Vol.1 金融機関との連携を強める東京都立産業技術研究センター

公開日

2024/07/01

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取引先の本業支援を活発化させる地域金融機関。企業の持続的な成長には、社会や経営環境の変化への対応が求められる。そのためには、組織風土の改革はもとより、継続的な研究開発が重要だ。しかし、中小企業庁の調べでは中小企業の多くが、「必要な技術・ノウハウを持つ人材の不足」を課題としており、思うように進んでいないのが現状。シリーズ「公的試験研究機関を活用しよう!~中小企業の技術的課題解決をサポート~」では、中小企業の研究開発等を後押しする工業系公的試験研究機関(公設試)の役割や金融機関との連携事例等を紹介する。




各都道府県に存在する公設試の役割は、中小企業のニーズを捉えた製品開発・技術開発に対する的確な支援を行うことです。産業がめまぐるしく変化する中で、各公設試は技術相談、依頼試験、機器の開放利用、製品化のための研究開発、技術セミナーをはじめ、さまざまな中小企業支援のための事業を実施しています。本シリーズでは、公設試を活用してできることを皆さんに知っていただく目的で、東京・千葉・埼玉・神奈川の各公設試における中小企業の課題解決事例などを紹介します。


IoT、バイオなど多種多様な技術分野を支援する都産技研
地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター(以下、「都産技研」)は東京都により設立された公設試で、2006年に全国の公設試に先駆けて地方独立行政法人に移行しました。東京には多種多様な産業が集積していますので、都産技研は他の公設試に類を見ないほど多くの技術分野(機械、電気・電子、情報、IoT、化学、バイオ、食品等)に対応しています。近年は、5Gを含めた次世代通信技術の活用や、バイオ基盤技術を活用した化粧品・食品などの製品開発を支援しています。また、中小企業の海外展開に必要となる国際規格への適合性に関する相談対応など、ニーズに応じた技術支援を充実させています。



都産技研本部
都産技研本部



〝ひがしん〟と連携して浄化装置メーカーを支援
大成技研株式会社(東京都足立区)は、半導体や真空ポンプといった精密機械の製造に必要な浄化装置のメーカー。主力の真空産業用製品では、真空ポンプオイルからパーティクル、水分、酸を同時に処理し、真空ポンプの性能劣化を防止する「オイルクリーナー」や真空ポンプオイルから水分を連続的に分離させ、オイルを水分の影響を受けない新油相当状態で管理可能な「油水分離装置」、そして気体の粉体除去装置や液体分離装置なども展開しています。1995年以降、技術的な強みを活かし海外貿易の実績を積み重ねてきました。

同社が都産技研を利用するきっかけは、都産技研と業務連携協定を締結している東京東信用金庫(以下、「ひがしん」)からの紹介でした。例年タイで開催されている工作機械や金属加工技術関連の展示会「METALEX」(2023年11月開催)の都産技研ブースへの出展をひがしんが打診し、参加しました。多くのブース来訪者があり商談にもつながるなど、有意義な出展となりました。

展示会への出展準備と合わせて、同社が技術開発したものの以前より課題としていた渦注入器の技術検証に取り組みました。渦注入器は、大手真空ポンプメーカーとの共同開発計画に向け試作段階でした。理想の渦流効果が最大限持続する最適仕様を導き出す際には膨大な実験回数が必要となり、同社では実験設備を改善するなどの努力を重ねていました。

技術検証は、都産技研の「オーダーメード型技術支援」により、最適な製品仕様を決定するためのコンピュータシミュレーションを行いました。その結果、技術の有効性が裏付けられたほか、製品仕様の最適化という課題も解決できました。

現在、同社では大手真空ポンプメーカーとの共同開発に加え、この技術の標準装備化やオプション化を推し進め、今後は韓国、台湾、アメリカ、EUとの取引拡大も進めていく方針です。



都産技研でのコンピュータシミュレーションの様子
渦注入器を構成するパーツ群

金融機関との連携を強化
都産技研は現在11の金融機関と業務連携協定を締結しています。主に連携金融機関が主催するビジネスマッチングイベントでの出張技術相談や金融機関職員との企業への同行訪問による技術相談対応、金融機関職員や顧客向け都産技研施設見学会などを実施しています。今後は、金融機関との連携事業を一層強化し、中小企業の技術力向上や新製品・新技術の開発につながる取り組みを協働し、地域産業の活性化を図っていきます。


 


 



東京都の中小企業振興を目的として、各種技術支援事業及び研究開発事業等に取り組んでいる。本部は江東区青海に所在。ほか都内に、多摩テクノプラザ及び城東、墨田、城南の3支所と食品技術センターがあり、海外のバンコク支所を合わせて7つの技術支援拠点で事業を展開している。
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