地域銀再編 新常態⑥ 関門海峡の衝撃から10年 意識変えた二つの転機

2021.11.04 04:37
経営統合・合併
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コラボ店のリニューアルで商店街のにぎわいが戻りつつある(8月27日、八幡中央支店)

”関門海峡の衝撃”から10年。前例のない支店分離方式で、2011年10月に山口銀行から独立し誕生した北九州銀行。この間、「指定金融機関」と「マイナス金利政策」という二つの転機を迎えた。新設銀行は、地域にどのような影響を与え、近隣金融機関にはどう映ったのか。


同行は、預金6127億円、貸出金7157億円、24カ店で開業した。この10年で預金・貸出金は、ほぼ倍増。店舗は17年度まで毎年新設し37カ店となった。ただ、先発の地元金融機関よりは劣勢にある中小企業の取引拡充が課題にあげられる。


当時、山口フィナンシャルグループ(FG)は非金融部門の強化を掲げ子会社戦略に人員を割いていた。「このため、人員不足で営業現場には疲弊感が漂っていた」(北九州銀支店長)と明かす。山口銀時代から北九州市内に根を張って営業していたものの、企業開拓では「山口県から来た外様の銀行という厳しい声もあった」(同)。


転機は、15年度から北九州市の指定金融機関群(4行輪番)に加わったことだ。事務・コスト面などで重荷とされる指定金だが、山口FG幹部は「これが地元から認知される契機となり、潮目が変わった」と打ち明ける。文字通り「北九州銀行」として地域、顧客に認められ、行員の結束力も強まった。


また、16年2月の日本銀行によるマイナス金利政策もかじ取りに大きく影響。競合する地域銀首脳は「北九州銀の低金利での貸出競争に拍車がかかり、低下圧力が強まった」とみる。その余波は、地元信用金庫にも及び「低金利攻勢をかける北九州銀対策を講じるなど、奔走した時期もあった」(信金幹部)と振り返る。


同行は「真に地域、顧客のために何ができるかを考えよう」という方針に転換。預貸金残高など目先の目標の廃止に向けて動き始めた。自ら仕掛けた競合で学んだ教訓を生かし、量拡大路線から地域活性化を柱とした経営に軸足を移した。


16年から北九州市地方創生推進室に行員を出向させ、地域活性化に本腰を入れた。21年4月から最年少で4人目として出向中の稲本真子さん(27)は「地域を盛り上げるためにさまざまな視点で企画を考える」と提案を続ける。


今年8月27日、八幡・中央町商店街にサンドイッチ専門店を併設した八幡中央支店をリニューアルオープン。新形態の店舗づくりも進める。


鉄都・北九州市。「鉄冷え」でシャッター通りとなった商店街に再興の息吹を吹き込む。嘉藤晃玉頭取は「この10年に感謝し、30年、40年後に、地域からあって良かったと言われる銀行にする」と。

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