Web3.0×地方創生(下) 地域金融機関も動き出す

2022.11.22 04:58
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メタバース「ANA グランホエール」では京都市の八坂神社も体験できる
メタバース「ANA グランホエール」では京都市の八坂神社も体験できる


ANAメタバース子会社 14機関が投融資58億円


地域金融機関が動き始めたのがウェブスリーのサービスの一つメタバース分野だ。ANAホールディングスのメタバース子会社ANA NEOには、メガバンク、地域銀行、信用金庫14機関が約58億円を投融資する。(上)はこちら> 


ANA NEOはこれを元手に、2023年前半にメタバースプラットフォーム「ANA グランホエール」を開始する。京都など日本の観光地を模したメタバースに、地域金融機関が紹介した取引先企業の商品を扱うバーチャル店舗の出店を検討中だ。アパレル・化粧品・工芸品などが出品され、訪れたアバター客がメタバース上でクレジットカード決済した後に、自宅に商品を届ける。出店から発送までANA NEOが担い、取引先の負担を最小限に抑えつつ“地産外商”の場をつくる。


メタバースはインターネットに接続できれば世界中のどこからでもアクセスできる空間のため、外国にも商品を売り込める。メタバースで観光地を知った人が現実に足を運ぶことも期待できる。徐々に回復するインバウンド需要の取り込みが見込まれ、コロナ禍で疲弊する地域経済の起爆剤にもなり得る。


ANA NEOの冨田光欧代表取締役・CEOは「約3800万人のANAマイレージクラブ会員にメタバースを訴求するために、一部、マイルによる決済も可能にした。地域金融機関の方々と共に地方を元気にしていきたい」と意気込む。


トマト銀行で実際に同社への融資を担当した営業本部の塩田英喜氏は、「ANA NEO社のメタバースのクオリティーの高さと、開発陣の本気度に圧倒された。コロナ禍が収まって人流が戻っても、一つのサービスとして確立されるポテンシャルを感じる」という。伊予銀行地域創生部の玉井誠司氏は「四国・愛媛をメタバースで再現し、インバウンドの増加につなげたい。ANAマイレージクラブの会員が地方に目を向けるきっかけにもなれば」と期待している。



ふるさと納税返礼品をNFTで





北海道北広島市の駅ホームに設置された、NFT作品に接続できるQRコード
北海道北広島市の駅ホームに設置された、NFT作品に接続できるQRコード



「日本の地方は世界に通用する魅力を持っている。NFTで少しでも地域の魅力発信に貢献していきたい」と語るのは、自治体のふるさと納税と、地域の観光事業をNFTプラットフォームで支援する「あるやうむ」の畠中博晶代表だ。中学・高校時代を東京で過ごし、関西の大学に進学後、仮想通貨の裁定取引で得た資金で、念願の札幌移住を果たした。


「地理オタク」でもある畠中代表は、ブロックチェーン技術の知識と地方創生を掛け合わせ、21年10月にNFTプラットフォーム事業を開始。企画や返礼品登録から、マーケティング・カスタマーサポート・発送まで支援する。


1月に北海道北広島市とともに観光NFTの実証実験を実施。地元の観光名所をテーマにした、NFTアート購入の抽選券を得られるQRコードを現地に設置したところ、全国から足を運び抽選に参加する人が相次いだ。


5月には北海道余市町が、日本で初めて同社のふるさと納税NFTを返礼品として採用。人気NFTアーティストpokiさんによる名産品のワインをモチーフにした作品を発行した。pokiさんが描いたNFTの裏付けがある54作品(1作品12万円)は即日で寄付受付を終了する人気だった。余市町は10月にも222個の別のNFT作品を返礼品として発行し、3分ほどで全ての作品に寄付が集まった。同社は今後、自治体向けに関係人口を増加させるオプションを提供していく予定だ。



絶海の孤島にステーブルコインで金融インフラ
 





漁協前にたつ岡部代表。青ヶ島は光ファイバーが通り、ウェブスリーに必要なネットアクセスは良いという
漁協前にたつ岡部代表。青ヶ島は光ファイバー通信が通り、ウェブスリーに必要なネットアクセスは良いという



本土から358キロ離れ、「絶海の孤島」と称されるた東京都青ヶ島村。郵便局のATMしか金融機能がなく、つい最近まで仲間内で相互に資金を出し合う無尽講が現役だった離島に、新たな金融インフラを構築する試みが始まった。手掛けるのは、国内で流通している日本円ステーブルコイン利用者数トップの「JPYC」だ。


同社は、9月にブルーエコノミー推進室を設置。ステーブルコインを中心とするウェブスリー技術により、現在信用事業を営んでいない青ヶ島村漁業協同組合に、電子決済発行などを含む金融機能を構築することを目指す。今後、ステーブルコインを絡めた地域通貨の実証実験を行う予定で、名称として「JPYSea」の商標登録を出願した。


青ヶ島にも生活拠点を置いているJPYCの岡部典孝代表取締役は、「ブルーエコノミー(文末に説明)により水産業を活性化させ、離島経済を支えていきたい」と語る。将来的にはステーブルコインにとどまらずNFTなども用いながら、世界から青ヶ島に資金を集めて、洋上風力発電や海底鉱物資源の開発などの新たな産業につながればと展望している。



ブルーエコノミー 
 水産業、海運、海洋レジャー、海水淡水化などの海洋に関する経済活動のこと。近年、海に囲まれた日本で注目が集まっているが、大規模な初期投資が必要とされる。



(上)はこちら> 


 

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