Vol.1 次世代の経営者のニーズをつかむためには

公開日

2022/05/27

プラス テイラーワークス コミュニティ


「地銀の大変革時代」と言われる今、多様な分野における課題解決支援が求められている。顧客の課題を抽出し、解決策を導くために効果的なのが、コミュニティの活用。コロナ禍でいっそう身近なものとなったオンラインコミュニティを、今後どのように利用していくと良いのか。コミュニティアプリ『Tailor Works』を提供するテイラーワークスの山本浩之会長と難波弘匡社長がシリーズ「地域金融機関のコミュニティ活用法」と題し、「次世代の経営者のニーズをつかむためには」「情報は固有資産から共有資産へ」「教育学の観点から考える地域活性化」「新たな共創を促すコミュニティで産業のアップデートを」をテーマに、全4回にわたり提言する。


事業者の世代交代が進み、二代目、三代目といった経営者は今や40代前後の層が中心となりました。地域金融機関は、このような次世代の経営者へ向けて、適切な粒度(りゅうど)での情報提供をより一層求められるようになっています。

これまでの経営者の意識は、金融商材に集中しており、「まずは地銀に相談しよう」という商習慣がありました。しかし、情報伝達技術の発達やデジタル化の促進とともに情報はコモディティ化し、地域金融機関が提供する情報の価値は希薄になりつつあります。

そもそも、地域の事業者の様相が変われば、自ずとニーズも変わってきます。地域金融機関は、ステークホルダーの変化に応じ、常にニーズを把握しておく必要があるでしょう。

では、近年の事業者のニーズとは、どういったものなのでしょうか。



   課題があるところに商機は生まれる
昨今の地域事業者の特徴について、以下のようなことが分かってきました。当社は、コミュニティアプリ「Tailor Works」参加者へのヒアリングをもとに、地域事業者を4つのタイプに分類しました(下図)。


プラス
横軸は利用目的(自社起点・地域起点)、縦軸は利用ニーズ(情報収集・ネットワークづくり)となっています。

情報収集とネットワーキングの課題を抱えている、あるいはより強化したい層は、意欲はあるものの能動的に行動するまでに至らない地域事業者です(図・右下)。

この層へ向けた情報提供とネットワーク構築のサポートに向け、地域金融機関が積極的に働きかけることで、地域経済の循環とサステナビリティ向上が見込まれます。



   全国の「デジタルディバイド」問題
さらに、上記ニーズの根源には、デジタルディバイドの問題があることも忘れてはなりません。

一般的に、デジタルディバイドとは、情報通信技術(ICT)を利用できる人とそうでない人との間に生まれる情報格差を指します。ところが、情報が溢れる大都市においても、これは顕著な問題なのです。東京でも、他の地域でも、限定的な地域の商習慣の中でビジネスが営まれ、その内部の人々でのみコミュニティが形成されているからです。

例えば、「自社を中心とした半径〇〇キロ以内」といった、物理的に狭い範囲での事業展開や取引に留まることで、情報が広く拡散・共有されない、いわばコミュニティ依存が生じているのです。このように、東京は地域に対して、地域は他地域に対して、各々デジタルディバイドの課題を抱えていると言えるでしょう。

従来の中央集権型社会から脱却し情報の非対称性が解消された分散型社会は、適切な粒度の情報を全国各地の誰もが等しく享受・共有できる状態です。限定的なコミュニティ内での情報流入が全てでは、次世代の経営者がオープンイノベーションを起こすことは困難です。地域を中心に据えながらも、日本全国から情報を収集でき、自由にネットワーキングができるのが分散型社会の目指すべき姿であると言えるでしょう。

経営者の世代交代に伴うニーズの変化、すなわち日本全国を市場と捉えた広域の情報や体験の提供、そしてネットワーク構築を見据え、地域金融機関は今一度、各々のステークホルダーの現状と向き合う必要に迫られているのではないでしょうか。


 


プラスプラス 


 

難波 弘匡

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