全銀システム障害、各金融機関が補償 要因「メモリ不足」の可能性も

2023.10.18 20:15
システム システム障害
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会見で頭を下げる(左から)全銀ネットの小林健一事務局長兼業務部長、辻松雄理事長、千葉勇一企画部長(10月18日、東京都千代田区の銀行会館)
会見で頭を下げる(左から)全銀ネットの小林健一事務局長兼業務部長、辻松雄理事長、千葉勇一企画部長(10月18日、東京都千代田区の銀行会館)

全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)は10月10〜11日の全銀システム障害による損失について、各金融機関が前面に立って顧客への補償を行う方針を決めた。他行宛ての送金(仕向け送金)ができなくなった三菱UFJ銀行などの10機関を含め、すべての加盟金融機関が担う。10月18日に各機関に通知した。同日に開いた記者会見では、障害の原因は依然として「究明中」としたが、接続機器のメモリが不足した可能性は否定しなかった。


補償する方針は「申し合わせ」に盛り込み、10月18日に各金融機関に通知した。「損失の補償に誠心誠意対応することを共通認識とする」とし、「加盟金融機関がそれぞれ顧客への補償を行う主体になる」と明記した。不具合の責任は個別金融機関ではなく、全銀ネット側にあるとしており、最終的に金融機関の負担分を全銀ネットが補うことになる可能性もある。辻松雄理事長は記者会見で「まずお客さま対応が重要。補償の費用をどう負担するかは二次的な対応」との考えを示した。


対象とするのは障害により生じた手数料、延滞金・遅延損害金のほか、貸出金利や貸越金利などで、直接的な費用を補償する。りそな銀行などは想定される複数の類型を示した。例えば、障害の影響で他行から振り込んだ場合や給与振込の期限に間に合わず、総合振込に切り換えた際の手数料の差額を念頭に置く。着金が遅れたことにより口座振替ができず生じた延滞金利や遅延損害金のほか、預金残高不足を補うための一時的な借り入れ金利なども示した。


全銀システムの障害は10月10日朝に発生した。暫定的な復旧まで丸2日かかり、2日間で仕向け送金255万件に遅れが発生。振込ができなくなった10金融機関への送金も251万件を受け付けており、影響が及んだ。多くの利用者に追加の負担が発生するなど損害が生じた可能性がある。


他行宛て振り込みができなくなったのは、三菱UFJ 銀行、りそな銀行、埼玉りそな銀行、関西みらい銀行、山口銀行、北九州銀行、三菱UFJ信託銀行、日本カストディ銀行、もみじ銀行、商工組合中央金庫の10機関。


中継機にエラーが発生


障害は、平日昼間に稼働する「コアタイムシステム」と各金融機関をつなぐ「中継コンピューター(RC)」の更新に伴い発生した。従来は各金融機関に設置していたが、コスト削減などを狙い東京と大阪の全銀センターに集約する形に変更。全銀ネットの職員約50人と開発ベンダーであるNTTデータの約240人の体制で移行作業を行っていた。


10月10日の稼働時に銀行間の手数料である「内国為替制度運営費」を入力・チェックする工程で、あらかじめ設定したテーブルに破損があり、エラーが出てアプリケーションが機能しなかった。


今回、オペレーションシステム(OS)の処理可能な情報量を32ビットから64ビットに上げており、影響があったかは調査中。辻理事長は「問題点となる可能性もある」と話す。メモリ不足が発生したかどうかも検証する。


事前にテストを重ねていたにもかかわらず、障害発生を予見できなかった。作業完了の目安としていた10月7日12時時点で問題が発生しておらず、新RCへの移行を最終判断したという。


金融庁は10月13日、全銀ネットに対し報告徴求命令を出した。全銀ネットは、障害の発生原因や改善・再発防止策などについて、11月末までに報告する。全銀ネットは原因究明に外部専門家の知見を生かすことも検討する。 


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