ゆうちょ銀、ソニー銀の「外貨預金」アプリでPR、収益源を多様化
2023.10.01 04:30
「ゆうちょ銀、ソニー銀の「外貨預金」アプリでPR、収益源を多様化」ニュースの要約
・ゆうちょ銀行はソニー銀行の「外貨預金」広告配信を「ゆうちょ通帳アプリ」で試行開始
・アプリ利用者の属性に応じて広告を配信し、26年度以降の収益化を目指す
・広告はメッセージ配信機能を使い、年齢や資産情報をもとに配信先を選定
・アプリ利用者は823万人(23年6月末時点)で、20~30代資産形成層が過半数を占める
・将来的には非金融分野の広告配信も視野に入れ、企業との連携を進める
ゆうちょ銀行は、ソニー銀行が提供する「外貨預金」の広告配信を始める。「ゆうちょ通帳アプリ」の利用者の属性に応じて案内する。今回は試行の位置づけだが、ゆうちょ銀の中期経営計画が終了する2025年度中に本格的に開始し、26年度以降の収益化を目指す。他の金融・非金融分野のパートナー企業とも連携して、商品をPRする方針。すでに複数社との案件が進行している。
広告配信は、10月5日からスタート。同アプリのメッセージ配信機能を使い、ソニー銀が提供する外貨預金商品やキャンペーン広告を利用者に案内する。
年齢や保有資産などの情報をもとに配信先を選別。スマートフォンの待ち受け画面に通知された広告をタップすると、ソニー銀のウェブサイトへ移動し、オンラインで商品を申し込むことができる。
ゆうちょ銀は収益の大半を有価証券運用に頼っているが市場変動の影響を受けやすく、安定した収益源の構築が課題となっている。今回の広告事業は拡大を狙う手数料収益となり、安定的な収益体制の一つとして取り組む。
アプリは、823万ユーザー(23年6月末)が利用しており、足元で増加傾向にある。特に、20~30代の資産形成層が過半数を占めているのが特徴だ。ソニー銀側は、資産形成層への宣伝効果は大きいとみる。
ゆうちょ銀は、21年に外貨両替サービスを終了。ラインアップに外貨預金の商品自体がなく、競争関係にならないことが決め手となった。ソニー銀が広告宣伝費を支払う。具体的な金額や手数料体系は非開示とした。
今回、配信した外貨預金の広告は、クリック数などのデータを分析して配信精度をより高めていく考え。将来的には、非金融分野の商品も広告配信を視野に入れる。
ゆうちょ銀では、「どんな商品に興味を持たれているのか、いろんな会社と連携し、試行していくなかで反応を見ていきたい」(同行担当者)としている。
ニッキンオンライン編集デスクの目
金融機関のデジタルプラットフォーム化は、収益構造の転換を図る上で重要な戦略だ。従来、金融機関の収益源は預貸金利益と手数料収益が中心であった。しかし、長期化する低金利環境下で収益性が低下するなか、デジタル化による顧客接点の収益化が課題となっている。
ゆうちょ銀行のアプリユーザー823万人という基盤は、金融広告のプラットフォームとして高い価値を持つ。若年層の多さは、将来的な資産形成層の取り込みを目指す金融機関にとって魅力的であり、ソニー銀行の外貨預金サービスへの関心も期待される。デジタルマーケティングの観点からも、属性データに基づく効率的な広告配信が可能となる点は重要である。
データ分析による配信精度の向上も重要だ。顧客の反応データを蓄積・分析することにより、効果的なターゲティング広告が可能となる。これは将来的な非金融分野への展開においても資産になるだろう。
ソニー銀行との提携は、両行のビジネスモデルの補完性が高い点で興味深い。ゆうちょ銀行が外貨預金サービスを提供していない一方、ソニー銀行は実店舗を持たないネット専業銀行である。この相互補完的な関係により、カニバリゼーションのリスクを回避しつつ、Win-Winの関係構築が可能となる。顧客接点のデジタル化はサービス提供チャネルの多様化にとどまらず、新たな収益機会の創出にもつながるだろう。