【眼光紙背】〝真贋〟問われぬ資産たれ

2024.12.05 04:30
眼光紙背
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2014年、ビットコインの開発者とされる「サトシ・ナカモト」氏を突き止めたと米誌が報じた。米国在住の日系人男性で、筆者も取材に追われた。結局は人違いだったが、最近「協力者」なる者が現れ、米メディアが特集を組むなど騒動が再燃している。


あれから10年。相場は乱高下しつつも高値を更新、大台の10万ドルを突破した。潮目が変わったのは、年初に米証券取引委員会(SEC)から上場投資信託(ETF)として承認されたことだろう。仮想通貨に寛容なトランプ氏が米大統領に返り咲いたことも、押し上げに一役買っている。


ただ、資金洗浄など違法行為にも使われ、ダークサイドと境界は不鮮明。トランプ政権を拒み退任するゲンスラーSEC委員長も、ETF承認時に「ビットコインを推奨したわけではない。投資家はリスクに注意せよ」とくぎを刺していた。


少なくとも日本では熱狂とは呼びがたい空気を感じている。新手の投機に慎重な国民性は置いても、ボラティリティの高さ、不明確な価値、繰り返される不正流出事件――に不安が拭えない。


ビットコインの普及には法規制の整備が欠かせない。資産の海外流出を阻む保有命令の対象となるのは、金融商品取引法の登録業者で、仮想通貨を規制する資金決済法は対象外。金融庁は金商法への移行も視野に規制強化を検討している。


仮想通貨は雑所得で税率は最大55%だが、金商法が規制する株や債券は金融所得で20%。耳目を集める国民民主党も、税制改正要望で与党に暗号資産(仮想通貨)の税率引き下げを促している。とはいえ、ビットコインを株や債券などの伝統的なアセットと同列にみなせるかは疑わしい。そもそも開発から謎めいて、当初は決済手段として期待されたのに、投機対象として脚光を浴びた。どこかゆがんではいまいか。


投資家も金融界もコインの〝真贋(しんがん)〟を疑うことなく取引できる環境であってほしい。


(編集委員 柿内公輔)


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