
地域金融機関が地方創生および役務収益の拡大を目的に取り組むM&Aビジネス。外部の専門家と連携し積極的な展開をみせる。中小企業庁も経営者の高齢化対応や中小企業の生産性向上の観点からM&Aの取り組みを後押し。インターネット上で売り手と買い手をマッチングし、低コストで手続き可能なM&Aプラットフォームも有効な支援ツールと位置付ける。買い手企業登録数約8400社を誇り、62の地域金融機関と連携するM&Aサクシードの前田洋平ビズリーチ・サクシード事業部長が「M&Aプラットフォームの活用策」をシリーズで解説する。
1. 事業承継・M&Aの現状
経営者の高齢化や新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、国内の中小企業は、事業承継に悩みを抱えています。帝国データバンクの2021年全国企業「後継者不在率」動向調査によると後継者不在率は、2017年に66.5%とピークを付けたあと、2021年は61.5%に。行政、民間企業が連携し、課題解決に取り組んだ効果から減少傾向をたどっていますが、依然高い数値となっています。今後も事業承継およびM&Aは拡大傾向が続くと予想されます。
2. 有効性の高いM&Aプラットフォーム
昨今、M&Aプラットフォーム事業に参入する企業が増加しています。2020年に中小企業庁が「中小M&Aガイドライン」を策定し、中小企業のM&Aについて解説した「中小M&Aハンドブック」を発刊しました。ここで初めてM&Aプラットフォームが紹介され、有効な支援ツールのひとつに位置づけられ、中小企業庁が管轄する全国の事業承継・引継ぎ支援センターとM&Aプラットフォーム3事業者の連携も開始しました。そして、2021年4月には中小企業庁が「中小M&A推進計画」を発表し、金融機関を含めて官民連携で中小企業のM&Aを推進しています。
3. 選択肢広がり割安な手数料
M&Aプラットフォームの利用で、売り手企業、買い手企業双方が大きなメリットを享受することができます。最も大きな利点としてあげられるのは、買い手候補企業の選択肢の拡大です。M&Aプラットフォームの活用で、売り手企業の選択肢が、地域にとらわれず全国に広がり、理想的な譲渡先を見つける可能性が広がります。また、インターネットを活用し、M&Aに積極的な買い手企業の経営者自身が利用・判断していることが多いため意志決定が早く、オンラインNDA(秘密保持契約書)の利用などで、スピーディに手続きが可能です。手数料も売り手企業は無料のケースが多く、買い手企業もM&A仲介会社に比べ割安です。
4. 想像を超えたマッチングも
隔地間や異業種・異業態のM&Aなど、想像を超えるマッチングが多く生まれる傾向にあります。たとえば、「この企業のこの事業と一緒になると、こんなシナジーがある」というように、経営者自身が譲渡案件から新ビジネスを着想するなど、意外なマッチングが生まれることも多々あります。
このようにM&Aプラットフォームの活用は、事業承継の観点からも有効な手段と言えます。
