経営トップ必見! 長谷川勉教授の『信金・信組論』人的資本経営第1回

公開日

2024/04/01

時代に合わせて変化を続ける金融のかたち。本企画は、協同組織金融を取り巻くさまざまな経営課題にフォーカス、信用金庫や信用組合の経営者層と共にそれら課題解決のヒントを探る番組です。講師は、中小企業金融や協同組織金融が専門の日本大学商学部の長谷川勉教授が務めます。信金・信組の経営者が、ふと立ち寄ることができる経営サロンです。第1回は「協同組織金融の人的資本経営」について5回シリーズでお届けします。4月1日(月)から毎週、計5回(4月9日火曜日、同15日月曜日、同22日月曜日、同30日火曜日)にわたり番組を進行していきます。ぜひお立ち寄りください。


 


 


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【番組内容テキスト表示(以下)】


~協同組織金融の人的資本経営~


『第1回 人的資本の背景』


 


皆さんこんにちは。日本大学の長谷川と申します。


今回は協同組織金融の人的資本経営ということで、5回にわたってお話をしたいと思います。まず第1回目として、人的資本経営の背景について資料を見ながらお話を聞いていただければと思います。


まず5回にわたってどういう資料を使ってお話をしているかということですけれども、さまざまな政府機関並びに民間団体が同様の資料を使いながら、人的資本経営について話をしています。そこでどういった資料かと言いますと、人的資本経営に関する指標を公開しているいくつかのスタンダードがあります。それがお手元の資料にございますようなISO(国際標準化機構)とか、それからJRI(オランダの非営利団体)、ESRS(欧州サステナビリティ報告基準)、FRC(英国財務報告評議会)、他にもたくさんありますし、特に多分皆さんが入手しやすいものとしまして、政府が発行しているような資料もございますので、人的資本経営というキーワードで検索エンジンをかけていただければ、資料につきましては簡単に集まると思いますし、各種の経営団体もこうしたことを公表しておりますので、見ていただければと思います。それでは早速背景について見ていきたいと思います。


人的資本の背景というのは、端的に言いますと、人的資本、つまり人に投資することというのはどちらかというと利益を押し下げる要因として見られてきた。つまり例えばですけれども、研修のコストをとってみてもまさにコストでしかないわけでして、これが投資というふうには考えづらかったわけです。


そういうわけで、経営の中心というよりもどちらかというと脇役的あるいはむしろ無視されてきた存在でしかなかったと言えます。信用金庫、信用組合においても職員に対して、充分な研修時間の確保あるいは研修のメニューの多様性とか、そういったことに配慮して経営を行ってきたかといいますと、どちらかというと寂しい限りだったのかもしれないということを反省に置いた上でお聞きいただきますと、今の背景の話が少しピントくるのではないかと思っております。


まずよく言われているのは、このESGの「S」の部分で、これが職員の人的資本に関わる部分ですけれども、それと株価に何かしらの関係があるのではないか。端的に言うと、人的資本投資をすると、株価が上昇するのではないかというような考え方が一つあります。


2つ目は、物的資本から知識資本という考え方に変わろうとしているわけです。これは皆さんご存知の通りで、知識中心の時代にやってきたのだという流れにまさにぴったりなわけです。


3つ目はイノベーションの時代ということです。いつの時代も不景気になるとイノベーションと言い出すわけですけれども、まさにイノベーションを起こすのは人でありまして、改めて本質を見ていくと、どうも「人に投資する」ことが見られるようになってきたのではないかということです。


4つ目は「マインドと精神」ということで、従業員、職員のマインドとか精神について、あまり経営の中では、もちろん気にしない経営者は1人もいないわけですけれども、マインドと精神というものについてどういうふうに育てていったらいいのかとか、形成していったらいいのかというのは、どちらかというとスキルが研修の陰に隠れてしまっていて、スキル中心の経営にどうもなってしまっている中で、こうした二つの考え方が背後に追いやられている。そうした反省からか、経営のパフォーマンスを上げていくのには、マインドとか精神というのは極めて重要なのではないかということも言われるようになってきています。


5つ目は企業の資産としての無形資産、つまり目に見えない資産というものをどう考えていくかということで、今までは有形資産に目が当たってきたわけですけれども、無形資産に目を当てていこうという流れの中で人的資本というものに改めて脚光が浴びているということです。


6つ目はステークホルダーからの要求です。株式会社であれば主として株主からの要求ということになります。株主も人的資本と株価に関係する、つまりどういうことかといいますと、人的資本投資を行えば、最終的には企業のパフォーマンスを上げることになり、株主にとってウェルカムな話であるというふうに考えますと、ステークホルダーも当然のことながら、そうした要求をしてくるというわけです。


ところがいろいろな問題点がありまして、資料をめくっていただきますと、問題はですね、誰が可視化し、どうやって資産を増やすのかということになるわけですが、ついつい人のことになってしまうと、人事になってくるわけですけれども、これは“人事ごと”ではないということで、トップのコミットメントあるいは役員間の対話というふうにレベルを上げた話のうえで、そのうえで人事部がどういうふうに立ち振る舞うかということが求められているのではないかということでございます。


 


第1回は触りということで背景についてお話を申し上げました。


第2回は「どういった職員が求められているのか」についての将来像について少しお話をしたいと思います。


 

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