓口というバイアスが根強く残っているのが現状」と男女の職種構成比率の違いをグラフ化し説明。「これまで17年間いろいろな取り組みをしてきましたが、男女の職種構成はこのままでは変わらないと思っています」
キャリアコンサルチーム設置しエンゲージメント向上
風土改革を進めるうえで鈴木さんが提案した施策は2点。まずは“20代の育成方法”。性別関係なく『法人営業』『個人営業』『窓口業務』を経験させる必要があると。「多くの女性が20代後半から出産や育児といったライフステージの変化により、新しいことを覚えることへの意欲が低下する時期に入る」としたうえで「入社後早いうちに多くの職種を経験させ、選択肢を持てるようにすることで各自がキャリアアップに前向きになる」と話した。
次に、全ての職員のための“キャリアプランやデザインの構築”を提案。「職員が自身のキャリアプランを考え、見える化することで、目標が定めやすくなる」とし、目標設定はやりがいや働き甲斐などエンゲージメントの向上につながると語った。
これらの施策を進めるうえで、キャリアコンサルチームの設置を訴えた。「女性の場合、出産、子育てなど環境の変化があり、そのたびにさまざまな決断に迫られる。その時に、一緒になって考えてくれるキャリアコンサルチームの存在は大きい」と語った。
「特に若手は男女問わずキャリアに対する考えがさまざま。キャリアプランやキャリアデザインはこれから必要になるはず。理事長も一緒に本気で考えてください!」と締め括った。
提案を受けた髙栁理事長は、「非常に考えと意欲が伝わってくる素晴らしいプレゼンでした。私自身も共感できる内容でした」と鈴木さんを称えた。
◆提案後のインタビュー骨子
ーーこれまでの女性活躍推進をどう評価しているか
髙栁理事長:2007年4月から男女共同参画社会作り宣言を県の第1号としてやり、経営としても一番の重要テーマと捉え、「活き活き女性プロジェクト」や「シンデレラプロジェクト」、「ハッピーリボンプロジェクト」、それと現在推進中のダイバーシティの推進を中心とする組織的な女性活躍に向けた動きを制度の整備も含め着実にやってきたという評価をしています。その結果として、女性の管理職比率など、まだ目指す水準には達していませんが、女性の平均勤続年数も倍増しており、ライフイベントに応じた働き方の柔軟性は一定程度進んできていると思います。
ただ、その中で実際に女性職員が携わってる業務は大きくは変わっておらず、従前の男性と女性の役割分担が明確にされている時代が続いていて、本当の意味での女性職員の特性に合わせた多様性のある働き方にはまだ行きついていません。マインドセットやエンゲージメントという意味合いでまだ整備が出来ていないということです。これからはキャリアプラン作りなどに課題を持って組織運営することが重要だと感じています。
ーー提案を受けた感想は
髙栁理事長:意見をもらえることは本当にありがたいと思うし、提案してくれた内容も突き刺さってきます。やはり『これが足りなかったんだな』と。キャリア形成の風土と仕組みを作っていくところが金庫全体や女性自身の気持ちを変えていく上で一つの起爆剤になるのではないかというヒントをいただきました。経営側として進めていかなければならない話で、貴重な意見として形に変えていきたいと考えます。
ーー提案を実現するうえでの課題は
髙栁理事長:やはり組織化です。キャリアデザインに携わる人財は、1人だけではできません。ある程度人数を集める必要があり、その人財がきちんと職員の相談を受けられるだけの知見を持たなければならず、そのためにもう少し勉強してもらう必要があるのと、キャリアデザインを描いていくキャリアの作り方も整理していく必要があります。
ーー「女性活躍推進」を望んでいない職員はいますか
鈴木さん:2019年に行ったアンケートですが、男女ともに9割ぐらいが「女性管理職は必要だと思う」との回答でした。気持ちの上では、女性活躍推進に前向きであると判断できます。しかし、それを自分自身に置き換えた時に、管理職に「なりたい」という人はほんのわずかで、10%から20%ぐらいでした。注目したいのは、「今の段階ではわからない」と回答した30%から40%の人です。絶対になりたくないという人は、一定数いますが、迷っている人の多くは本当はなりたいのではないかとも思っています。その結果から女性が活躍することに関して前向きな職員が多い組織だと感じました。
ーー鈴木さんが信金職員として働く間に叶えたい目標などは
鈴木さん:女性活躍推進に関してというところで本音を言うと、全支店長の3分の1ぐらいは女性にしたいという目標はあります。本当の意味で“女性活躍推進”という言葉がなくなり性別に関わらず働ける風土になれば、職員がさらにいきいきとできると思います。
働いていると悩んだり決断の時があるので、そういった時に自分がこうありたい、こうしたいという自己実現ができるような組織にしていきたいです。自己実現ができるからこそ、この地域を支えられるのだと思います。自分もそうですけど、職場にいるときには信金職員として地域のことをしっかり考えるけれど、家庭に帰ったら家族のことを大事に考えます。場面ごとにメリハリをつけて働ける信金にすれば女性職員はイキイキと楽しく仕事ができます。
島根中央信金▶