第1回 新NISAで今後の資産運用ビジネスはどうなる?

公開日

2023/10/18

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いよいよ2024年1月から新しい少額投資非課税制度(以下、新NISA)がスタートする。新NISAが誕生した背景には、岸田政権が取り組みを進めている「新しい資本主義」がある。本連載「どう使う?どう提案する?新NISA」では、新NISAを活用した資産運用提案等について考えていきたい。

  新NISAをきっかけとした資産形成のアプローチ方法  

我が国の家計金融資産は、現預金が約55%を占める一方、米国や英国では、確定拠出年金(DC)等を含めた株式や投資信託といった有価証券の割合が我が国に比べて高くなっている(図表)。また、家計金融資産は2000年から2021年までの間に米国では3.4倍、英国では2.3倍に増加しているが、我が国では1.4倍である(内閣官房「資産所得倍増に関する基礎資料」参照)。これは、保有する金融資産の運用リターンによる差異が大きい。こうした点から、投資による資産形成を促すために新NISAがスタートすると言えるだろう。


 


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そのため販売会社および販売担当者においては、投資経験のある既存顧客だけでなく、投資未経験者に対しても、投資による資産形成を促すため、新NISAをきっかけとするアプローチをすることも考えたい。

投資経験や金融知識等によって提案方法・商品、情報提供の仕方が異なることを踏まえると、特に投資未経験者に対しては、経験者以上により丁寧な対応が必要であることから、販売担当者としてはためらうこともあろうが、投資未経験者を投信の顧客として獲得し、顧客の裾野を広げることは今後の資産運用ビジネスを考えると必要ではないだろうか。

従来、投信販売は、まとまった資産のある高齢者や富裕層を中心に、余剰資金を一括投資する提案が多く行われてきたと思われる。しかし、新NISAを通じた資産形成の狙いを考えると、将来のライフイベント等に向けて必要な資金を、資産運用を通じて用意するための提案を、保有資産の少ない人向けにも行うことが求められているだろうし、その結果、金融機関等のさまざまなビジネスにつなげられるのではないだろうか。つまり、非課税枠の大幅な増額と恒久化という特徴を持つ新NISAでの取引をきっかけに、顧客のライフステージに応じて資産運用を含めたさまざまなニーズをつかみ取ることができる点が、新NISAを利用して投資未経験者を顧客化するメリットの一つとなろう。

必要な資金の準備方法は、資産運用に限らず、保険や個人ローンといったさまざまな商品やサービスを利用することでも可能である。従って、販売会社や販売担当者に求められるのは新NISAを利用した資産運用の提案だけでなく、従来から言われている通り、顧客の資産目的を把握し、その目的達成に応じた提案を行い、定期的なメンテナンス(ポートフォリオの見直し等)等のフォローをすることであろう。そのためには、総合的なコンサルティングスキルがこれまで以上に必要となってくると思われる。


(このコラムは「ニッキン投信情報」に掲載された連載を再編集したものです)



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木村 由香

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