クレディ・スイス、信用不安が急拡大 TLAC債などに世界的影響の芽
2023.03.16 14:06欧州銀行の信用不安が急拡大している。シリコンバレーバンクなど米銀3行の破綻・清算を受けてマーケットの緊張が続くなか、3月15日(現地時間)、財務・収益面の弱さを抱えていたスイス金融大手のクレディ・スイス・グループの株価が急落。前日比で一時、30%超下落し、欧州市場全体でも銀行株を中心に軒並み安となった。前日(14日)にクレディが公表した報告書で財務管理体制について「重大な弱点」が指摘されたほか、翌15日には筆頭株主による追加出資見送りが報じられ、投資家の不安心理が深まった。
G-SIBs(グローバルなシステム上重要な銀行)の信用不安は、グローバル危機への新たな火種となりつつあり、金融当局は早急な火消しに動いている。
スイス国立銀行(中央銀行)とスイス金融市場調査局は15日、クレディに関して「自己資本と流動性に関する厳しい要件を満たしている」と財務の健全性を訴えつつ、「必要があれば流動性資金を供給する」との共同声明を公表した。
また、16日にはクレディが、スイス国立銀行の資金供給枠から最大500億スイスフラン(約7兆円)を調達し流動性を強化する行動を取ることを未明に公表。信用不安の一刻も早い払拭を図った。
G-SIBsの信用不安が増幅するなか、今後、懸念されるリスクの一つが大手金融機関の発行する債券への影響だ。「大き過ぎて潰せない」規模の巨大金融グループでは、金融危機に陥った場合に備え、総損失吸収力(TLAC)債をグループ持ち株会社などが起債する形で発行。破綻時、債券保有者が損失を負担する仕組みである一方、利回りが比較的高く、保有する邦銀は少なくない。
ある金融機関関係者は「グローバルレベルの大手行〝群〟の信用力に疑念が生まれると、TLAC債の大幅な下落につながり、本決算期末のバランスシートへの打撃が深まる」と警戒する。
欧州の大手銀行を中心に発行されている偶発転換社債(CoCo債)への影響も不可避。銀行の自己資本比率が一定水準を下回った場合など特定の条件(トリガー条項)が起きた際に強制的に株式に変わったり、元本が削減されたりする転換社債で、リーマン・ショック後の新たな資本増強策として認められた。弁済順位が劣後債よりも低い半面、利回りが高く、発行コストも「株式」に比べ抑えられるため、超低金利環境下、投資家・発行体双方のニーズを満たしていた。
ただ、足元のような発行体の株価が大きく落ち込んでいるときに、主に5~7%程度とされる自己資本比率のトリガー条項に抵触した場合、投資家が受け取る株式価値は大幅に減価。同社債が、国内の個人投資家を含めて世界的に普及するなか、自己資本比率を仮に下回ると、グローバルな影響が免れない状況に陥る恐れがある。
ECB(欧州中央銀行)は3月16日に金融政策会合を開く。欧州圏で歴史的高インフレが続くなか、「物価の安定」と「金融システムの安定」の二者択一的な選択が迫られそうだ。
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