地域銀再編 新常態 ⑦ 関西第二地銀は13行が1行に 〝県民銀行〟みなと銀の矜持

2021.11.11 04:36
経営統合・合併
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関西みらいFGスタート時に手を重ねる(左から)服部・みなと銀頭取、菅哲哉・関西みらいFG社長、橋本和正・関西アーバン銀頭取、中前公志・近畿大阪銀社長(18年4月、りそなG大阪本社ビル)

かつて、関西地区に13行あった第二地方銀行。バブル経済崩壊後に経営破綻、合併・統合を経て、現在、第二地方銀行協会加盟行は兵庫県が地盤の「みなと銀行」1行となった。資本関係が三井住友フィナンシャルグループ(FG)から、りそなホールディングス(HD)に移った同行の”県民銀行”としての「今」を探った。


1995年8月、戦後初の銀行破綻となった兵庫銀行(現みなと銀)から大再編劇が始まった。当時、大手・中堅企業の本社機能の東京移転に伴う関西経済の地盤沈下や、バブル経済崩壊後の不動産価格の下落に加え、オーナー経営によるガバナンス欠如が相まって、第二地銀を取り巻く環境は日に日に悪化。営業の第一線にいた元行員は「債権回収に奔走して他行を気にとめる余裕はなかった」と振り返る。金融機関経営に詳しい播磨谷浩三・立命館大学教授は「ノンバンクや不動産への融資に傾注していた旧福徳銀行と旧幸福銀行は特に傷が深かった」と指摘。再編を繰り返した結果、第二地銀の多くは現在の関西みらい銀行に収斂(しゅうれん)した。


破綻した兵庫銀は「みどり銀行」となり、99年4月に阪神銀行と合併してみなと銀が誕生した。「兵庫県に根差した地域銀の役割を果たせるのか」。2017年、りそなHD系列の近畿大阪銀行や関西アーバン銀行との経営統合構想が浮上した時、みなと銀の服部博明頭取(現会長)は悩みに悩んだ。だが、関西広域ネットワークを掲げる、りそなグループ(G)の機能と情報力が取引先にさまざまな選択肢を提供できるメリットは大きいと判断。統合を決めた。18年4月、りそなHD傘下で、3行統合による関西みらいフィナンシャルグループ(FG)が誕生した。


19年4月に近畿大阪銀と関西アーバン銀が合併。一方で独立運営を維持したみなと銀は、統合直後から地域密着型のビジネスをさらに深掘り。その一つが地域の中長期的課題に向き合う「地域本部制」の導入だった。県内を5地域(阪神、神戸、東播淡路、播但、姫路)に分轄し、執行役員級以上を各本部長に配置。りそなGの機能を活用することで、課題のデジタル対応でも、21年度中にグループアプリやVisaデビットの取り扱いを予定するなど強化する。


21年4月、りそなGは関西みらいFGを完全子会社化。それと同時にみなと銀で服部頭取(当時)からバトンを受けた武市寿一社長は「県民銀行として単独運営は変わらない。兵庫県は当行がリードする」と強調する。旧神戸銀行の流れをくむ三井住友FG傘下だった同行が、より地域や取引先に役立つ存在になれるか。県民銀行としての矜持(きょうじ)が問われる。

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