
生成AIを賢くつかいこなすために最新トレンドを交え解説するシリーズ「ChatGPT・生成AIとの共創世界~恐れるのではなく賢く使う!~」。Vol.25では、AGI(汎用人工知能)に近づいた、”誤回答8割削減”で博士号レベルの統合型生成AIモデル「GPT-5」について解説します。
■ 「ChatGPT」ユーザー数7億人越え
8月4日にOpenAIは、「ChatGPT」週間ユーザー数が7億人を超えたと発表しました。特筆すべきは、3月よりわずか4か月で2億人の増加となり、1年で4倍増のスピード成長を果たしている点です。今年3月にGPT-4oに統合した画像生成機能など一連の新機能が新たなユーザー獲得に寄与したようです。
GoogleのGeminiは月間アクティブユーザー数が4億5千万人と競合ベンダーも数を伸ばしています。
■All-in-oneモデル「GPT-5」
そんな中、OpenAIは8月7日に「GPT-5」を発表しました。
今までOpenAIが発表してきた生成AIモデルは、GPT4.1,GPT-4o,o3-mini等モデルが複雑化して、ユーザーがモデルの特徴を理解して質問内容に応じて選択しなければいけませんでした。
GPT-5は推論能力と回答速度のバランス、そして回答品質向上を一つのモデルで実現した統合型生成AIモデルです。
性能についてはOpenAI CEO、サム・アルトマン氏は“GPT-3は高校生、GPT-4は大学生、GPT-5は博士号の専門家レベル“と形容しています。
回答品質については、誤回答8割削減としています。生成AIにつきものだった誤回答が8割削減というのは、大きな進歩です。
今までのo-3のような推論系モデルとGPT-4oのようなオールラウンド・モデルの統合は、どう実現されているのでしょう?
GPT-5は内部で ”ほとんどの質問に回答する高性能かつ高速度のハイスループットモデル”と、”より難しい問題に対応する高度なリーズニングモデル(GPT-5 Thinking)”の2つを持っています。そして質問内容に応じて、自動的に相応しいモデルを選択する方式を取っています(OpenAI Plus契約では、明示的に”GPT-5 Thinking”を選択できたり、OpenAI Pro以上の契約ユーザー向けにGPT-5 Proというさらに高度なThinkingモデルが利用できたりします)。
GPT-5を使う際には、質問内容によりモデルが自動選択される特性を頭に入れて、回答スピード重視であれば”簡潔に答えて“とか、推論を重ねた末に回答をして欲しい場合は、回答条件や前提情報等を詳細に書くなどの使い分けをするとよいでしょう。
他にオープンAIが強調している点はコーディング(プログラミング)性能の高さです。一般ユーザーにはあまり関係のないメリットに感じますが、今後はAIエージェント機能に関わるサービス連携等、様々な機能の向上が続いていきます。私たちが直接利用しなくても、間接的にコーディング性能向上が今後の便利な機能実現に寄与していくはずです。
またGPT‑5 は今までの既存生成AIモデルよりも同調性が低く、不要な絵文字の使用も少なくなる、と説明しています。一時期、ChatGPTがユーザーに媚びへつらいすぎる、という批判がありましたが、今回を機に軌道修正を図ったようです。
しかし、回答をさらに深掘りするために追加の質問を提案したりする姿勢は変わりません。質問を繰り返して会話を重ねることでより良い回答が得られる点では進化が続くでしょう。
GPT-5がマルチモーダル(画像認識、画像/ファイル生成)対応である点は従来モデルと同じです。内部ではサービス連携のインターフェースの充実化も実現しています。まだAGI(汎用人工知能)とは言えないかもしれませんが、頼もしい”相談相手“としてはまた一段のパワーアップを遂げました。
今や若い人から年配の方まで幅広い年代で、ChatGPTが”話し相手“、”相談相手”として使われています。単にわからないことを聞く目的だけではなくて、話すことで自分の考えの整理にも大きく役に立っているようです。
GPT-5がさらに人間に寄り添う存在として、世界中の8~10億人以上の人たちに使われる日もそう遠くないでしょう。
吉山 潔 氏(よしやま きよし)
1963年生まれ
HEROZ株式会社
AIビジネスコンサルタント
外資系金融機関3社IT部門在籍。
外資系IT企業日本法人2社カントリー・マネージャー
他・外資系/国内IT企業を経て現職