日銀分析 VB拡大へ欧米比で課題 大口資金「出し手」不足

2022.07.08 04:47
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日本銀行は、資金調達額が増加傾向の国内ベンチャービジネス(VB)に関する調査・分析に力を入れている。デジタルや気候変動対応関連などのイノベーション需要が世界的に高まるなか、担い手であるベンチャー企業への関心は強まり、国内の市場規模も拡大。ただ、先行する米欧比では成長ペースが鈍く、日銀は大口資金の出し手確保といった課題を指摘する。


スタートアップ企業の資金調達額は2011年に約1000億円だったが、21年には8000億円に迫る。オープンイノベーションに対する高い関心や、税制優遇が事業会社の投資を膨らませ、海外IR積極化による認知度向上などで海外投資家らが割安感のある日本市場への参入姿勢を強めたためだ。また、行政や大学、大企業との連携といったVBを支える「エコシステム」の整備が進展。東京などでベンチャー企業が育ちやすい環境を醸成してきたことも要因に挙げられる。


ただ、世界のVB拡大ペースに比べ、日本は「緩やかと言わざるをえない」(調査統計局)現状で、金融面での課題は多い。その一つが「大口資金の出し手の確保」。特に、新規株式公開(IPO)やM&A(合併・買収)が視野に入る「レイトステージ」に対する大規模な投資資金が不足。企業の成長に応じて大口化する米欧と異なり、多額・長期の先行投資を要する「研究開発型ベンチャー」などが未上場のまま育ちにくい金融環境となっている。


そのため、事業規模の小さい段階でIPOを選ぶ企業が目立つ。だが、新興市場の取引は主に個人投資家で、旧マザーズ市場(現グロース市場に相当)の売買代金(21年)の約6割を占める。大口資金の出し手となりうる機関投資家は限られ、上場後の大規模な成長資金の確保を難しくしているとみられる。


日銀は、未上場企業に対する国内機関投資家資金の呼び込みや、東京証券取引所の市場再編に伴う多様な投資家の参入を重要視する。

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