信金・信組の預金推移「金利ある世界」の預金獲得 『都市部は苦労少ない』の真偽
2025.07.31 19:50
「信金、預金、伸び率低調続く」(ニッキン〔2025年04月18日号〕)とあるように、「金利ある世界」で“預金が自然と集まる”時代は終わりに近付いている。
預金獲得については、「人口流入や相続で預金が流入する都市部はその苦労が少なく、地方ほど預金獲得に窮している」と言われることは多いが、実態はどうなのか。
日本金融通信社が発行する「BKダイアリー(BKD)」と、金融ジャーナル増刊「金融マップ」から信用金庫・信用組合に焦点を当てつつ他業態も含めて預金量を抽出・集計し、直近5年間の推移を分析した。
「BKD 2025年版」によると、全国の信用金庫・信用組合の預金量は、2024年3月末時点で185兆1,888億円。5年前の2019年3月末比では12.78%増加している。
1都3県(東京、埼玉、千葉、神奈川)の首都圏に本店を置く信用金庫・信用組合の預金残高合計は52兆2,399億円で14.38%増、京阪神(京都、大阪、兵庫)は34兆3,766億円で11.01%増だった(図表)。
1都3県の増加率は全国平均を上回っているが、京阪神では全国平均を下回っているところを見ると、「都市部だから預金獲得に苦労は少ない」とは一概に言えないようだ。
一方で、全国から1都3県と京阪神を除いたエリアの合計値は98兆5,722億円の12.56%増で、増加率は全国平均とほぼ一緒だった。都道府県別では島根の26.52%増が最も高く、信用金庫・信用組合が地域でのシェアアップに挑む姿がうかがえる。
全国で見てマイナスとなった県はなかったが、青森や山口では5年間の増加率が1%台にとどまっている。そのほかにも預金の県外流出に頭を悩ませていると思われる県は複数あった。
「金融マップ2025年版」によると、メガバンクや地方銀行を含む都道府県別の預貯金残高の全国平均増加率(5年比)は19.44%だった。そのうち、1都3県の増加率は25.44%と全国平均を大きく上回っている。
県外からの流入預金が大手行やインターネット専業銀行に集中している可能性は高いが、首都圏の信用金庫・信用組合では自然に集まるのを待つのではなく、預金獲得へ足を動かして知恵を振り絞っている。ニッキングループでは引き続き、業態を問わず預金の詳細な推移をデータとともに追跡していく。
(ニッキンデータ商品開発部)