読者の意見 アルムナイ 「制度必要」8割 転職一度は検討77%

2023.08.29 04:50
読者の意見 働き方改革
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日本郵政グループは、アルムナイと現役社員の交流会を開催した(日本郵政本社)
日本郵政グループは、アルムナイと現役社員の交流会を開催した(日本郵政本社)

金融界で、転職や起業により自主退職した「アルムナイ(卒業生)」と交流する動きが活発化してきた。異業種で経験を積んだ卒業生とのネットワークを構築することで、金融機関は組織風土改革や新事業における協業などに生かすことができる。人材への積極的な投資を通じて企業価値向上を目指す「人的資本経営」が浸透しつつあるなか、アルムナイとどのように関わっていくべきか。制度化の必要性や、転職に対する意識への影響、卒業生に求められる役割などについて本紙読者に聞いた。


【調査方法】本紙6月30日号で意見を募集し、73人から回答を得た。回答者の勤務先(元勤務先を含む)は都市銀行・信託銀行4人、地方銀行26人、第二地方銀行13人、信用金庫22人、信用組合1人、労働金庫3人、その他4人。


Q1 アルムナイ制度はあった方がいいか。



全体の79%(58人)が「あった方がいい」と答えた。関西地区地銀の行員(50代)は、「専門的な知識や能力を協業で生かすことで、地域の活性化につながる」と回答。「何と言っても卒業生は即戦力」(中部地区信金、50代)として、人手不足の解消に役立つとの見方もあった。「社外と社内のそれぞれの良さ、悪さを分かった社員が増えると組織が強くなる」(信託銀、40代)という意見もあった。


実際に他の金融機関への転職経験がある首都圏地銀の50代行員は、「(転職したことで分かった)気づきを前職に還元したかったが、いままでアルムナイ制度がなく、還元できないことに悶々(もんもん)としていた」という。


九州地区信金の40代職員は、「退職した社員と縁を切らなくてはいけない風土は害悪」と訴える。「最近は上司が嫌で我慢できずに退職する者もいるので、制度として必要」(北海道地区信金、50代)という声もあった。


Q2 転職に挑戦しやすくなるか



アルムナイ制度がある場合、同業種や他業種への転職に「挑戦しやすくなる」としたのは55%(40人)。「いったん、外の事業会社などを見て、もう一度戻ってやり直せるチャンスがあることは良い」(近畿地区地銀、40代)、「戻れるところがあると(転職の)動きは活発化する」(労働金庫、40代)などの意見があった。中部地区信金の50代職員は「若い行職員であれば、自分自身の新しい可能性を求めて、新しい分野にチャレンジしていける」と答えた。


次に多かったのは「わからない」の23%(17人)。九州地区第二地銀の50代行員は、「(アルムナイ制度の)目的は『雇用コストの低減』であり、再雇用するにしても以前の退職理由やその時の状況によって判断されると考える」と記した。


「変わらない」は22%(16人)。「現状も転職サイトなどに登録している職員はいるが、その多くは評価を知りたいだけにとどまっている」(北海道地区信金、40代)という。


Q3 アルムナイに期待したいこと



アルムナイへの期待(複数回答可)を聞いたところ、「他業種のノウハウ・知識の共有」が50人で、最多だった。具体的には、「他に無い専門性を有する行職員がいるのは強み」(関西地区信金、50代)や「他業界での経験を生かしてこれから取り組む課題の成功確率を高められる」(中国地区地銀50代)など、肯定的な意見が並ぶ。


「即戦力化」との回答は31人。関東地区第二地銀の60代行員は「卒業生の持っているノウハウは即戦力。利用しない手はない」と強調。「業務に習熟しており、リテラシーが高いため、即戦力としての効果が大きい」(中部地区第二地銀、60代)といった声もあった。


「ビジネスの協業」は19人。近畿地区信金の60代職員は「外とのつながりを最大限に生かし、新たなビジネスチャンスを創出する」役割を挙げた。


「現役社員への好影響」は18人。「卒業生が自社の社員に対して他業種の知識などを伝えることが組織活性化につながる」(関東地区地銀、40代)。


また、11人が「採用イメージの向上」につながると回答。中国地区第二地銀の50代行員は「自由で開かれた企業文化をアピールすることで、優秀な人材確保が十分に見込める」という。「『出入り自由です』ぐらいの制度にすると若い世代には受けると思う」(首都圏地銀、50代)といったアイデアもあった。


Q4 転職を検討した時期は



「転職したいと考えた時期はあったか」を尋ねたところ、「今もある」(20人)と「一時期あった」(36人)を合わせ、77%(56人)が一度は検討したことがあることが判明した。このうち、検討した時期として最も多かったのは、「30代」で24人。次いで「40代」が17人、「20代」が11人だった。


30代で転職を検討したことがあるという甲信越地区地銀の50代行員は、「処遇に対する不満と体力的に厳しい執務が継続したときに、解決策として考えた」と記した。


九州地区第二地銀の50代行員は「若いころは仕事もきつく、人に恵まれない時期もあり、転職も考えることもあった」と回答。ただ、「転職した先が本当に現状よりいいのか、『隣の芝生が青く見えているだけではないのか』」と再考し、踏みとどまったという。


「40代」と回答した首都圏信組の60代職員は「組織の方向性と自分の人生のあり方に悩んだ」と回顧。都市銀行の40代行員は、「社内での存在意義を見失い悩んだこともあった」と答えた。


また、「20代」で検討したという北陸地区第二地銀の40代行員は「入行後数年は、単調で閉鎖的な仕事だなと考え、商社へ転職も考えた」と記した。


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