西九州新幹線が開業へ 地元経済活性化の起爆剤に

2022.09.19 04:50
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疾走する新幹線かもめ(JR九州提供)
疾走する新幹線かもめ(JR九州提供)

九州旅客鉄道(JR九州)の西九州新幹線が9月23日、武雄温泉駅―長崎駅間(66キロ)で開業する。整備新幹線計画の決定から50年近くの歳月を費やした。それだけに、今回の開業がもたらす地域経済の活性化や観光客増加への期待は高まっている。ただ、九州新幹線と結ぶ武雄温泉駅以東のルートは未定。開業による経済波及効果が、今後のルート整備にも影響を及ぼしそうだ。


西九州新幹線「かもめ」の一日の運転本数は、武雄温泉駅―長崎駅間が44本、新大村駅―長崎駅間が3本の合計47本。博多駅―武雄温泉駅間は在来線特急が運行され、武雄温泉駅のホームでの乗り換えは、対面乗り換え方式(リレー方式)を採用する。途中駅は嬉野温泉、新大村、諫早。博多駅―長崎駅間の所要時間は最速約1時間20分と、従来の在来線特急の利用に比べて約30分短縮された。料金は12月末までの期間限定で、片道3200円の割引切符がある。


嬉野市内の鉄道駅は91年ぶりに復活。JRの駅としては今回が初めてだ。駅のそばには、観光・交流施設、公園などが整備された道の駅「うれしの まるく」が誕生。美肌の湯として有名な嬉野温泉への観光客増加が見込まれている。


長崎駅周辺の再開発も活発。地上13階建ての新駅ビル、駅から1キロ離れた三菱重工幸町工場跡地に球技専用スタジアムや商業・ホテルの複合施設が今後開業を予定されている。新幹線整備による駅周辺のにぎわい創出へ期待する声は大きい。


観光や交流人口拡大に期待


ニッキンでは、西九州新幹線沿線周辺に本支店がある金融機関に「西九州新幹線への期待」「イベント企画」「全線開業時の影響」についてアンケートを実施した。


期待としては、「地域経済の活性化」に対する回答が多かった。「停車駅沿線の整備に加え、長崎駅周辺では大規模MICE(会議・展示など)施設やホテルの建設が進み、イベント集客による経済効果に期待」(十八親和銀行)する。「西九州(福岡、佐賀、長崎)の経済波及。九州新幹線ルートとの相乗効果」(筑邦銀行)や「アクセス向上による経済波及」(九州労働金庫)、「離島をはじめ各地域の活性化が図られる」(農林中央金庫)「北部九州三県の県境を越えた企業活動の活性化」(福岡中央銀行)などの声もあった。


「修学旅行生、観光客、ビジネス客の増加に伴う交流、定住人口の増加」(長崎銀行)、「佐賀・長崎の両県が一体となった観光資源の開発」(佐賀銀行)と観光やビジネス交流、定住者の増加に期待を寄せる。また、「特急列車が通っていなかった沿線地域の新規産業創出による経済活性化」(長崎県信用保証協会)を望む声もある。


イベント企画では、佐賀銀と十八親和銀が連携し、iBankマーケティングのEC(電子商取引)サイト「エンニチ」で、地元名産品の有田焼と波佐見焼の「西九州新幹線開業特集」を開催。今後、佐賀県鹿島市を中心に「祐徳稲荷神社正式参拝&酒蔵ツーリズム」を計画する。


たちばな信用金庫は「よい仕事ネットワーク」を活用し、新幹線開業を契機に地元の特産品をPRする商談会を予定。商工組合中央金庫は、全国ネットワークを活用したビジネスマッチングや地域金融機関とタイアップした商談会を開催したいと考えている。


西九州新幹線の全線開通について、「所要時間の大幅短縮により九州だけでなく、中国や近畿地方との人口交流の増加が見込まれる」(十八親和銀)や「心理的に長崎が身近に感じられる」(商工中金)と、さらに人の交流が増えることを予想する。「全線開通は必須。新幹線のコンテンツを利用して経済活動につなげるべき」(九州ひぜん信用金庫)と、今後も地元活性化への起爆剤として期待を寄せる。


一方、佐賀県内の一部金融機関には「佐賀がスルーされ観光客や人口の減少」「在来線の本数削減」「迂回(うかい)ルートの今後の路線運営」「税負担の増加、運賃引き上げ」などを心配する声もあった。

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