広がる「ちいきん会」活動④ 群馬ダイアログ

2022.09.04 04:40
広がる「ちいきん会」活動
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新田信行・ちいきん会代表理事を迎えて行われた初のリアルダイアログ
新田信行・ちいきん会代表理事を迎えて行われた初のリアルダイアログ


幻に終わった「ちいきん会in群馬」


2019年に立ち上がったちいきん会。東京で2回、福島で1回大規模なイベントが開催された後、群馬でもちいきん会を開催できないかと、有志で動き始めたのが2020年の初め。その年の6月開催に向けて準備を進めていました。


会場も確保し、プログラムの全体像も出来上がりつつあったその時、新型コロナウイルスの感染が拡大。泣く泣く開催を断念することとなりました。



偶然の再会が群馬ダイアログの立ち上げへ


20年5月、とある有志でのオンライン勉強会に参加した際、偶然再会した群馬県内の銀行員かつソーシャルクリエイターの鈴木理人さんと、「コロナ禍のこんな時だからこそ何かできないだろうか」という話で意気投合。すぐに何人かを集め、打合せを実施。そこで浮かび上がってきたのは、“自分達はそもそも誰のために、何のために仕事をやっているのか?”“できること、やるべきことってまだまだあるんじゃないか?”という皆の“想い”でした。


まずは一度つながりの場をつくってみようと、行政や金融関係を中心に声がけをし、さっそく翌月に初のダイアログを開催。ゲストスピーカーとして、県内で介護事業を営む(株)PureNextの塚田純次社長をお招きしました。コロナ禍で自社の事業が大変な中、旅館との連携や地域の飲食店支援のためのお弁当販売などに取り組んでいた塚田社長。その取り組みの詳細や背景にある想いをお聞きした後、グループに分かれて感じたことなどを語り合いました。


参加者からは、「こういう組織や肩書に関係なく、大切なことを本音で話ができる場が欲しかった」、「刺激を受けた、次も参加したい」との声が聞かれ、とにかく継続してみることに。



三つのお約束で心理的安全性確保



オンラインダイアログの様子
オンラインダイアログの様子

 


オンラインで平日の夜2時間程度、ゲストを招いて話を聞き、それを踏まえて「問い」を立て、グループに分かれて対話を行う、というのが基本の形です。参加者は毎回20名前後。


対話を行う際に大切にしている三つの“お約束”があります。①意図をもって話す、②学ぶために聴く、③一人一人の声を大切にする――です。心理的に安全な場を作るためには、参加者一人一人の協力が欠かせません。皆で良い場を作っていく、そのための“お約束”です。


日頃の情報発信や共有はFacebookグループで行っています。グループは原則招待制とし、参加者の方々が誘いたい人を招待する形で、ジワジワと輪が広がっています。今では県内外問わず、行政機関、金融機関に関わらず、様々な属性の方に参加頂いており、登録者数は430名程になっています。



ダイアログから生まれた事業者の相談の場


対話を重ねる中で、「具体的に何かできることはないだろうか?」、そんな声から生まれたのが「NETSUGEN勝手にコンサル」です。


群馬県庁32階にある、コワーキングスペースを備えた官民共創スペース「NETSUGEN」。その運営に携わるコーディネーターの方と連携し、NETSUGENに集う事業者の悩みや考えを聞き、皆でアイデアを出し合うという、いわば“気軽な相談の場”を作りました。参加された事業者の方からも好評で、今まで10名の方からご相談を受けています。



勝手にコンサルを行った際のグラレコ

また、みなかみ町で移住・起業サポートを行っている、(一般社団法人)FLAPと連携し、同様の取り組みを実施しています。


上記の他にも、就活生と地元企業との座談会、県内山間部の地域活性化を考える研究会、青年会議所の事業サポート、ワーケーションや複業人材に関するセミナーの開催、フィールドワーク等、様々な取り組みが生まれ続けています。



個人の問題意識を尊重


このネットワークは明確な形が無い、ゆるやかな繋がりです。私が“世話人”として事務局的な役割を担っているほか、運営の中心となるメンバーはいますが、特に役割は決めていません。必要に応じて協力し合う形です。


意識しているのは、「個人の“問題意識”や“やりたい”を尊重し応援する」ということ。


誰かに言われたからやる、そういう役割だからやる、のではなく、あくまでも個人の想いが起点です。そこから共感がうまれ、行動変容につながっていく、そのきっかけの場とできたらと思っています。



群馬ダイアログのこれから



リアルダイアログの様子
リアルダイアログの様子

 


今年7月、(一般社団法人)ちいきん会の代表理事である新田信行さんを群馬に招き、活動開始から3年目にして初めてリアルでのダイアログ(オンラインも併用)を開催しました。


現在は、県内でエリアを絞り込み、より地域に密着したダイアログの開催に向けて動き始めています。


変化が早く、何が起こるかわからない不安定な世の中。地域での課題は山積しています。それぞれが所属する組織、置かれた立場や環境の中で最善を尽くすことはもちろん大切です。一方で、既存の枠組みだけでは対応できないことが増えているように感じます。


組織や肩書の壁を超えて、個人の能力や経験や熱意を地域に開放し、繋がっていく。それは変化に対応し、多くの課題を解決していくための大きな力になるのではないでしょうか。結果的には既存の組織、それぞれの本業にとってもプラスとなるはずです。


この活動自体にたぶん“正解”はありません。受け取る“価値”も人それぞれだと思います。この記事を読んで、興味をもった方がいらっしゃれば、気が向いたときに是非フラッと参加してみてください。ゆるやかに繋がりましょう。



群馬ダイアログ世話人 井上 雅光
(1977年群馬県高崎市生まれ、関東財務局勤務)


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