リードする楽天、猛追する金融勢 「ポイント経済圏20年史」(藤原 裕之)

2025.08.31 19:52

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勝者は誰の手に


ポイント経済圏の覇権を巡る競争が新展開を迎えている。総合金融アプリ「Olive(オリーブ)」を提供する三井住友カードと、決済サービス「PayPay」を手掛けるソフトバンクが業務提携、三菱UFJフィナンシャル・グループも同様のサービス「エムット」を立ち上げる。ポイントは今や企業の命運を左右する重要要素であり、ポイントを軸に大きな戦略を打ち出す企業も増えている。ポイント経済圏の歴史を振り返りながら、覇権争いの構図と先行きについて考察したい。センスクリエイト総合研究所 代表 藤原 裕之)



 


巨大消費130兆円に結び付く
ポイントサービスとは、企業が顧客に対し、自社サービスの利用状況に応じてポイントを付与する仕組みである。ポイントサービスは、消費者・企業双方にメリットがある。ポイントは通貨と同様の効果を果たし、顧客は有効期限の範囲で割引や特典というおトク感が得られる。


次回の来店・購入の動機につながるため、企業としては来店率や購入単価の上昇が期待できる。さらにポイントサービスで得られた顧客・購買データで効果的にマーケティング施策につなげることが出来る。


ポイントサービスには、企業・店舗が独自に展開する「自社ポイント」、業種業態を問わず幅広い加盟店で相互利用できる「共通ポイント」がある。自社ポイントは同一グループや特定の店舗のみで利用できるポイント。共通ポイントは企業や業種の垣根を超えて自由に利用できる。


ここ数年で急激に拡大しているのが共通ポイントだ。一般的に共通ポイントでは、システム構築費用をポイント事業者が負担、加盟店はポイントの原資と発行手数料をポイント事業者に支払う。


店舗同士・業種同士・サービス同士が相互につながり合うことで自然界のようなエコシステムが形成される。そこから、ポイント市場は「ポイント経済圏」と呼ばれるようになった。数字を見ると、キャッシュレス決済の普及 を追い風に、ポイント経済圏は今や無視できない規模に膨らんでいることが分かる。野村総合研究所の推計によると、2024年度に民間で発行されたポイントの総額は1兆3,800億円、2028年度には1兆6,200億円に達すると予測されている(図表1)


ポイント発行には物やサービスの購入が伴う。ポイント還元率を1%と仮定すると、ポイント経済圏は現時点で少なくとも130兆円もの巨大な消費市場と結び付いている計算になる。これは国内消費全体の 4割以上の規模に達する。




 


「20年史」で見る4つのフェーズ


世界有数のポイント大国と言われる日本。なぜここまでポイントが普及したのか。その歴史は自社ポイントの発行から始まる。1960年代頃から百貨店やスーパーで独自のポイントカードが発行されるようになり、1980年代には家電量販店がポイントを活用した値引き合戦が行われ、1990年代は航空会社もマイ...

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