Vol.5 女性リーダーは育つのか、育てるのか? 〜キャリア形成のリアル〜

公開日

2025/10/20

現場にある思い込みや性別による固定観念をリセットし、自由で柔軟な働き方を実現するヒントを提供するシリーズ「“女性だから”をなくせば、“男性だから”もなくなる」。今回は、女性のキャリア形成について取り上げる。


女性がリーダーを目指すとき、立ちはだかるのは「本人の資質」だけではありません。
妊活や出産、介護といったライフイベントと昇進のタイミングが重なるケースや、身近にロールモデルがいないことで挑戦をためらうケースもあります。
職場環境や組織の仕組みが整っていなければ、「育つはずのリーダー」が埋もれてしまうことも少なくないのです。


本記事は、QOOLキャリアの福利厚生サービス『TUMUGU(つむぐ)』で実施したセミナーをもとにしています。登壇いただいたのは、日本航空株式会社(以下、JAL)の元社員である塚田氏。1982年に入社した当時、制度として育児休業は存在していましたが、結婚や出産を機に退職する女性が多く、実際に利用する人はほとんどいなかったと言います。
ロールモデルが少ないなかで、彼女はどのようにキャリアを切り拓いていったのでしょうか。その歩みには、管理職として部下を支えるヒントが隠されています。


■ ロールモデルがいない時代をどう越えたか
JALで女性の総合職が導入されたのは1982年からで、まだ多くの女性は一般職として入社していた時代。塚田氏自身もロールモデルがほとんどいない中で、産前産後休暇のみを取得し、復帰する道を選びました。決して整っていた環境ではなかったものの、復職後も“働き続けたい”という思いを軸にキャリアを重ね、機内販売の企画責任者、カード会社(出向先)での管理職、コールセンター長など、多様な職務を経験されたそうです。


「異動の際には『少なくとも2年間は行ってきてほしい』と期間を明示され、背景もきちんと説明された。一方的な命令ではなく、納得感のある配置だった」と語る塚田氏。さらに、1991年から秘書として仕えた役員からは「ただのコピー取りではなく、意見を出してほしい」と求められた経験も。性別で役割を固定せず、能力を評価する姿勢は、当時としてはきわめて先進的なものでした。


女性が管理職を務めることがまだ珍しかった時代。制度だけでなく、上司の意識や支援があったからこそ、挑戦を続けられたといえます。


■ 働き方を選べるということ
塚田氏のキャリアを支えたのは、柔軟な働きかたの選択肢でもありました。子育ての時期には「朝8時から夕方まで勤務して子どもを迎えに行き、夜に再び仕事をする」というスタイルを取り入れ、近年は母の在宅介護を担いながらも仕事を続けることができました。


「制度があるだけでは不十分で、それを使うことが当たり前になる文化が必要」と塚田氏は語ります。JALでは2023年の男性の育児休業取得率が85%を超え、「男性が休むのは特別ではない」という意識が根付いたと言えます。女性がキャリアを諦めずに続けられる土台は、こうした価値観のアップデートに支えられているのです。


■ 支援型マネジメントの必要性
働き方や価値観をアップデートすることは、どの職場でも共通の課題です。管理職に求められるのは、部下一人ひとりの状況を理解し、信頼関係を築く支援型のマネジメントであり、時には自らが柔軟な働き方を実践し、ロールモデルとなることが必要です。


リーダーは「自然に育つ」のを待つものではありません。塚田氏のキャリアが示すように、環境が整えば人は育ち、組織の支えによって挑戦を続けることができます。
誰もがキャリアをあきらめなくていい職場をどうつくるか。価値観や働き方をアップデートするヒントとして、いま一度考えてみませんか。


山中 泰子(やまなか やすこ)
株式会社QOOLキャリア 代表取締役社長


人事歴15年以上。 大手IT系人材サービス企業で人事として採用・育成・制度設計を経験。自治体と協働し、ひとり親家庭の就業支援事業を立ち上げ、保育施設を併設した就業施設の開設・運営を主導。その後、上場企業の人事担当執行役員、スタートアップの人事責任者を歴任し、2022年4月よりQOOLキャリア代表に就任。企業のダイバーシティ推進を支援するほか、1児の母としての経験を活かし、キャリアアドバイザーとして仕事と育児の両立に悩む女性の支援を行う。
福利厚生サービスTUMUGUサービスサイト:https://tumugu-service.jp/
株式会社QOOLキャリアHP:https://career.qo-ol.jp/
ワーママのキャリアと働きがいをアップデートするメディア:https://www.qo-ol.jp/

山中 泰子

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