
DX(デジタルトランスフォーメーション)人材の育成研修事業を展開するキカガク。これまでに都市銀行や保険会社など10の金融機関で研修実績があり、23年度に入り信託銀行や地方銀行、資産運用会社でデータサイエンスの人材育成講座が始まる。新連載「初学者でもかんたん理解!注目業界のデータ活用によるDX 推進術」は、同社の研修講師が金融機関の営業担当者向けに取引先がDX推進するための活用事例を説明する。今回は、弘松優衣講師が食品業界を取り上げる。
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AI・機械学習・データサイエンス。最近急速に広まったこれらの言葉について『よくわからないけど、課題を解決してくれる便利なものらしい』。そんな風に捉えている方もいるのではないでしょうか。
最も重要なのは、こうした技術は、課題解決の“手段”であり、決して技術の導入がゴールではないと理解することです。このシリーズは、ゴールから逆算して、AI・機械学習・データサイエンスの技術を導入し、DX を推進した事例を業界ごとに紹介します。
また、紹介した事例に使われた技術の詳細も、できるだけ専門用語を使わず分かりやすくお伝えします。自社でデータ活用を考えている取引先があれば、ぜひご自身の会社ならどんな風に技術を活かせるのかなど、現場の実情と紐付けて提案してみてください。
飲食業界の事例
飲食業界でのDX は以下の事例があります。
1.タブレットを活用したモバイルオーダーシステムの導入
2.配膳ロボットの活用
3.データ活用による顧客属性ごとに最適化したメニュー開発
4.来店データを活用した来店客数予測や在庫管理
DX が実現するのは、単純な業務効率化だけではありません。顧客体験の向上など新たな価値を創出するのが、DX の本来の目的です。上記の3 と 4 は、まさに新たな価値を創出し続ける仕組みを実現した事例です。過去の売上データを活用することで、翌日の売上を予測することが可能になったり、予測された売上高をもとに食材発注量を算出することができます。これまで、人が経験と勘だった予測を、AI が代わりに行ってくれます。AI が適切な予測をすることで、発注業務効率化による人件費削減や、食品ロス防止、在庫の最適化にも繋がります。
『来店客数予測』に活用されている技術
1.基礎知識
活用されている技術を紹介する前に、前提となる基礎知識を抑えておきましょう。AI・機械学習は上記の様な関係性です。AI はプログラミングで人のノウハウを代替するもので、その手法が機械学習です。機械学習にも「教師あり学習」「教師なし学習」「強化学習」の3つの手法があり、来店客数の予測には、教師あり学習が使われています。
2.教師あり学習の活用方法
教師あり学習のAI(モデル) を活用する際に重要な 2 つのステップについてご紹介します。1つ目のステップは、『学習』です。この段階では、これまで蓄積してきたデータをモデルに学習させます。
具体的には上図左のように、来店客数に影響する条件(曜日・天候など)と、その条件の日の来店客数をセットでモデルに与えていきます。
モデルは『この条件のときはこれくらいの来店客数があったんだな』と、学習を積み重ね、データの規則性を理解するようになります。学習を積み重ねるほど賢くなっていくイメージです。十分にデータを与えて賢くなったモデルを、いざ実現場で運用するステップが『推論』です。
上図右の『学習済みモデル』とは、データの規則性を学習して賢くなったモデルのこと。学習済みモデルは、新たなデータに対して予測を自動で行ってくれます。この『推論』のステップで、AI による自動化が実現します。
今回は飲食業界での活用事例と、活用されている技術『教師あり学習』についてご紹介しました。教師あり学習には、データが欠かせません。データ活用で DX 推進を考える場合は、データの有無の確認や、蓄積するフローの改善も視野にプロジェクトを進めていただければと思います。
株式会社キカガクについて
Mission「あるべき教育で人の力を解放する」
私たちは教育を軸に人材領域で企業の DX を支援しています。これまで 60,000 人以上の受講生、約 600 社の企業の DX 推進をサポートしてきました。実データを用いた課題解決型研修 (PBL) を特徴とし、企業の課題に合わせ、研修をカスタマイズして提供しています。企業の DX 推進を実現するために、人材の要件定義から育成ロードマップの策定、アセスメント・スキル可視化など様々なサービスを展開。その他、AI モデルの受託開発やコンサルティング、AI・データサイエンスに特化した社会人向けスクールも運営しています。
代表者 : 代表取締役会長 吉崎 亮介
代表取締役社長 大崎 将寛