「ことら」とは?仕組みやメリットなどを徹底解説!
2023.06.20 10:55
スマートフォンが普及し、生活にまつわる様々なことがスマートフォンで完結できるようになってきているなかで、「ことら」は、携帯電話番号のみで簡単に送金できるサービスです。
ことらは、J-Coin PayアプリやBank Payアプリをダウンロードして、所定の本人確認手続きを行うことで、10万円以下の個人宛送金を手数料無料で利用でき、ことら加盟の銀行間であれば、口座番号ではなく携帯電話番号のみで送金することができます。
本記事ではこの「ことら」や「ことら送金」に関する仕組みや、メリットやデメリット、ことらが使えるアプリ・対応金融機関など、ことらについて詳しくご紹介します。(※2023年9月21日、利用可能先を追加しました ※2023年10月23日、対応予定機関を追加しました ※2023年11月17日、利用可能先を追加しました)
目次
「ことら」とは一体何?
ことらとは、個人間の小口送金(原則10万円以下)のためのインフラであり、携帯電話番号のみで簡単に送金できるサービスです。 「ことら」に加盟している金融機関間であれば、口座番号ではなく電話番号で送金することができ、2023年9月20日時点で約207の金融機関が参画しており、多くのケースで手数料は無料になっています。
ことらの企画・運営を進めているのは、みずほ銀行、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、りそな銀行、埼玉りそな銀行のメガバンク5行が共同出資して2018年に株式会社ことらが設立され、2022年10月11日からサービス開始しました。
同社は、送金手数料の低減や送金の利便性向上を目指しており、ことら送金の利用者数は順調に伸びてきています。
自分の保有している別口座に振替する時や、お祝いのプレゼントの共同購入時や、友達との割り勘時など、様々なシーンにおいてお金のやり取りを自由に行うことができるようになります。
・ことらの由来は?
ことら送金の「ことら」(英語表記はコーオペラティブ・トランスファーシステムとの頭文字を取って「COTRA」)は、「小口トランスファー」の略称です。
プロジェクトネームを付ける際の候補に「ことら」があり、若手メンバーの中で好評だったため決定したと代表取締役社長の川越氏がインタビューで語っています。
「ことら」の英語表記は「COTRA」において、先頭の文字がCである理由は、色々な人が集うという意味も含めて「ことら」の目指す世界観を表現するために、あえてCにしたそうです。
・ことらのシステムの仕組み
ことらシステムは、口座名義確認機能を実装していて、オンラインの即時送金処理により、仕向側で受取口座の入金まで確認することができます。
接続する事業者間の資金清算は、日中2回、全銀システムに連携されて、最終的な決済を行う仕組みとなっています。
より詳細に説明をすると、ことらシステムは、日本電子決済推進機構(JEPPO)が運営する「J-Debit」を基盤に構築されています。このJ-Debitは、金融機関のキャッシュカードを利用して買い物などを行うと、直接支払いができる即時決済サービスで、J-Debitには既に1,000を超える金融機関が接続しており、既存で活用されているため、抵抗なく利用可能なのがメリットです。
ことらシステムではユーザーが利用しているアプリなどを、API経由でJ-Debitに接続し、手間がかからない送金などを実現していきます。
・ことらのメリットと求められる背景
それでは、実際にことらにおいて送金するメリットとその背景について説明していきます。
メリット(1):金融機関口座情報なしで送金できる
通常は金融機関口座に送金する場合において、金融機関名・支店名・預金種目・口座番号・口座名義など詳細情報が必要となります。しかし、口座間の送金は手数料がかかることや、入力の手間、金融機関にわざわざいく必要があるなどの手間がかかるだけでなく、個人情報を第三者に送ることになるので、個人情報の漏洩を恐れる人もいるでしょう。
しかし、ことら送金では携帯電話番号・メールアドレスのいずれかを指定するだけで送金可能となっています。対応アプリ上で受取口座と携帯電話番号を紐づけることで、送金を行えるのです。また、電子マネーではなく現金を口座で受け取れることや、金融機関情報を相手に伝えずに済むことについてもより、安全に送金処理ができると感じる人も多いのではないでしょうか。
メリット(2):異なるアプリ間で送金処理ができる
キャッシュレス社会である現代においては、送金を行えるアプリはPayPayやLINE Pay、d払いなど、ことら送金以外にもさまざまなサービスが存在するようになりました。
しかし、これらのアプリにおける欠点として、同じアプリを所有している人同士でしか送金ができない点が挙げられます。一方で、ことら送金は現在8種類のアプリ上で実装されているものの、異なるアプリ同士であっても送金を行えるため、より多くのユーザーにとって送金しやすい「送金アプリ」となっています。
また同時にメッセージを送信することができるため、わざわざアプリを切り替えて相手にメッセージを送信しなくてもいいという気軽さも合わせもっています。
メリット(3):送金手数料が比較的安い
ことら送金は、お金を送る際に「送金手数料」が発生してしまいます。
送金手数料は一律ではなく、各アプリ事業者により決定される仕組みですが、サービス開始時からことら送金に対応する20行においては、送金手数料が無料となっています。
しかし、その手数料がかかるとしても、基本的には金融機関口座への振込手数料より安価に設定されていることが多く、これもことら送金のメリットの1つとなっています。
金融機関は手数料収入が減ってしまいますが、同時に顧客が現金を利用する機会も減るため、窓口業務やATMに係る現金管理費の削減につながることになります。
ただし、PayPayやd払いといったスマホ決済サービスは、手数料が発生しないものも多いため、利用するアプリ次第ではことら送金のほうが手数料が高くなることもあるため、注意したいですね。
メリット(4):1件あたりの送金上限金額が10万円なため安全性が高い
ことら送金は、手軽に少額送金を行いたいニーズに対して応える個人向けサービスであり、取引1件あたりの上限金額は10万円で設定されています。
つまり、高額の送金をしたい場合には「ことら」はあまり向いていないものの、裏を返せば、支払い過ぎなどが起きづらいということになります。
メリット(5):相手口座への入金もスピーディー
ことら送金で送金されるお金は、即日で入金されます。金融機関への振込よりスピーディーにお金のやり取りを終えられるため、お金を送る側、受け取る側ともに安心してサービスを利用することができます。
メリット(6):金融機関側も現金のハンドリングコストが削減される
現金のハンドリングコストは約8,000億円にも上るとされており、「ことら」の導入によって現金を引き出す回数が削減できれば、コストカットにもつながります。
金融機関側としては手数料収入が減るものの、顧客の現金利用機会が減るため、窓口業務やATMに係る現金管理費の削減につながることになります。
・ことらにデメリットはある?
ことら送金においてのデメリットも存在します。
1つ目は、利用できる金融機関が限られていることです。
ことらは、まだリリースから日が浅く、利用できる金融機関が限られています。しかし、今後はさらに多くの金融機関が参加することが期待されています。
2つ目は、送金限度額が10万円であることです。メリットにおいてもこの送金額の点について挙げていますが、ことらの送金限度額は、1日あたり10万円であるため、高額な送金には不向きとなっています。
全体的にみると、ことらは手数料が安く、使いやすい小口送金サービスです。今後は、さらに多くの金融機関が参加することや、送金限度額が上がることなどが期待されています。
・ことらが使えるアプリ・対応金融機関は?
・ウォレットプラス
・SBI銀行アプリ
・京銀アプリ
・こいPay(広島銀行)
・J-Coin Pay
・どうぎんアプリ(北海道銀行)
・西日本シティ銀行アプリ
・はまPay(横浜銀行)
・Bank Pay
・Payどん(鹿児島銀行)
・北陸銀行ポータルアプリ
・三井住友銀行アプリ
・みんなの銀行
・YOKA!Pay(熊本銀行)
・YOKA!Pay(十八親和銀行)
・YOKA!Pay(福岡銀行)
また、2023年10月15日時点で、ことらが利用できる先としては、211件になりました。
あ行
アイオー信用金庫
愛知信用金庫
青木信用金庫
朝日信用金庫
足利銀行
足利小山信用金庫
足立成和信用金庫
あぶくま信用金庫
尼崎信用金庫
奄美大島信用金庫
アルプス中央信用金庫
阿波銀行
淡路信用金庫
飯田信用金庫
石動信用金庫
いちい信用金庫
一関信用金庫
伊万里信用金庫
伊予銀行
宇和島信用金庫
永和信用金庫
SBI新生銀行
愛媛銀行
愛媛信用金庫
遠州信用金庫
青梅信用金庫
大分信用金庫
大垣西濃信用金庫
大阪シティ信用金庫
大阪信用金庫
岡崎信用金庫
か行
香川銀行
鹿児島銀行
鹿児島信用金庫
鹿児島相互信用金庫
かながわ信用金庫
金沢信用金庫
亀有信用金庫
唐津信用金庫
川崎信用金庫
川之江信用金庫
観音寺信用金庫
関西みらい銀行
蒲郡信用金庫
北伊勢上野信用金庫
北おおさか信用金庫
北上信用金庫
北九州銀行
北群馬信用金庫
きのくに信用金庫
紀北信用金庫
九州ひぜん信用金庫
紀陽銀行
京都銀行
京都信用金庫
京都中央信用金庫
京都北都信用金庫
きらぼし銀行
桐生信用金庫
岐阜信用金庫
熊本銀行
熊本信用金庫
熊本第一信用金庫
呉信用金庫
桑名三重信用金庫
群馬銀行
興産信用金庫
高知銀行
興能信用金庫
甲府信用金庫
神戸信用金庫
郡山信用金庫
湖東信用金庫
さ行
西京信用金庫
埼玉縣信用金庫
埼玉りそな銀行
佐賀銀行
佐賀信用金庫
さわやか信用金庫
佐原信用金庫
山陰合同銀行
三十三銀行
滋賀中央信用金庫
四国銀行
静岡銀行
静岡中央銀行
しずおか焼津信用金庫
七十七銀行
しののめ信用金庫
芝信用金庫
島田掛川信用金庫
しまなみ信用金庫
しまね信用金庫
島根中央信用金庫
白河信用金庫
新湊信用金庫
十八親和銀行
十六銀行
城北信用金庫
常陽銀行
須賀川信用金庫
諏訪信用金庫
静清信用金庫
西武信用金庫
瀬戸信用金庫
空知信用金庫
た行
大光銀行
高岡信用金庫
高鍋信用金庫
高山信用金庫
瀧野川信用金庫
但馬信用金庫
たちばな信用金庫
館山信用金庫
玉島信用金庫
多摩信用金庫
第四北越銀行
知多信用金庫
千葉銀行
千葉興業銀行
千葉信用金庫
中栄信用金庫
中国銀行
中日信用金庫
銚子信用金庫
筑波銀行
敦賀信用金庫
東奥信用金庫
東京シティ信用金庫
東京ベイ信用金庫
東春信用金庫
東濃信用金庫
東和銀行
徳島大正銀行
栃木銀行
鳥取信用金庫
砺波信用金庫
利根郡信用金庫
富山信用金庫
豊川信用金庫
豊田信用金庫
豊橋信用金庫
な行
長野信用金庫
長浜信用金庫
名古屋銀行
南都銀行
にいかわ信用金庫
新潟信用金庫
西尾信用金庫
西中国信用金庫
西日本シティ銀行
西兵庫信用金庫
二本松信用金庫
沼津信用金庫
のと共栄信用金庫
延岡信用金庫
は行
萩山口信用金庫
はくさん信用金庫
八十二銀行
八幡信用金庫
花巻信用金庫
浜松磐田信用金庫
半田信用金庫
飯能信用金庫
播州信用金庫
東山口信用金庫
肥後銀行
日高信用金庫
氷見伏木信用金庫
百五銀行
百十四銀行
兵庫信用金庫
枚方信用金庫
平塚信用金庫
広島銀行
広島信用金庫
備前日生信用金庫
福岡銀行
福島信用金庫
富士信用金庫
富士宮信用金庫
碧海信用金庫
北門信用金庫
北洋銀行
北陸銀行
北海道銀行
北海道信用金庫
ま行
三島信用金庫
水島信用金庫
みずほ銀行
三井住友銀行
三菱UFJ銀行
みなと銀行
みんなの銀行
武蔵野銀行
室蘭信用金庫
目黒信用金庫
もみじ銀行
杜の都信用金庫
や行
山形銀行
山口銀行
山梨信用金庫
山梨中央銀行
横浜銀行
横浜信用金庫
米子信用金庫
米沢信用金庫
ら行
りそな銀行
琉球銀行
留萌信用金庫
わ行
稚内信用金庫
今後も利用できる金融機関も増えていくことが期待されます。
※今後、下記の60機関が対応予定です。
池田泉州銀行
沖縄銀行
北日本銀行
荘内銀行
大東銀行
福島銀行
北都銀行
三井住友信託銀行
会津信用金庫
青い森信用金庫
秋田信用金庫
阿南信用金庫
網走信用金庫
上田信用金庫
越前信用金庫
大分みらい信用金庫
大川信用金庫
大阪厚生信用金庫
遠賀信用金庫
柏崎信用金庫
烏山信用金庫
川口信用金庫
北空知信用金庫
倉吉信用金庫
気仙沼信用金庫
コザ信用金庫
小松川信用金庫
三条信用金庫
新発田信用金庫
上越信用金庫
昭和信用金庫
新宮信用金庫
世田谷信用金庫
仙南信用金庫
大地みらい信用金庫
高崎信用金庫
但陽信用金庫
津山信用金庫
鶴岡信用金庫
東京信用金庫
東京東信用金庫
道南うみ街信用金庫
東予信用金庫
徳島信用金庫
栃木信用金庫
奈良信用金庫
奈良中央信用金庫
日新信用金庫
備北信用金庫
広島みどり信用金庫
福井信用金庫
福岡信用金庫
松本信用金庫
宮城第一信用金庫
宮崎第一信用金庫
村上信用金庫
盛岡信用金庫
山形信用金庫
大和信用金庫
結城信用金庫
ことらの手数料はいくら?
ことらの手数料については、各アプリ事業者が決定するため一律には決まっていません。
サービスを開始している先は基本的には無料となっています。
現在、ある大手銀行では、他行へ送金する場合は、3万円以上で330円、3万円未満で220円の振込手数料がかかっており、ユーザーにとって負担となっていました。
この手数料は「全銀システム」の使用料として、システムを維持するために必要でしたが、
ことらでは全銀システムと並行して、日本電子決済推進機構(JEPPO)が運営する「J-Debit」を利用しています。
「J-Debit」はすでに存在しているシステムで、APIを利用しているシステムであることから、構築コストが少ないのが特徴です。そのため「ことら」に参画する事業者の負担も少なくなり、結果的に利用するユーザーの手数料も安価に済みます。
・ことらを使う手順
ことら送金でお金を送る方法はアプリによって異なります。
金融機関ごとにアプリのダウンロード方法が紹介されていますので、各金融機関に問い合わせをしていただくか、検索をしていただくことをおすすめします。
ことらは今後どうなっていく?
キャッシュレス化が進む現代において、「ことら」は少額(10万円)の個人間送金を想定した少額決済インフラであることから、今後も利用ユーザーが多くなることで、より決済のデジタル化が日本においても進んでいくと考えられます。
税金の納付や、公共料金の支払い、病院における治療・医療費の支払いなどについてもキャッシュレス化がさらに進んでいくにあたって、ことらでの支払いという未来も今後はさらに増えていく可能性も高く、サービス提供幅が広がるにあたって利用価値も高くなってくるでしょう。
まとめ
アプリなどにおいて、個人間の送金サービスは数多く存在しますが、ことら送金は金融機関口座間で直接やり取りを行えるのが大きな魅力となっています。金融機関振込より手数料を抑えられるだけでなく、相手の携帯電話番号もしくはメールアドレスだけで送金が可能であるという手軽さに加え、情報漏洩やプライバシーといった面でも安全性が高いと感じられるユーザーも多いでしょう。
まだリリースされたばかりであもるため、対応するアプリ・金融機関については今後のさらに拡張していくことに期待が高まる中、今後のサービス拡充に注目していきたいサービスとなっています。「ことら」が今後、どのように社会に貢献していくかを楽しみにしつつ、友人や家族、同僚と手軽にお金をやり取りできることら送金を、この機会にぜひ利用してみてはいかがでしょうか。
【執筆者】ニッキンONLINE編集部
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