地域銀再編 新常態③ 東北3行、SBI連携に活路 新規客増え 収益も改善

2021.10.14 04:30
経営統合・合併
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SBIが持つ経営資源を生かすことで、安定した有価証券の運用につなげている(10月11日、仙台銀市場金融部)
SBIが持つ経営資源を生かすことで、安定した有価証券の運用につなげている(10月11日、仙台銀市場金融部)

地域銀行の再編で、合併や経営統合とは異なる選択肢として注目を集めるSBIホールディングス(HD)の「第4のメガバンク構想」。これまでに地域銀8行が資本業務提携を結んだ。地域別で最多の3行が連携する東北地区。SBIと手を組む背景や提携効果を探った。


2012年のじもとHD発足以降、再編がなかった東北の第二地方銀行に風穴を開けたのがSBIだ。19年11月に福島銀行、20年11月にきらやか銀行と仙台銀行を傘下に持つじもとHDが、相次いで資本提携に踏み切った。


東北は全国に先駆けて著しい人口減少に陥った。限られたパイの奪い合いで資金収益が先細りする苦境に立たされた。手数料収入や有価証券運用も伸び悩むなか、3行は打開策として「SBIが持つ経営資源の活用」を選んだ。


「(提携)効果は想像以上」。じもとHDの太田順一取締役は、長引く低金利による収益減少の苦しみから抜け出す”活路”を見いだした現状に安堵する。多種多様な金融商品や最先端のフィンテック技術など、単独で得るには時間と費用を要する経営資源を迅速に取り込み、かつ資本増強も実現した。


「顧客の裾野が広がった」とも。株式や仕組債を扱うSBIとの共同店舗は新規顧客の開拓につながり、年間収益は5億円を見込む。21年3月期の赤字要因だった有価証券運用は、投資配分を先進国の外債中心に組み替えた結果、「運用が安定し、本業に力が入る態勢になった」という。


福島銀では、SBIと連携して手数料収入の強化を図った。20年度の私募債発行や金融商品仲介による受入手数料は、過去最高の27億円を計上。提携前の19年3月期に2億7000万円だった投信解約益を除くコア業務純益は、21年3月期には5倍の13億5000万円まで伸びた。この結果に加藤容啓社長は「提携効果が着実に表れてきた」と胸を張る。


提携行に対するSBIの提案は50項目以上に及ぶ。各行はそのメニューから優先順位をつけてSBIとの二人三脚で実行。企業価値を高めることに専念する。新生銀行に対するTOB(株式公開買い付け)の動向には各行とも強い関心を寄せている。仮に実現すれば「新生銀が持つ機能を活用できるのではないか」と期待する声があがる。


金融当局の幹部は「地域金融は地域経済と表裏一体。例えるなら植物だ」と話す。栄養の乏しい土壌では植物も枯れるしかない。再編の果実で地域経済を潤し、新たな金融ニーズを育む好循環を作り出せるか。SBIとの連携は、その一つの試金石となりそうだ。

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