FRB パウエル議長が講演 インフレ「楽観論」に釘

2022.08.27 07:59
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米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長は8月26日、カンザスシティ連銀主催の経済シンポジウム(ジャクソンホール)で講演し、「物価を安定させるためにはしばらく時間がかかり、家計や企業には痛みを伴うことになる」と述べ、インフレ鎮圧に向けた厳しい対応姿勢を示した。


パウエル議長は米経済について、力強い状態が続くとしながらも、「労働市場は需要が供給を明らかに上回り、需給のバランスを欠いている」と懸念。一方、1970、80年代のインフレ対策で得た知見をベースに今回のインフレを乗り切ると語り、そのポイントを強調した。


具体的には、①中央銀行はインフレを低く安定させる責任を持っている②世間の期待インフレはインフレそのものの先行きに大きな影響を与える③インフレが下がってきても人件費の上昇はしばらく続くので、最後までインフレ対応をやりきらねばならない――の3点を挙げ、「物価の安定」というマンデート(使命)に即し、強力な政策手段で引き続き応じる構えを示した。


実際、FRBは物やサービスの需要を抑えて供給と釣り合わせるため、金融引き締めを加速。6、7月には連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利のFF(フェデラル・ファンド)レートのターゲット・レンジを通常の3倍となる75ベーシスポイント(bp)ずつ引き上げ、2.25%~2.50%とした。


パウエル議長は、7月のFOMC後の会見で「9月のFOMCで、さらなる大幅利上げの可能性がある」と述べ、今回の講演でも同じ見解を引き継いだ。さらに「7月のインフレが多少下がったとはいえ、単月の数字の改善だけでは十分ではない」と訴えた。


また、FOMCメンバーによる23年末までのFFレートの予測(中央値)は、前回公表時点の6月で4%を若干下回る水準だったが、「次回の9月の予測では変更されるだろう」と、7月のFOMC後に市場に広がった「23年には利下げに転じる」という見方に釘を刺した。一方で「引き締めが続けば、どこかの時点で利上げペースを緩めることが適切となる」と付け加えた。


米国市場では、パウエル議長の講演を受けて反応。ニューヨークダウ工業株30種平均が前日終値から1000ドル超の大幅安で引けるなど株式市場は軒並み下落し、債券市場では米国債利回りが上昇(価格は下落)した。


第一生命経済研究所の熊野英生氏は「発言の表現などからマーケットの想定以上にタカ派的な姿勢を示した。労働市場の過熱を抑えて物価を安定させるためには一定期間のリセッション(景気後退)も辞さない考えを明確にし、利上げのピーク水準を高め、早期の利下げ期待を打ち消した」と講演内容を分析する。

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